2025年7月に手放した、HONDA CIVIC e:HEVへ送るラスト・メッセージ。あえて古い車へと乗り換えた私だが、シビックの走りの哲学は偉大であった事を、今更ながら感じている。今ここで、惚れ込み、病みつきになり、新たな門出へと送り出す我が愛車を改めて讃えたい。
HONDA CIVIC の哲学達
世界一の無音走行の哲学
何度も繰り返し恐縮。HONDA CIVIC e:HEVは、同セグメント車はもとより、一つ上のクラスさえも脅かす、最高の車であった。私がVolkswagen GOLF と比較し、一発でシビックに決めたことは何度か話しているけれど、居住性、デザインは負けず劣らずで、和製ストロングハイブリッドの高性能ぶりには世界の何者も寄せ付けないオーラがあった。
無音×最良のアクセルレスポンス、当然だろうと言わんばかりの変速ショックレストランスミッション、しっとり硬いサスペンションと、車人生が変わるんじゃないかと思わずにはいられない高性能。これがCセグ、これがシビック、庶民の車なんていうのだから驚きを隠せない。車の歴史の転換点だからこそ楽しめるレアリティ。所有しないわけにはいかなかったのだ。
Cセグ最良のHBスタイルの哲学
とは言え、実のところはZR-Vと天秤にかけた上での、もう一度、最後に一度のスポーティハッチバック。少し若々しいかな、などと思いながらも、自分も若返れば良いじゃないかと前向きになる存在感。格好良いアングルは多少のコツはいるけれど、自慢のブルーが我がiPhoneの写真アプリを彩るのだ。
カラーバランスの調整には苦労する。「自然な彩度」は超鬼門。でも全然平気。青い車はそんなワズライを跳ね除ける。FFを知り尽くし、見晴らしを意識し、ハッチバックを吟味しきった、安定感ある動物ボディは、前脚で掛けるイメージにピタリとハマる視覚的重量バランスで逸品だ。傷つきやすいのが欠点だけど、何度も磨けば愛着も増えるというものだ。
自慢できる選択肢の哲学
そんなだから、人と車の話をするのが楽しくてたまらなかった。選んだ自分を誉めたかった。人に運転させる度に、良い車だねと称賛されることの愉快さが、たまらなく好きだった。そんな体験を一番に感じさせてくれたのがシビックだった。
同じ車を買ったと、ブロガー仲間から聞いた時の嬉しさも、とても参考にさせてもらったと、ブログにいただいたコメントも、全てはシビックが、あったから。人と人とを繋ぐことのできる車は、世の中には中々ない。シビックのある場所には、人が集まるのではないか?
家族を大事に考える哲学
これが本当の、一生物の思い出か、それともまだまだ遊んでくれるか。男親としてはいつまでも過保護にしたい、娘との撮影タイムは忘れられない。愛車×可愛い娘のツーショット、脳裏に焼きついて離れない。世界の車好きのパパに自慢したい、我が人生最高の出来事のひとつである。
そもそも、私の望むすべてを携えた車だった。広い車内は家族にも好評だし、ストレスフリーな走りでドライバーも大満足。嫁さまが私抜きで長距離を走った初めてのクルマ。運転しやすいという言葉もまた、嬉しかった。リアについたエアコンダクトも、子供達に歓迎された。どこまでも満足を追求したクルマだった。
ラスト・メッセージ
それなのに、どうして私は手放すのだろう。他の車に乗りたいからか?今しかないチャンスを掴みたいからか?
たくさんの理由があって、それは私からシビックを引き離すための力になった。硬い足は時より身体を苦しめる。惚れ込んだリニアシフトコントロールは、プログラムされた単調さが目立ち始めた。ギミックを味わえば味わうほど、ホンモノにもう一度触りたくなる。ないものねだりは、家族優先の考え方や、移住先の車事情を味方につけ、離れる道へと舵を切った。
エンジンスタートを押す。
無音で起動するクルマを模倣するシステム達。
ドライブモードに変更したら、静かにアクセルを踏み込んでいく。
これ以上ない、右足とリンクするトルク感。しかしエンジンは無言のままだ。
ステアリングを、右へ左へ。美しく削ぎ落とされた素直なボディが華麗に舞う。
目の前の視界が開けた時、約束した踏み込みで合図する。ストレスなく軽やかに、エンジン音は美しいステップを刻みながら、異次元へと連れて行く。
さあ、新しいページをめくろう。
新しい出逢いへと、心を解き放とう。
前向きな言葉を重ね、勇気づけあいながら、
後悔のない別れを、2人は静かに受け入れる。
これが私のカーライフ。溺愛とサヨナラを繰り返しながら、心を揺らし、時に涙を誘いながら、でもそのひとつひとつが、人生を美しく彩るのだ。
出逢いと別れが多いほど、きっと、いつか飲む酒が旨くなる。人生の、ほんのひととき。そこに、何ものにも代えられないカーライフがある。
シビックよ
素晴らしいカーライフを ありがとう!