プジョーにするべきか、どうするか考えていた時、とある記事に出会った。
508の日本導入時のインタビューだったが、私が求めていたものが散りばめられていて、感銘を受けたのだ。
そこに書かれていたことは、クルマのエンジンはユーザーが決めるべきという、私の考えを肯定するものだった。ボルボからプジョーに乗り換える時の、私の背中を押してくれた記事を紹介します。
最適なパワーソース
自分の認識を再確認できるメッセージ
プジョーCEO、アンパラト氏は、プジョーのブランドとしての方向性の話として、デザインファーストである事、アイコックピツトは自動運転につながるキーであることとともに、以下のように話した。
3つ目は「シンプルな選択」です。お客さまは、自由にパワートレインを選びたいもの。国、都市、規制に応じて、最適なパワートレインをセレクトできるようにします。ガソリン、ディーゼル、プラグインハイブリッド(PHV)、そして燃料電池車(FCV)も出てくることでしょう。パワートレインはさまざまです。しかし、それぞれを搭載するプジョー車は同じものです。
出典:web CG
その通り!エンジン選びは、自分の住む場所と環境によって左右される。だから複数選べることが望ましいよね。
私はディーゼルボルボを手放したくて手放した訳ではなかった。例えばV60 D4が日本に入っていれば、強い意見をVCJに投げかけたりしなかったと思う。
ボルボに対して、日本へディーゼルを入れなかったり、S60にディーゼルを設定しないのは間違いだと意見してきた私としては、次の車はやはり、次世代ディーゼルエンジンに乗りたかったんだ。
クルマの生涯燃費は、ハイオクガソリンモデルで 8km/L (V50)がせいぜい。ディーゼルモデルの 15km/L(V40)と比べれば、どちらが私にあっているか、一目瞭然。
プジョーCEOの話で、エンジンを選ぶ権利はユーザーにある事、この認識が間違っていなかったと、自信を持つことがてき、すごく嬉しくなった。
最終的には消費者が決定を下す
アンパラト氏は続ける。
PSAのパワートレインの戦略はシンプルです。電動化を進めていくし、ガソリン、ディーゼルエンジンの開発をやめるわけではない。サポートも続けます。「商用車はディーゼルでなければ」という市場があります。最終的には、消費者が決定を下すのです。「ディーゼルはもういらない」となるまで続けます。
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つまり、エンジンの選択について、市場原理に任せるとしている。メーカーが選択を絞るのではなく、ユーザーが選ぶ。
とてもシンプルで、健全な考え方だよね。
環境に対する考え方は、人それぞれ、まちまちだ。ガソリンは排ガスが綺麗な反面、CO2を多く出し燃費が悪い。ディーゼルは、燃費はいいしCO2も少ないが、排ガス処理に限界がある。排ガスを出さないEVもハイブリッドも、バッテリー製造にCO2を使ってしまう。
そもそも、大型ミニバンではなく、小型車に乗ることが環境に一番良いという人もいるだろう。車を乗り換えることは環境に悪いと考える人だっている。
であるなら、民主主義であり車が自由に選べるとすれば、やはりクルマ選びもエンジン選びも自由な方が良いと思わない?
