ビールが嫌いな人は、苦いから嫌いだと表現する。それはもっともな話だし、誇張されているとも感じてしまう。
人の食事の好みとは、美味しい体験の積み重ねだ。私だって、ウニも栗も嫌いだったが新鮮なものを頂いたことで、克服できた経験があります。
だから、ビールもきっとそう。苦いビールを呑んだから、美味しくないものだと信じ込んでしまっているのかも。美味しいビールは目の前にあるんだぞ。一度騙されたと思って試して欲しいな。
ファーイーストブルーイング 東京ブロンド
芳醇なホップの香りは当然として、第一印象はグレープフルーツ。グラスは公式ウェブに合わせて、小ぶりで膨らみのあるものが合うみたい。きめの細かい泡はエールの風味を封印する。苦味は微かで、ビールの美味しいところだけを味あわせてくれるだろう。東京っていうけれど、製造は山梨なのもチャーミング。
ワインが好きだ、日本酒が好きだ、焼酎が好きだ。このおおよその好みというのは、出身地にも関わりがある。
芋焼酎の名産地なら、芋焼酎を好んで呑む。理由は簡単、現地の食事が芋焼酎に合うからだ。お酒の作られた土地で採れる野菜、肉は、驚くほどにマリアージュする。
同じ土、同じ水、同じ空気を吸って生まれた自然の恵み。これを超える組み合わせを味わうのは難しいのです。
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ところが、ビールというのは日本全国で作られていて、全国の食卓に個人の好みで選ばれて、楽しまれている。ビール大手4社のそれは、日本の隅々にまで行き渡る。それでも・・・川崎に住む私としては、キリンビールを推したくなるが。
しかしこれらは、苦いビールのお手本だ。もちろん、慣れてしまえばその飲みごたえと価格のバランスの高さによって、大手の実力がわかってしまう。でもたまには、別世界のビールも呑みたくなるってもんじゃない。
違う世界を感じたい。知らない世界を見てみたい。自分の甲羅を破りたい。
そんな時にオススメするのが、国産地ビール。もちろん、初心者に呑んでほしい理由もあるぞ。
東京ブロンドは、冒頭に言うように「グレープフルーツ」の印象です。バナナも少し感じるかな。
330ml という缶ビールのサイズに対し、価格は 500 円だから、かなり割高な印象かも。けれど、正直に言って美味しすぎ。
小さなグラスに注いだあとに、細かい泡の隙間から、一口だけ流し込む。するとホップの芳醇さとフルーツのようなフルーティな香りが広がって、鼻に抜けていく幸せがたまらない・・・そう、香りをしっかり楽しむことができるのが、”苦いビール”との違いである。
日本のビールは「のどごし」を楽しむものが多いけれど、東京ブロンドは香りと味を楽しむものだ。500 円のエールを一気に喉に流し込むのはモッタイナイ。日本酒のようにチビチビとはいかないまでも、口に含んで楽しむのだ。
ほどよくトロミを感じながら、口を閉じていい気分になれるビール。これが東京ブロンドなのである。
オツマミとの合わせは多様なようで、我が家は地元の洋菓子店の(とっても美味しい!)チーズサブレと合わせて呑んだ。
さすが、ビールの懐の深さだね。ツマミはあまり考え込まずに楽しめる。お酒・ビールの初心者に、お薦めな理由のひとつである。付け足せば、アルコール度数 5% は、ワイン・日本酒の 14% より遥かに身体も楽だから、美味しいお酒を知りたい人にはモッテコイのものじゃないかな!
晩ごはんが終わったあと、まだまだ時間があるから、なんて、家族で楽しむ軽い談話のお供にしたい。
子供の笑顔につられて笑う。彼女の愚痴も心地よい。心をゆっくり落ち着かせて、尊い今の時の流れを味わうんだ。
怒りなんて忘れてしまえ。辛さなんて砕いてしまえ。心を落ち着かせるアロマのような、東京ブロンドを楽しもう。
30 分で足りないならば、ツマミをひとつ、こしらえよう。ハッピータイムの始まりだ。冷蔵庫に忍ばせた、もう一瓶を出してしまおう。後ろ髪を惹かれるような、小さな幸せは今、ここにあるのだから。
紹介したお酒
Far East Brewing 東京ブロンド
アルコール度数度数 5%
ジャンル エールビール