吉利汽車との合併破談はボルボに何をもたらすか

古くから車と家庭とは密接に繋がりのあるもので、私もトコトン、自分の持った車のことは書き記しておきたいと考えます。

 

家内は建築が大好きで、結局我が家は、夫婦2人して高い買い物が好きだとも言えます。これからの3年間も、田舎の家探しがますます楽しくなるでしょう。

 

けれど、過剰に豪華なものは嫌う傾向にあります。ようは、適正価格であるかどうか、そして必要なものかどうか。クルマで言えば、メルセデスは豪華すぎて微妙なところ。適正価格ではあるとは思うのですけどね。

 

VOLVO LOGO

 

様々な理由はありますが、クルマをボルボで更新しなかったのはそういうところも加味したから。まあ、通知が車検後にやってくるという嫌がらせチックなところもありましたが、シンプルな装備と適度な高性能のプジョーに乗れたことは、感謝をせねばなりません。

 

そのボルボは、とうとうEVオンリーの車種としてC40を発表しました。今回のコラムでは、電気自動車メーカーへと進んでいくボルボについて考えてみましょう。

 

ご注意:いつものことですが、このコラムの内容は、まこまちの私見による”ひとつの意見”です。この意見が必ずしも正しいものではないことをご理解の上でお楽しみください。

 

EV化を目指すボルボの破談交渉

希望したのはボルボか吉利汽車か 両者に有意義な事業統合の発表

注目したいのは、C40発表の1週間前にあった報道です。吉利汽車とボルボの合併協議はとりあえず破談となり、今後は各部門毎で密接な関係構築をしていこうというものでした。

 

この破談が、どちらが望んだものかはいまいちわかりません。報道では、吉利汽車買収後に業績を伸ばしていたボルボ側が、難色を示したとされています。

 

でも私は、実は吉利汽車が企んだのではないかなって考えました。

 

ボルボXC40 ヘッドライトのイラスト

 

Powertrain operations to be combined in new company focused on next-generation hybrid systems and internal combustion engines

Expanded use of shared modular architectures for electric vehicles (EVs)

Enhanced collaboration in autonomous and electric drive technologies

Joint procurement to cut purchasing costs

Lynk & Co to expand globally by utilising Volvo distribution and service network

Companies to retain independent corporate structures

出典:VOLVO GLOBAL NEWS ROOM

 

以下、翻訳です。

 

  • 次世代ハイブリッドシステムと内燃機関に特化した新会社にパワートレイン事業を統合
  • 電気自動車(EV)用の共有モジュラーアーキテクチャの使用を拡大
  • 自律走行・電気駆動技術の連携強化
  • 共同調達で購買コストを削減
  • Lynk & Co、ボルボの流通・サービスネットワークを活用してグローバルに事業を拡大
  • 企業が独立した企業体制を維持する

 

吉利汽車はボルボを財政面で支援して、ボルボは吉利汽車を技術的にサポートする。この関係性から生まれたものが、高級ボルボラインナップと、吉利汽車とボルボによるサテライトブランドの構築です。ボルボとしては、両社の思惑が達成できるのなら、合併しないでいても問題ないと考えたのかもしれません。

 

しかし吉利汽車は、そのボルボの考えを見越して合併話を持ちかけ、破談にしたような気がするのです。

 

そう思うのは、今回の合併破談の代わりにあがる、パワートレーン事業の統合です。自動車開発で核の技術となるであろう、エンジン、トランスミッション、そしてハイブリッドシステムの開発を、ひとつの会社として設立することから、コストダウンを考えれば、一見すると吉利汽車にもボルボにも良い話のような気がします。

 

つまり、カーメーカーとしてのブランドを維持し、ラインナップの適正化や計画は吉利汽車、ボルボで独立性を保ちつつも、クルマを今よりも安く作る体制を整える、という事を言っています。

 

高コスト体質の抜本的改善にはつながらない

吉利汽車は、ボルボと吉利汽車の合併によってもたらされるコストダウンを達成したかったと見られます。ひとつの会社になってしまえば、中間マージンはカットされる。今後吉利汽車が吉利汽車として世界に出ていくとなれば、他社を超えるコストパフォーマンスは必要になってくるでしょう。

 

ボルボの弱点は高コスト体質なところです。以前フォード傘下に置かれたときは、高コスト体質による経営数値の悪化が主な要因でした。フランスルノーとの合併話も一時的に浮上しており、ボルボはもはや、単体では生きていけない体質でした。

 

日本でいうPAG時代、高コスト体質の改善のために取り組まれたのは、S40/V40のネッドカー、マツダとプラットフォームを共にしたC30/S40/V50。しかしボルボは、どちらかと言えば大型モデルを好むようで、60シリーズ以上に重きを置きたいラインナップ戦略をとってきます。せっかくの販売台数の稼げるラインナップも、安易に無くしてしまうのです。

 

セクション 原村

 

結局これは、家とクルマと飼い犬を重んじるスウェーデンでの事情もあるようですが、世界戦略としては良くないのはミエミエです。小型車を一本足打法にしてしまうボルボの戦略は、小型車がこけたら終わり。今ではXC40の成功で潤うボルボですが、株主から見たら怖いでしょう。

 

2019年、ボルボはV40クラスをラインナップから外し、高級車ラインナップをさらに高級にして、収益の向上に走ります。これは吉利汽車には恐ろしいものと捉えられたはずです。

 

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将来性の残る事業を手元に残す吉利汽車

その吉利汽車はどうかと言えば、XC40の周辺を固めるメーカーです。日本円にして300万円クラスのクルマを作る振興メーカー。すると、台数で粗利を稼ぐ事になります。だからコストダウンに必死なのです。

