クルマというのは、どのメーカーもグレードというものを用意する。多様な選択肢を散りばめること、様々な金額を提示することで、買いやすさや豪華さを演出する。
ボルボもひとつの車種に、装備充実のMomentum、豪華装備のInscription、走りを予感させるR-Designと基本3つのグレードを用意。それぞれ個性があり、Momentum + 追加装備 vs Inscription という構図になることがある、という事は、以前モメンタムのススメで紹介しましたね。
いやいや、Momentum + 追加装備 なんて言ってないで、ずばっとInscription にしちゃえばいいのさ、なんて声も聞こえてくる。確かにご予算があるようなら、それも良い。でも、Inscription にオプションをつけたくなることもあり、グレード選びはいつまでも悩ましいままだ。そこで今回は、Inscription + 追加装備 を選べてしまう方の為の、グレード選びの悩ましさを紹介。ボルボご購入を全力で引っ掻き回すよ(笑
※この記事は、aboutVOLVO で 2019年5月に投稿したものの、再編投稿記事です。
Inscription の意味は「碑文」
「Inscription」を翻訳すると、直訳では「碑文」となる。碑文とは何かといえば、石碑に書かれた文章のこと。碑文を読み解く事は、古代の文化文明を知るための重要な学問になる(碑文学というらしい。)
また、「銘刻」という意味もある。製作者が名前をモノに刻み込む事で、日本にも似たような文化がある。「名刀に名前を刻む」といえば、わかりやすいか。
「捧げる」という意味もある。色々な意味があり混乱するが、大まかに考えれば、自分たちが自信をもって世に送り出したのもですよ、というメッセージが込められていると考えてもいいだろう。
ボルボにとっての業物(わざもの)、それがInscriptionなのだ。
確かに、Inscriptionを選ぶと基本的には「大」満足するだろう。ケチをつけることもなく、何かに劣等感を覚えるわけでもなく。例えば「ボルボV60 B4 Momentum」がほしい人が「ボルボV60 B4 Inscription」を選べば、何の不満もなく6年でも8年でも乗り続けられるにちがいない。
Inscription に装着される装備類は、オーナーが心底満足できるように丁寧に味付けされているのだ。
Inscription に エッセンスをかけると物足りなくなる?
ところが、Inscriptionにオプション装備を付け足していくと、少し状況が変わってくる。そもそも高額なInscriptionに、ボルボの贅沢なオプション装備をつける・・・「上のモデル」が見えてきてしまうではないか。
例えば、
VOLVO XC40 B4 AWD Inscription
+ チルトアップ機構付きサンルーフ +クリスタルホワイトパール = 合計 |
¥5,390,000
+ ¥210,000 + ¥110,000 = ¥5,710,000 |
VOLVO XC60 B5 AWD Momentum | ¥6,390,000 |
XC40 + オプションをつければ、装備レベルは「大大」満足。
しかし、モデルとしての魅力は桁違い。XC40 に比べれば XC60 はやはり上級で、シートがT-TEC/テキスタイルになろうがサウンドがハイパフォーマンスになろうが、車格が上な以上は所有感が変わってくる。ブサ可愛いXC40は良いけれど、エレガントなXC60はやはり、良い車に見えてしまう・・・!
使える予算内で「最高の贅沢装備」を選ぶのであればInscriptionを選ぶべき。しかし「最高にいいもの」を選ぶとなると、グレードを超えて上のモデルも見据え、ボルボを選ぶ必要が出てくる。
やはり、自信を持って世に送り出されたもの(Inscription)に味付け(オプション装備)を加えると、ムクムクとヨコシマな考えが浮かぶものなのだろう・・・
各Inscriptionと競合する上級グレード
ということで、monogress は Inscription + オプション装備 を選んでしまえるあなたを支援しよう。以下に、各モデルのInscriptionに競合する上級モデルをサンプル比較した。ぜひ参考にしてほしい。
V60PHEV vs V90CC
V60 T6 Recharge AWD Inscription | V90 CC B5 AWD Momentum | |
---|---|---|
価格 | ¥7,990,000 | ¥7,440,000 |
シート | ファインナッパレザー | 本革 |
サウンド | Harman/Kardon(600W14スピーカー) | ハイパフォーマンス(330W 10スピーカー) |
AWD | 電気式 | 機械式 |
リア居住性(足元広さ) | 896mm | 911mm |
購入ポイント | 日常の買い物を頻繁にする方 | 内装の質感にもこだわりたい方 |
どちらもAWDが付いているが、V60プラグインハイブリッドは都市部での買い物だけなら、電気だけで走りきってしまう実力がある。しかし同じ価格を出すのであれば、車格が高く内装の作りもよく、マイルドハイブリッドでアイドリングストップの煩わしさを克服した、V90 CrossCountry B5 AWD Momentumはかなり魅力的なモデルだ。
XC40 vs XC60
XC40 Recharge T5 AWD Inscription | XC60 B5 AWD Momentum | |
---|---|---|
価格 | ¥6,490,000 | ¥6,390,000 |
