アシ車。主に買い物や家族の送迎、通勤手段と活躍の場の多い、忙しいクルマである。スペース効率に優れた箱型ボディに、燃費の良いパワートレーン。汚れ仕事もお茶の子さいさい、使い倒されることを運命に、毎日走り続ける孝行ものだ。
そんな「忙しい車」の中でも、一際異彩をはなつのが、トヨタ シエンタ。ワンコのキャラクターもパンダ似の雰囲気も、親しみを感じる雰囲気抜群で登場、大ヒット販売中は皆さんもご存知の事でしょう。
我々まこまち家としても、シエンタには興味津々。たまには親戚を駅から送迎するだろうからと、セカンドカーとして検討するつもりで挑んだカーシェアでの試乗体験。ファミリーカーとしての懐深い乗り心地を期待し、テストドライブに挑みます。
お知らせ
この記事を投稿して以降、数々のシエンタ乗りの皆様から、それは違うとコメントを頂きました。あまりにも多いものですので、乗った車のコンディションが悪かった可能性が否めません。他方、私と同じ体験をされている方もいらっしゃる様子ですので、もう一度、今度はディーラーのシエンタを試乗してみたいと思います。
評価のお断り(閲覧注意)
はじめに。オーナー様は読まない方がよい、閲覧注意です。主にクルマの基本性能と安全性能に着目した辛口批評ですので、車を選んでいる最中の方々向けとなります。
カーシェアで借りたシエンタは、走行距離10000km。車としてはまだまだ走っていない個体で、カーシェアのように雑に扱われたクルマだからこそ、実力がわかるだろうとの想いで借りました。
そう、試乗ではなくカーシェアです。わざわざお金を出したのは、私の期待感の表れでもありました。さあ、覚悟してお読みください。感じたままに書きなぐる、偽りなしの日本車選び トヨタシエンタ テストドライブインプレです。
街中カーの最高峰 TOYOTA SIENTA
日本の狭い道の中、街中使いの車に求めるものはなんだろう?セカンドカーには? 私の答えは「安全性能」。リラックスできる乗り心地、各種エアバッグや先進安全デバイスはもとより、いらつかない程度のドライバビリティは必須です。まともに運転のできないクルマに、危険回避などできるわけがないからね。
シエンタといえば、「両側スライドドア」「3列シート7人乗り」「低燃費」の3拍子を宿命つけられたクルマである。セールスの現場からは「美味しいところどり」のクルマを作れと言われるだろうが、「簡単に言ってくれるじゃないか」と、トヨタの開発陣の悲鳴が聞こえてきそう。
そんな辛さを感じる乗り味を、私たち夫婦は感じとってしまっうのでした。
ーーー TOYOTA SIENTA ーーー
ホッコリ安心のエクステリア・デザイン
対面した時のエクステリア・デザインは、何だかホッと安心する。散々言われたであろう、フィアット・パンダに似たその姿は、しかし流石トヨタの力。しっかりシエンタとして完成している。
初代側に寄せたスクウェアフォルム、ポイント・ポイントで魅せる丸っこく可愛いディティール。軽自動車にありがちな「無理してソリッドに仕立ててる」感が全くない。無害、敵視されない、マイペースを貫く感。威圧感ばかりで生きづらい車業界で、こんなファニーな世界感、アリじゃないか。
インテリアも工夫次第?