 

良いクルマを作るために、コストをたっぷりかけて車造りを慎重に行いたいボルボ、コストダウンで球数を稼ぎたい吉利汽車。このコスト感覚は差はなかなか埋まらないことでしょう。だから、全体的にコストを下げ、収益性を上げるというのは、当然の話です。

 

それに、ボルボと同じ品質のメンテナンスを受けられるLink & Go というのは、吉利汽車のブランドイメージ向上に貢献します。その為には、部品もメンテナンス性も技術力も、あわせて置きたいものでしょう。

 

ところが、合併話は頓挫します。いや、吉利汽車は頓挫させた。ボルボが合併を拒否する代わりに、得られるものが大きかったから。

 

研究開発でお金がかかりつつも将来フィードバックを受けられる、パワートレーン部門の統合。その結果が、今回の合併解消劇なのではないかと思います。

 

ボルボに残るのは、メーカーの独立性と、吉利汽車が管理する必要のない高コスト体質のみ。危険な体質から、吉利汽車は見事に役に立つ部門だけを独立に導いた。ボルボに残されたのは危ない橋だけのようにしか、私には見えないのです。

 

ボルボXC90インテリア
高級路線から離れるのことのできないボルボ。たしかにXC90のインテリアは素晴らしいが、エグゼクティブだけを見ていて良いのだろうか。

 

ボルボが独立すると どうなるのか

EV化の将来は見えないけれど

その後の展望はどうなるでしょう。

 

ボルボの、最悪のシナリオ。もしかしたら最高かもしれないけれど、それはボルボの独立です。けれども、エンジン部門が切り離されたボルボとしては、これは死に体。独立の意味は全くなく、むしろメーカーとして終わるだけです。

 

ボルボとしては、実はエンジン部門は切り離しても良いと考えているかもしれません。2030年には全てのラインナップを電気自動車にしたいと宣言するボルボは、近い将来エンジンとトランスミッションは要らなくなる。そう考えていると感じます。

 

だからこそ、C40は電気自動車だけだと発表したのです。これは、EV化の最先端メーカーというメッセージを世間に公表したい、という思惑もあるはずです。

 

一定の層は、これを前向きに受け止めて、ボルボを選択してくれる可能性はあるでしょう。ボルボとしてはニッチ市場を確保できればそれで良く、フォルクスワーゲンやトヨタのように市場全体のことを考える必要はありません。

 

しかし、EV化は始まったばかりで、将来の展望は見えないのです。私はボルボを、この点において見誤っているのではないかと感じます。

 

天気が良いと不動産売却の話も進む

 

 

達成できない事は不安要素

以前、ボルボによる死亡事故0を目指すVISION2020という目標がありました。しかしこれは達成されませんでした。クルマの安全装置に関わる技術は確かにボルボは素晴らしいのですが、ほぼ同じ、もしくは、ボルボを超える安全技術を他メーカーが搭載するなど、アドバンテージも消えてしまいました。もし、VISION2020が達成されていれば、ボルボはまだ世界一安全なクルマという称号を受けていたに違いありません。

 

掲げる目標は良いのです。その目標が達成できない。これが私が今感じている、ボルボに対するイメージです。

 

もちろん、取り組んでいる内容が悪いわけではありません。電気自動車専売のため、エンジン部門をコストダウンの流れに投じるという判断は理解できるものです。

 

しかし、吉利汽車がボルボを切り離して、エンジンの供給が高額になったらどうなるのか。その時、時代が内燃機関ありきのカーボンニュートラルになっていたら、どうするのか。

 

吉利汽車は、そこは見えているのではないかと感じます。だから、優秀な内燃機関Drive-Eが手に入る今回の破談は、結構良い妥協案だったのかもしれません。吉利汽車したたかに、小型EVはメルセデスと組みました。

 

smart foufour
EV化の流れをボルボとつくりながらも、スモールEVはメルセデスと協業するジーリー。また、エンジン開発の協業も発表されている。単純に高級ブランドを傘下に置きたい以外の目的が見え隠れする。

 

ボルボのサクセスストーリーは隠されている?

ボルボも感じ取ってはいるものの、単なる高級車メーカーである事を嫌う彼らとしては、次の目標をEV専売と決めてしまった。この目標達成の為には、エンジン部門を切り離す事に株主に対してイエスと言わなければなりません。

 

ボルボが今後生きていくためには、小型高級電気自動車。C40だけでなく、さらに小さなモデルを出し、販売台数を稼ぐ必要が出てきます。

 

そして、世界の電気事情がボルボの思惑に合うかどうか。

 

この2つのポイントが、ボルボの今後の鍵になる・・・普通に考えれば、このようになるでしょう。ボルボは、何かを考えているのでしょうか?

 

吉利汽車がボルボを見限るのか、ボルボが吉利汽車を出し抜く秘策を用意しているのか。この破談は、今後の吉利汽車とボルボを占う上での重要なポイントである事は、間違いなさそうです。

 

VOLVO V40と朝日

 

私達夫婦は、スウェーデン流の家にこもっても快適な家と、冬でも暖かい信頼できるクルマを求め、憧れ、ボルボを選んでいました。

 

けれども、ボルボのような高コスト体質は受け入れられず、価格と性能と見た目のパフォーマンスの優れたプジョーに入れ替えました。状況が刻一刻と変わる生活は、時には憧れを捨てる勇気も必要です。

 

ボルボは昔から、それができない会社です。ならば、会社を存続する為にはどうするべきか。吉利汽車にも明かしていないサクセスストーリーを、楽しみに待つ事にしましょうか。

 

※ 2021 年 3 月時点で、統合されるパワートレーン事業会社の資本比率などは発表されていません。