昨今、クルマ選びを考えるときに、環境問題も一緒に考えるべき。すでに憧れだとか、出力の強さだとかだけでは、クルマは選んではいけない時代だ。
メーカーはユーザーに対して、環境に良いエンジンがどれなのかを意識してもらい、自分に合ったエンジンを選んでもらえるよう、働きかけなければならない。
環境対応エンジンが用意できない時点で、クルマのエンジン選びを、メーカーや、ましてやインポーターが決定してはならない。そう私は考えるのだ。
プジョー 1.5L BlueHDiディーゼルエンジン。ユーロ6.2にも対応するこのエンジンについての研究記事も合わせてご覧ください。
買えるEV戦略
プジョーCEOはまた、EVを 208 というコンパクトからラインナップを始めることについて、以下のように話している。
当面はエネルギーミックスを考慮する状況が続く中、果たして10万ユーロ(約1250万円)のEVを買える人が、どれだけいるでしょうか? われわれは実際にクルマを販売したい。そのために、208からEV化を始めたのです。
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この事に、馬鹿げているという人はいないだろう。誰もが求めやすい価格で、誰の手にも届くものを作る。その為に技術を培う。歴史ある大衆車メーカーであるプジョーらしい、真っ当な考え方だと感じた。
今まで、EVは高価であるから、高級車として販売するしかない側面はあった。テスラ がそうであるように、バッテリーが高価である限り、実用EVを販売して生計を立てるならば、高級路線に走るしかなかったと思う。
しかし、プジョー208であったり、フォルクスワーゲン iD3 であったり、トゥインゴEVであったりと低価格帯のEVが出るとなれば、高級EVメーカーは高級車メーカーに移行するほかない。普及価格帯のクルマを作ろうとすれば、安く作るノウハウを持つメーカーには敵わないのだ。(もちろん、テスラ も黙っていないだろうし、価格の下がったプレミアムEVには期待している。)
本当に環境のことを考え、EVの普及に邁進する。これは、テスラのように先駆けになるか、安価なクルマとして販売するか、そのどちらかだ。高級ブランドとしてしかEVを発売できないボルボ(Polestar)は、将来に不安が残る。
私が望むメーカー像は、プジョーなのかもしれない。ボルボは安全性への共感はするけれど、パワーソース選びでは共感ができない。エンジンのバッチをつけるメーカーであるならば、もっと幅広くエンジンを選べるようにして欲しかった。ボルボから離れてプジョーに行く時、私はそのように考えていたのだ。
ボルボも力を入れている?
人によっては、ボルボだってプラグイン・ハイブリッドに力を入れているし、XC40 Recharged というEVの発売も決定している。力を入れていないわけではないじゃないか、と言うかもしれない。
それは私も期待していたことではある。XC40のプラグインハイブリッドは、ようやく日本のハイブリッドに対抗できるクルマかもしれないと、ウキウキもしている。しかし、乗り換え当時のボルボの戦略では、海外にあるXC40やV60のディーゼルモデルは、日本では販売しないと決めていた。
ボルボの考え方は、「きっとディーゼルは無くなる。だからガソリンかPHEVにでも乗っていないさい。」と決めつけるよう。その決めつけがボルボの良いところと言えなくもないが、私には合わなかった。
そして、環境対応に不完全なガソリンモデルであっても、高いステータスを作り上げるために、敢えて販売価格を高くする。ユーロ6でも、排ガスの達成基準はボルボは緩めだ。その事をどう思っているのかわからないが、車両重量もあいまって、燃費を良くしようというメッセージは得られなくなっていた。
環境への配慮はメーカーとユーザーの二人三脚
どんなに規制が辛くなろうが、新技術によってディーゼルを存続させ、EVさえも作り上げようとするプジョー。将来の展望が見えやすい。
燃費の悪さの抜本的改革を待つ間、もっているはずの環境ディーゼルを輸入しないボルボ。環境問題をどちらが正しく見つめているかは、言うまでもない。
その残念さは、私の背中を後押しすることになる。
ボルボが好きだけれども、プジョーを選んだストーリーでした。
Photo VOLVO V40 D4
この環境対応ディーゼルエンジンは、市街地を 13 km/L、高速道路を 25 km/L で走るツワモノ。一度の給油で最大 1000 km を走れるボルボ最良パワーソースを、なぜ量販モデルの XC40やV60で展開しないのか。この疑問は最後まで解決しなかった。
Photo Peugeot 308SW 1.5L BlueHDi
プジョーは、小排気量で軽快なガソリンエンジンと、ロングツアラーのディーゼルエンジンの2つを基本的にラインナップする。ユーザーが選びやすいのは、あきらかにプジョーである。