シート | 本革 | T-TEC/テキスタイル+コンフォート |
サウンド | Harman/Kardon(600W13スピーカー) | ハイパフォーマンス(170W 10スピーカー) |
パネル | ドリフトウッド | アイアンオレ |
リア居住性(足元広さ) | 917mm | 965mm |
購入ポイント | ポップなデザインが好みなアクティブ層 | 居住性を追求したい方 |
XC60 Momentumって、330Wのオーディオだったはずだけど、今は170W、劣化したのかな・・・どうやらこの対決は下剋上状態に入っており、充電可能かつ高品質ドリフトウッドパネル、容量のおおきなサウンドシステムなど、XC40は満足度が高い。一方、60シリーズ以上の魅力は「コンフォートシート」。40シリーズにはない大ぶりなシートこそ、ボルボユーザーとしては得たくなるもの。リアシートは広さも形状もXC60に軍配があがる。
XC60 vs XC90
XC60 B5 AWD Inscription | XC90 B5 AWD Momentum | |
---|---|---|
価格 | ¥7,390,000 | ¥8,340,000 |
シート | ファインナッパレザー | 本革 |
サウンド | Harman/Kardon(600W13スピーカー) | ハイパフォーマンス(330W 10スピーカー) |
パネル | ドリフトウッド | クロスブラッシュド・アルミニウム・パネル |
乗車定員 | 5名 | 7名 |
購入ポイント | スタイリッシュなSUVを求める方 | 7人乗れることの誇りを感じる方 |
XC60 B5 AWDは商品力が高く、XC90が見えたとしてもスタイリッシュなXC60には敵わない?いえいえ、XC90の強みは、なんといっても3列シート車であること。贅沢を家族全員で共有するスタイルは、家族思いのオーナーの心が見えるよう。
この対決、XC90 Momentum はモデルチェンジで50万円近く値上げしているのでガチンコとは言わないものの、XC60にエアサス(31万円)や Bowers & Wilkins(34万円)をつけると、XC90 が見えてくる。逆に、XC90 Momentum を狙う人には、XC60 Recharge がドンピシャ。どちらも悩ましい選択になるのだ。
上級モデルの誘惑に屈しない方へ
上の資料を見ても、Inscriptionを選ぶと決めたあなた、その意思は素晴らしい。
そもそも今回の記事内容、ラプソディー=狂詩曲。自由奔放な形式で物事を伝える楽曲を表すのだ。monogress はあえて、Inscriptionを選ぼうという方に「それだけのお金があるのなら、違う選択肢もあるんだよ」と提案した。
その悪魔のささやき的提案に乗らなかった時点で、あなたにとってのベストモデルが決定したという事。今すぐInscriptionを選び、ハッピーボルボライフへ突入しよう。
なお、ボルボディーラーに対して値引きを増やすネタにも、これらの競合は使えるはず。最初に目的とするInscriptionモデルで購入を匂わせておき、2回目の商談でWEBを見たら上のモデルも気になりだした、なんて提案し、モデル毎の相見積もりを取ろう。
商談開始時に商談するクルマを確保する場合が多く、セールスさんは最初に商談を始めたクルマで契約を結ぼうとする。条件の良さなど細かく見定めて、多少でも目的のInscriptionモデルに値引きをつけて、お得に買おう。
上級モデルが欲しくなった方へ
ギリギリでもいいから上のモデルを狙いたい方。その意思を貫いて、上級momentumを狙おうじゃないか。
「モメンタムのススメ」でも書いたが、ボルボのMomentumモデルはしっかりとグレードの個性が出ている。豪華さを求めないサンプルデザインテイストは、北欧デザインの本流だ。XC40 Momentumは、限定のオプションも用意。Inscriptionに負けない、MomentumにはMomentumの良さがある。
Inscription と上級モデルとの差額は、電動化モデルが増えたことで入り混じっている。上級モデルを選ぶ事はボルボの戦略にはまったような気もしなくもないが、自分にあったより良い選択ができると考えれば、まんざらでもない。
ふん!Inscription バッヂなんてさよならだ!と言う方。自分らしいもっとも良いモデル・グレードを見つけて、楽しいボルボ選びを!そしてあなたも、ハッピーボルボライフを目指してください。
リチャージグレードが上位モデルと競合する
Inscription + アルファで競合は少し昔の話のようで、実際のところ XC40 も V60 もリチャージグレードが上位モデルと競合するように設定されるようになった。Recharge Inscritopnは、パノラマルーフなどの豪華装備がついていることもあり、オプションをつけるにしても、最小限で済むと考えてもいいだろう。
下位モデルの豪華装備充電グレードにするべきか、上位モデルの シンプル・イズ・ベスト Momentum にするべきか。最後にはインスピレーションに任せるしかなくなる。結局は己の趣味の話だし、お得感がほしいのであれば競合させて値引きの良い方を選ぶというのも、悪くない。
ただ、Inscription も Recharge もと欲張ると、かえって使わない無駄装備まで手にしてしまうかもしれない・・・そんなあなたに、今ボルボの中で一番選んで美味しいのは、実は「Inscription Expression」なのかもしれない。60シリーズ リチャージグレードに用意されたグレードだ。なぜ「Momentum」と言わなくなったのかは、少し興味ぶかいけどね(笑)