懐メロは人をあの日に戻す まこまちの車選び 2025 地獄沼編 第4話

まこまちの自動車選び 2025 地獄沼編は、車選びの正解がわからなくなった私の迷いが主役の物語…何のこっちや…

 

信州輸入車ショーで吸い寄せられたのは、BMW M135。Cセグのハイパワーは、家族を乗せつつ背の低い車に乗りたい私の為にあるマシンなのか?座ってみたくて仕方がないぞ…!

 

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BMW M135 まるでレゴブロックのように身体に馴染むシート

BMW N135 のフルショット

 

HONDA CIVIC e:HEVは、日本が得意とするハイブリッド機構を積んだハッチバックだ。モーターで静かに走り、アクセルを踏めばそれなりに速い。低燃費とスポーティをうまく両立させた、いいとこ取りの一台だと思う。

 

一方、BMW M135iは、そんな“いいとこ取り”を蹴散らす勢いのホットハッチだ。直4DOHCにツインスクロールターボを組み合わせ、300馬力と400Nmというスペックで路面をグイグイ蹴るのだろう。走りたいという気持ちが、車体から滲み出ている。

 

価格は714万円。高い。でも高いとは言いたくない。が、言わずにはいられない。Type Rが買えるじゃないか、というツッコミを飲み込むには、少しだけ時間が必要だった。ただし、見た目は完全に大人。洗練されていて、どこか余裕がある。これはホンダ、というか、日本車では出せない雰囲気だ。

 

そのM135iからプンプン漂う走りの匂いに当てられた私は、気づいたらスッとコックピットに腰を落としていた。そして座った瞬間、身体が言った。「うわー、キモチイイ……」

 

まだ何もしていないのに!

 

BMW M135 のコックピット(窓の外から撮影)

 

ガチガチなホールドではなく、たっぷりと余裕のあるシートの微細なカーブが身体にフィットし、自分の骨格とシートがピタリと、レゴブロックのようにハマるのがわかる。さきほどの2シリーズグランクーペとは明らかに違う、体を思いやる座席の素晴らしさたるや、思わずシート買いしてしまいそう。

 

ふと目を下すと、ステアリングには赤と青のステッチ。おぉ、いつかの愛車 Peugeot308SW TechPackEdition を思い出す。ステッチを2色にするという手間がどれほどのものなのか私には想像もつかないが、目を楽しませる演出は素直にニヤリ。うん、これだよこれ!

 

そう、車というものは、さまざまな機能やデザインを用いて、機械と人間とを繋げることを諦めてはいけないのだよね。

 

BMW M135のステアリング

BMW M135のダッシュボード

BMW M135 のエンブレム

 

そんな独り言をつぶやきながら、ステアリングにそっと手を置いた。ポジションは、すぐに決まった。うん、こういうのを“しっくりくる”って言うんだな。「このクルマ、もし自分のものになったら……」と、つい本気で考えてしまう。

 

でも、ふと我に返る。ここまで払わなきゃ、最高のシートには座れないのか?高級車とは、そういう現実を突きつけてくる存在でもある。

 

クルマの道楽とは、結局「いいクルマを買うために高いお金を払うこと」なのだろうか。確かに、私の労働のモチベーションの一部はクルマにある。「クルマのために働いている」と言えないことも……ない。うん、多分そう。

 

でも、人生のすべてをクルマに捧げるわけにはいかない。旅行もしたいし、美味しいごはんも食べたいし、できればエアコンも新しくしたい。人によって、このバランスは違って当然だ。じゃあ、私はどんな人生を望んでいるのか?

 

――いや、重い!重いよ!
気づけば、首をブンブン振りながらコックピットを後にしていた。しかしBMWは容赦しない。ドアの向こうに待っていたのは、また別の、新しい世界だった。

 

 

BMWの猛攻!クラシックカーが私を勇気づける

現れたのは、クラシックカーだった。

 

人間というもの、大抵は新しいものが好きだ。世の中の検索傾向を見ても、多くの人が興味を持つのは“最新”で“今”の情報ばかりだろう。だからこれを紹介しても、正直、読者の皆さんには「ふーん」と思われてしまうかもしれない。けれど、それでも言いたい。見てほしい。仲間になって欲しい。この佇まいは、もはやただの古いクルマではない。

 

これは、芸術。

 

“世界一美しいクーペ” BMW M6

BMW M6 フルショット

BMW M6 ステアリング

BMW M6 コックピット

BMW M6 リアのデザイン

 

それは、BMW M6だった。

 

「世界一美しいクーペ」、私はうなずくしかなかった。このクルマは、ちょうど私が生まれた頃に世に出たモデルだ。同じ時代の空気を吸いながら成長してきたと思うと、不思議な親近感が湧いてくる。

 

すでにこの頃から、BMWのアイデンティティはしっかりと刻まれていた。特徴的なキドニーグリルはもちろんだが、それだけじゃない。ボディ全体に流れるライン、低く構えた姿勢、フェンダーの張り出し——すべてがBMWとしての存在感を主張していた。

 

これはただのクラシックカーではない。「BMWとは何か」を示す、原点のような一台だ。

 

