【偽りなしの輸入車選び】VOLVO V60 T5 Inscription

20年ほど前になるが、クルマ雑誌を読んでいると「走りはやっぱりFR」だとか「FFはステアフィールが良くない」などという言葉がおどっていた。走りの良さを伝えたい自動車雑誌は、誌上対決ではどんな時でもFR。FFで楽しいなんて言われていたのはホンダくらいしかなかった。

 

それを否定するのは、すでに20年前の話しなので止めにしよう、とは思う。むしろ、よくぞFFが主流になりつつある時代にFRだなんだと主張ができたものだと、今では関心するほどなのだ。

 

その意志は、ウェブ上で記事を書く私は敬意をもって受け入れるべきなのである。FRをほとんど知らずに、FFの最高峰 「VOLVO V60」を語ろうというのだから。

 

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偽りなしの輸入車選び VOLVO V60

その魅力は走りにあらず

そもそも、私は狙って「FF車」を選んだわけではない。

 

私がボルボを選んだ時は、日本車が悩んでいた「デザインの共通性」に飽き飽きしていた頃であり、ヘッドライトの吊り目具合に嫌気がさしていた頃であり、子供が生まれた直後なもんだから思考が「安全性」に傾いた頃であった。

 

当初、ボルボはFR車が主流だと思っていたし、北欧で製造されるクルマであるからAWDくらい付けられると思っていた。ところがどうだろう、ボルボは随分前にFF車メーカーへ転身していたというじゃない。

 

しかし、触れてみれば今まで乗ってきた中で最も濃厚な乗り味であり、車両の重さを上手に安心感に変える印象に、乗った瞬間に虜になったし、ボルボ推しになったし、クルマはFFで十分だと思うようになった。

 

VOLVO V60は、その新鮮さをもう一度味あわせてくれたクルマだったのだ。

 

ボルボV50と飯山

※ このクルマは私の最初のボルボ、パッションレッドのV50 Aktivです。

必要な時は選ぶべき ボルボの安全性能

ボルボへの共感の最もたるは、安全性能であることは間違いない。

 

そろそろマルチシリンダー・・・と思っていた私にとっては少し残念であったのは間違い無いが、15年前のボルボは直列5気筒FFパッケージという、日本車では聞いたこともない方式を採用していた(ホンダが出していたっけね・・・)。その第一の理由は「クラッシャブルゾーンの確保」である。

 

クラッシャブルゾーンを確保するにはボンネットを長くする必要がある。もちろん各社様々なパッケージングで挑んでいた。準プレミアムであったボルボにしても、縦置きでも横置きでもサイズがほぼ同じと言われるV6エンジンを採用する道もあったのだが、ボルボが選んだのは横置き直列5気筒エンジン。

 

その後Drive-Eという直列4気筒低加給ターボに発展したことは、皆さんご存知のとおりだろう。

 

6エアバッグ標準装備とあわせて、子育て真っ盛りのワタシたち夫婦にとっては一番安全なシェルター。それがボルボの良さだった。

 

パワーソースの小型化は、衝突安全性の強化の為に行われた。その上で、VOLVO V40では歩行者用エアバッグを搭載し、さらにVOLVO V60では、フロントアクスルと共に前輪を前に出し、ドライビングポジションの適正化、衝突安全性の強化、排ガス処理システムの搭載位置エリアの確保と進化させた。

 

スタイルを犠牲にせずに、どこまでも人を守るクルマへの道を進もうとする姿勢。その結果、FFプレミアムのベンチマークになる先進のパッケージを作り上げた。これがVOLVO V60に惹かれる理由なのだ。

 

ボルボV60 コックピット

 

ところが走りまで良くなっちゃった V60

さて、記事の当初に「FFの最高峰 VOLVO V60」と書いた。そう、VOLVO V60に乗るとわかる。トルクステア?強アンダー? FFのネガなど感じないその性能は、まさにFFの最高峰なのである。

 

クルマの前方で静かに鳴るエンジンサウンドは、”苦労を知らない”ケロっとした軽やかさでクルマをグイグイ前に出す。過去のマルチシリンダーのような歌声は楽しめないけど、軽快感は同等以上。350Nmのトルクは少し大きく感じるけれども、車両重量の重いVOLVO V60ならピッタリのキャラクターだろう。

 

SPAプラットフォームにより、ウインドウの傾斜角度やAピラー取り付け位置が調整され、ドライビングポジションが最適化。着座位置は低いのに、前方視界はすこぶる良くなった。(V40はボンネットが高く、視界は良いとは言えなかった。)水平基調のダッシュボードは端正な美しさを感じる他に、視覚的安心感を得ることができる。おかげで前幅 1,850 mm を感じない。

 

だから、走りたい気持ちが高ぶってくる。

 

VOLVO V60 シフトレバー

スポーツカーのような目線も楽しい

そこで特筆すべきは、フットワーク。

 

足回りの出来の良さは、XC90からはじまったSPAプラットフォーム車としての最終開発車だけあって、絶妙の一言だ。サスペンションは路面のウネリを上手に「触る」。まるで腕でも付いているようにアスファルトのデコボコを処理していくのだ。

 