ドアーを開け、車に乗り込む。
すると、外観とのギャップを感じる真っ黒なインテリア。試乗車はGグレードで、シエンタの中での中間タイプ・・・中間でもこれなのか・・・
「自分で飾っちゃえば良いじゃない」
フォローする、嫁さまの一言。豪華さを否定するのは、家計を預かる主婦ならではか。私はもう少し色気があってもと考えつつ、上位グレードを奢れば良いことと強引に意識から飛ばし、ドライブセレクターをDへ進めた。
TOYOTA SIENTA のドライバビリティ
視界の良さと5ナンバーは楽ちん
大きく広がる視界は良く、チルトテレスコ付きステアリングでドライビングポジションは良好。少し見えるボンネットは車幅を意識する時に助かるし、そもそもシエンタは5ナンバー。左側のスペースの多さは運転していて楽で助かる。
アクセルをぐっと踏み込む。CVTらしい空回転感こそあるものの、すぐにロックアップへ移行するのはお見事。燃費を稼いでいる感がするのは好感が持てる。エンジン音もかなり抑え込んでいる。
ここまでは、シエンタの印象はそこそこ良いような気がしていた。しかし、速度を上げ始めると、思わず「うーん」。
なぜ?止まらないシエンタの震え
「小さなデコボコの突き上げ感がすごいね。」
と言う嫁さま。そう、ファミリーカーで大事にして欲しい、乗り心地がすこぶる悪い。いつもブヨブヨとタイヤが揺れるような感覚は、重たいボディを必死にタイヤが支えていそうな不安感。そんなだから、舗装が少し荒れただけでドロドロユサユサ、色々な方向に揺れてしまう。
嫁さまの言う「突き上げ感」は、スポーティなシビックよりも上。ガツンと入る入力に対して、丸みをつけようともしていない、直接の入力感。走っている最中はいつも揺れとショックがつきまとう。
さらには、止まっている間もアイドリングの振動でブルブル震えた。なんだろう、エンジンマウントの悪さなのか?骨格じたいが駄目なのか?ここにハイブリッドという、さらに重たいものが乗るのは、大丈夫なのかな。
タイヤが硬い?小さい?
車重 1300kg(Gグレード・ガソリン仕様)を、185 65R15 タイヤで支えきれていないのかも。サスペンションの剛性も弱そう。もう少し大きいタイヤにしたいところだが、車内への張り出しだとかタイヤ交換のコスパだとかで、タイヤの仕様がしばられてしまっているのかもしれない。
正直、HONDA N-BOX や NISSAN SAKURA のほうが乗り心地が良かった。少なくとも、カーシェアのこの車では、そう感じてしまったのでした。
トヨタのコンパクトは諦めか
トヨタといえば、安くて丈夫で、特徴はないけれども扱いやすい特性のクルマだというのが20年前の印象。私の乗っていたレビンもセリカも、そうだった。ところが、最近はアクアに乗ってもライズに乗っても、のきなみガタガタな乗り味でグニャグニャなステアリングの、コストダウンが強いと感じてしまった。
もちろん、カローラ、クラウン、レクサスとしっかりしたクルマを作る実力はあるのは確か。なのに、このシエンタはどうしたことか?
たった 10000km しか走っていない個体なのだ。ふつう、だいぶ熟れてドライブが楽しくなる頃合いじゃないか。
シエンタの3列目は「観光バスの補助席」
室内の座席の質感は完全にフリードに負けているし、3列目なんて観光バスの補助席級。2列目シートは座面が低くて妙に頭上に空間が広がる。USBコネクタだけはしっかり付いていたりする。お金のかけ方がチグハグというか、世の中の人々がそれを望んでいるのかーーー
安全装備やハイテク機能の弊害?
いや・・・コスト制限がキツすぎるのか。価格は 300 万円以内、エアバッグはカーテンエアバッグまで備え、全車速追従式クルーズコントロールまでついている。ここまで盛りだくさんは正直、エライ。
走行性能に割り当てられる予算が、きっとギリギリなのだろう。そのぶん、先進安全装備を駆使して、ドライバビリティの悪さをカバーしたほうが安くて確実、と考えたのかも。
前の車が停止するとブレーキがかかる機能なんて、その最もたるもの。確かに便利な機能ではあるのだが。
私はこれがちょっと心配で、当然になって果たして大丈夫? という疑問も現れる。ドライバーに「頼りすぎないようにして下さいね」なんて言って責任を押し付けてはいないだろうか? 考え方は悪くないが、動作している時に小さなブザーを鳴らすとか、もう一工夫欲しい。
絶対に人は慣れてしまう。運転をドライバーの責任でいる以上、うるさいと言われようが伝えることを諦めてはならないと思うのですが。
それでも褒める TOYOTA SIENTA
大きすぎないスクエアボディの恩恵
ドライバビリティに対しては残念な面もありましたが、褒めるところは褒めたいし、認めざるを得ない実力もしっかりあります。
やはり商品力の高いパッケージングの、実用面で強い車。大きすぎないスクエアボディでできることは星の数。車中泊よし、DIY派は資材もたっぷり乗せられるし、大型家電の衝動買いにも耐えられる。ホームセンターで家具のお持ち帰りもオーケーでしょう。
荷物をたっぷりと乗せられる優位感もありますよね。シビック乗りの私なんて、小さい冷蔵庫も長さ180cmの長尺物も、わざわざ家族にレストランで待たせて家に運んでいるんです。家族と共にいる時間が目減りするのは、家族想いのお父さんなら許せないでしょう
ちょっと大きなものを買ったとしても、シエンタならばなにも犠牲にせずに運び切る。空間はチカラなり。
シエンタよ 2列目は「チャイルドシート用」の割り切りで勝て!