そのアーチが美しい BMW 2002

BMW 2002 フルショット

BMW 2002 ステアリング

BMW 2002 コックピット

BMW 2002 リアデザイン

 

BMW 2002。wikiを読む限り、「2002 ti」が正解のようだが…私が生まれる前に製造された車である。工業製品というよりは、まだまだ手による板金が行なわれていたのだろう、まろやかなアーチがどこもかしこも美しくて、行ったり来たりとしながら、何度でも眺めてウットリしていた。

 

車を大事にし続ける道楽には、何だかとても共感してしまう。今、改装古民家に住む私…たぶん以前よりもモノを大事にしたいという感覚が強くなった…だからこそ生まれた感情なのかもしれない。

 

……思い出した。monogressは、元々そういう場所だった。モノの価値を、背景ごと語りたかったのだ。その想いが、自分の中からふわっと立ちのぼってきた——

 

忘れていた宝物を見つけたような、懐かしい旋律を聴いたような、そんな気持ちが胸の奥を通り抜けていった。ああ、私はやっぱり、“語りたかった”のだ。ただ速いだけでも、便利なだけでもない、作られた理由や、人の勢い、誰も汚してはならないアイデンティティ。

 

それこそが、monogressの始まりだった…!

 

 

見え方が変わる新しいボルボ

そんな事を思い出すと、車の見え方がガラッと変わる。技術には洗練を求め、ニュアンスには歴史を求める。

 

ボルボが目の前に現れた。昨年、この場所で触れたEX30。昇進したら検討しようと嫁さまと話したEVボルボ。相変わらずボルボの全てが詰まり、独自の造形に妥協しない姿勢は、有無を言わさず欲しくなる。

 

だが、本当にEX30かと言われれば、一冬超えた私にとってはNoである。厳しい寒さを乗り越えたいし、荷物をもっと乗せたいし、リア駆動の大トルクより、AWDが欲しくなった。

 

VOLVO V60のフルショット

VOLVO V70のコックピット

 

相変わらず素晴らしいインテリアを持つ、VOLVO V60。EX30の新デザインが現れた事で、新鮮味が少し欠けたようだが、他メーカーが追従を許さないデザインは健在。今後はどのように目に留まるだろうか。

 

VOLVO XC90のフェイスリフト変更

VOLVO XC90のコックピット

VOLVO XC90のダッシュボード

 

フラッグシップのXC90は、フェイスリフトを大胆に変更。気品がありオラオラ感もあるデザインだが、リア周りとの相性は崩れてしまった感覚がある。インテリアは相変わらず申し分なく、黒と白の陰影が気持ちいい。

 

しかし、これらは名作になるのだろうか。BMWのクラシックカーという、普遍的なデザインに当てられた後では、なかなか首を縦に振ることができなかった。

 

私が今ほんとうに欲しい車

モヤモヤとした気持ちのまま、ここまでの車選びを自分なりに整理してみる。「これはいいかも」と思ったポイントを、一度すべて並べてみた。

 

mazda CX-60 きらめく全身

 

直列6気筒は、やっぱり良い。マツダCX-60にはいろいろ言ったけれど、マルチシリンダーはやはり自分の夢。静かに、でも確実に、欲しい気持ちが膨らんでいく。マツダめ、やはり侮れない。

 

VOLVO V40 買取前のドライブも好調だった

 

トルクは、太ければ太いほどいい。VOLVO V40 D4の、あの底から湧き上がるような大トルクは今でも忘れられない。400Nm。それだけあれば、人生はずいぶん楽しくなる気がする。

 

Peugeot308SWと富士見町

 

荷物は、たくさん積みたい。シビックでも十分だったけれど、Peugeot 308 SWの実用性を知ってしまった身には、少し物足りない。そう、あのベニヤ板がスッと入る感覚。あれこそが自由の証だった。

 

MINI ACEMAN のダッシュボード

 

インテリアは、楽しい方がいい。信州輸入車ショーで感じたあの空気。デザイナーの遊び心が詰まった空間に包まれると、「この車に乗りたい」という気持ちが自然と湧いてきた。日本車祭りでは得られない、あの香りが忘れられない。

 

VOLVO EX30 フロントシートの後ろ側

 

シートは、身体を忘れさせてくれるものがいい。
M135iほど贅沢じゃなくてもいい。だけど、座っているだけで旅が始まりそうな、そんなシートに出会いたい。シートといえば、やはりボルボは最高だった…

 

八ヶ岳の見える朝日村の駐車場

 

そして、忘れられないデザインのクルマに乗りたい。胸を張って「これは名作だ」と言える一台。
アクセルを踏むたびに、自分の選択に誇りを持てるようなクルマが、やっぱり欲しい。

 

こうしてひとつひとつ思い返していくうちに、
いつしか、心の奥底に沈んでいた理想と憧れが顔を出してきた。次の一台が、ぼんやりと、でも確かな形で脳裏に浮かんでくる。

 

もちろん、それを実現するには時間もお金も覚悟も要る。だけど、それはきっと楽しい苦労だ。そう、クルマ選びは、楽しくなければならない。

 

「欲しい」と思うこの気持ち。そのかけがえのない灯火が、いま再び、胸の中に灯った。さあ、もう一度、クルマ選びに挑むのだ。