着座位置とタイヤの位置、車両の揺れの感覚から、タイヤの高さと同じか、それよりも低いのではないかと思わせる着座位置と低重心っぷりは感動。疲労感を無くしてくれるばかりか、少し強引にカーブを曲がるような走り方をしたとしても、フラットな姿勢を維持してくれる。

 

私がクルマを借りたときはいつも試す道があって、急な下り坂とRの違うカーブが2段階続く組み合わせは、クルマのバランスが崩される事を余儀なくされる。カーブの途中でステアリングを切り増したり、アクセルで速度を調整するから、サスペンションの設計の悪い車は、頭を揺らしてバタついてしまう。

 

VOLVO V60はこの道を、終始弱アンダーステアでスッキリ切り抜ける。後部座席に座る人には、厳しい道だとは気づかないことだろう。

 

あまりに軽やかな身のこなしなのである。重量級の良さも感じ取れ、しっとりした走り味にはご満悦になってしまうのだ。

 

もしかしたら、エンジンは大人しめなものだから、ちょっとツマラナイと思う人もいるかもしれない。

 

けれども、輸入車に求められる「和製スポーツカー顔負けの快速性能」をしっかり見せつけ、プレミアムカーへの階段を着実に上がっていることがよくわかる。限界が高いから安心して運転ができる。これが「最高峰のFFカー」と言わずに、何というのだろうか。

 

ボルボV60

 

気をつけたい残念の数々

ところが、である。VOLVO V60はWEB上でも「最高!」と賛美されるにも関わらず、残念な発信を聞くことも多い。

 

ひとつは「塗装」。リアまわりが多いようだけど、塗装が剥げていたり油汚れのようなものがついたりという声を聞く。塗装はプレミアムカーのステータスのひとつであるから、同様の声があがらないように品質があがると、なお良いだろう。納車時は要チェックだ。

 

また、燃費は悪い。マイルドハイブリッドにより改善の兆しはあるけれど、そもそもボルボは昔から重いのだ。車両重量は燃費に直結するが、いまやそれは二酸化炭素排出量の増加に繋がることなのだ。厳しい事を言うけれど、新しいテクノロジーに頼るのと同時に、ダイエットも考えなくてはならない時期ではないだろうか。

 

もうひとつ、とても個人的な意見だが、ボルボの足回りは基本、Inscription に合わせられていると考えていいだろう。V50、V40と乗り継いだ印象で言えば、V50はAktivよりもSEが、V40はMomentumよりもInscriptionが、ホイールサイズが大きくなるのに乗り心地が良くなる。

 

Inscription を狙うような裕福なお客様を、囲い込みたいんだろうな。Momentum と Inscription は、ぜひ乗り比べてから選んで欲しい。

 

VOLVO V60CC Inscription

プレミアムへの階段の足がかりだ

とは言え、適度な豪華さと最高に気持ちの良いシート、北欧インテリアの手に入るVOLVO V60はやはり、最高のFFカーのひとつである。

 

ライバルは多く、Peugeot 508 や VW Passat も横並びの実力を持つ。彼らもFF最高峰カーに数えられるに違いない。

 

よりエモーショナルなPeugeot 508。より安定的で、安全性能も横並びのVW Passat。比べてみれば、大変手強い戦いになることだろう。

 

プジョー508SW フロント

※ 写真は、Peugeot 508SW。

 

VOLVO V60が彼らから一歩抜きん出ようと考えるなら、明るいインテリアでもなく、安全性能でもなく、クルマとしての実力でもなく、ディーラー品質を上げる努力を惜しまないことだ。

 

クルマは人が売り、人が買う。その基本を忘れなければ、日本でもいずれ本当のプレミアムカーになるに違いない。

 

準プレミアムとしてのボルボが好きであったが、彼らの目指すプレミアムカーへの道は、ぜひ実現してほしい。少し寂しいけれども、いつまでもVOLVOに存続してほしいから。

 

その出発点となるに相応しい、北欧エステート。これが、VOLVO V60だと私は思っている。

 

VOLVO V60 CC

※写真は VOLVO V60 CrossCountry

VOLVO V60 T5 Inscription Spec

VOLVO 性能曲線 T5エンジン

紹介車 VOLVO V60 T5 Inscription(MY2019)


Engine 1,968 cc Line 4 DOHC Engine

Max Power 254 ps

Max Torque 350 Nm

Width 1,850 mm

Length 4,760 mm

Height 1,435 mm

Weight 1,700 kg

JC08 12.9 km/L

安全装置  6 エアバッグ / 先進運転支援システム等

あとがき

昨年試乗した時の印象をもとに、記事に纏め直してみました。もう一年くらい経つのかな。

 

V60 T5 Momentum の試乗車を用意してくれるという約束を最後に、セールス氏とは通信が途絶えました。ボルボのもう一歩って、こういうところだと思います。まあ、セールス氏にも都合があるし、生活もかかっているから、仕方ないね(笑)

 

VOLVO V60は良い車。他の輸入車に目を向けるようになったけれど、実力は高いと思いますよ。優雅にゆったりと運転したい人にも、快速ツアラーとしてもベストチョイスといえる車。

 

Peugeot 308SW が走りで勝てるのは、直進安定性かな(笑)