2列目、チャイルドシートをつけてしまえば、フリードのキャプテンシート装備の優位点は無いものになるわけです。リアの大きな窓も、子供にとっては楽しいの一言。走る車でいきがってみせるより、大きな窓でノンビリと走らせて、そもそもチャイルドシートで窮屈な思いをしている子供の快適性を少しでもあげる。
シートの低さは、チャイルドシートに子供を乗せやすくし、子育て中の腰痛を軽減。子供の乗り降りにも優位でしょう。扉付近につく補助のグリップ、車内の空気を循環させるサーキュレーター、スライドドアにつくサンシェード。車の基本性能とは違うところの細かい便利が、宝物のように詰め込まれる。
3列目を認めない選択肢
7人乗りのシチュエーション、極端に警戒すべき重量によるドライバビリティの劣化は、運転支援システムによる警戒と早期ブレーキで解決。3列目は緊急用。あまりに快適にしてしまえば、常用を考える人も現れる。後部側の衝突安全性は、とてもじゃないが確保は無理。だから、ペラペラシートにして常用を防ぎたい、と考える割り切りもアリなんだろうな。
考え方を「運転」から「実用」に変えるだけで、シエンタの考え抜かれたパッケージングが理解できる。
TOYOTA SIENTA 総括
私は以前、カーシェアで先代シエンタに乗ったことがある。素直なステアリング特性、しっとりとした乗り味に、流石はトヨタだと感じたものだ。しかし新型シエンタはどうだろう。いつまでもブルブルと揺れている車体は、私はどうしても気になります。
自動車雑誌の記事を見ると、「走行性能はほどほど」と書かれているが、これはほどほど?。ファミリーカーとしての充分な安全性につながる走りには、辿り着いていなくないか?
車としての基本性能、目に見えないところにこそ拘りを持って欲しいのです。細かく気の利いた装備が多いから、車としての期待値がどうしても大きくなってしまう。沢山の人が使う、ファミリーカーの目指すべき安全性は、先進安全装備と、ほどよい乗り心地と、ドライバビリティ。「こんなもんかな」で済ましてはならないんだ。
そして、トヨタさん。セールス現場の声に耳を傾けすぎることなく、このサイズでは7人は無理だと言って欲しい。常時7人乗っているシエンタは必ず現れます。その人達の命が救える機能がつくまでは、トヨタが無理だと発信して諦めさせて欲しい。世界第一位の誇りを、見せつけて欲しいのです。
新時代の街中スタンダード、国民車は、シエンタのような箱型のクルマが良い。人が一番リラックスできる、今の時代に適切なサイズの昔のカローラのようなクルマ。軽自動車では心許ない衝突安全性を、普通車として備える車。シエンタはそこに一番近い車であるし、商品としての実力も備えている。あとは、安全に走れる性能が欲しい。
世界のクルマを牽引するのは、やはりトヨタであるべきなのだ。
結びの瞬景
私は結構エクステリアは気に入っていて、プリウスにしてもシエンタにしても造形力のトヨタは一味違うと思っています。しかしね、シエンタの走行性能、もう少し何とかして欲しいですね。
クルマの基本性能を疎かにしてどうするんだと言いたいワケ。シエンタ検討中の方には嫌われるかもしれないけれど、見直すきっかけ、乗り比べて納得するきっかけになれば幸いです。