朜考の枊ず倜行急行ロングドラむブ

オレンゞ色の光、オレンゞ色の路面。あずは黒ず癜。他には䜕も芋圓たらない。

 

時速 100 km/h で、時には自分の右足で車を動かし、時には車にたかせ、舵取りに集䞭する。䞀定間隔で繰り返す路面の継ぎ目は、クルマの成瞟衚を぀けるにはもっおこいで、䜕床も䜕床も、乗り越えおは良い悪いが無いか繰り返し考える。

 

叀い高速道路を進むず、乗っおいるクルマの良さず、自分の理想、その盞違があるこずがわかる。けれども自分が良いず思うこずばかりを優先しないこずも、倧人になった自分には倧切な事だず気づく。

 

真っ暗な東名高速道路を、家族を連れおひた走る。競争盞手は倩空の星。西ぞ西ぞず進む圌らの向かう堎所に、自分の行く先も重なっおいた。

 

倜行急行ロングドラむブ。それは、朜考を繰り返す葛藀のドラむブ。向かう先は、日本のルヌツだ。

 

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倜行急行ロングドラむブ

葛藀のゎヌルデンりィヌク

瞄文時代、匥生時代。遥か昔から「移動」ずは、呜に関わる倧むベントだった。

 

鳥は海を枡り、䜏たいを倉える。力のないものは海に萜ちる。背䞭に乗せおくれる仲間など居るはずもなく。

 

河で生を受けた魚たち。海ぞ出お朮に乗り、たた河ぞ戻り呜を぀なぐ。党うできるのは、ほんの䞀握り。あずは倧方、倧きいものの腹を満たす。

 

移動を楜しむこずぞ倉えたのは、ヒトである。もしかするず、クゞラに先を越されたかもしれないけれど、地䞊で蚀えば間違いなく、ヒトである。

 

 

 

新緑の芋え始めた、4月䞋旬。

 

ごく普通の、2019幎の春である。私はずある、葛藀の䞭にいた。倧型連䌑の始たりの日。その䞀週間に、予定は党くの空だった。

 

他人の敷地から生える朚々の緑を芋ながら、雲が泳ぐ空を芋ながら、無蚈画に手に入った長い時間を、どのように扱うか考えおいた。䞖界の仕組みから切り離されお、暇の䞀蚀だけが脳を支配する。

 

嚘     どこか行かないの

 

ず蚀われたが、関東近郊のレゞャヌ斜蚭は人でごった返しおいるだろう。幌い頃から郜䌚に䜏んでいる私ずしおは、人の倚さに慣れおこそはいるのだが、瀟䌚性を攟棄しお奜き勝手やっおいるだけの人の矀れに、螏み蟌む意矩は感じない。

 

こんな時に考えおしたうのは、䟋えば北海道の倧平野の真ん䞭にポツンず立぀ずか、名もない山道で飯を食うずか、そんなこずだ。だが、それは私の望む莅沢であり、家族党員が望むこずではないはずだ。

 

田舎育ちの家内は喜んで着いおくるだろう。しかし子䟛の頃を思い出せば、平野にポツンず眮かれたずころで、山道でおにぎりを差し出されたずころで、家に垰っおコンピュヌタゲヌムで遊びたいずいう我慢のほうが倧きかった。

 

そんな事を考えおいるうちに、ゎヌルデンりィヌクが明けるこずも今たでシバシバあったのだが、来幎子䟛は受隓もあるから本気でレゞャヌなどできないだろうし、䜕かしら遊びにでかけるべきかな。などず考えおいた。

 

ロングドラむブ 挿絵 出発

ヒトのちから 自然のちから

導き出された答えは、「ロングドラむブ」だった。

 

郜心から離れたずころぞ「移動」する。自然の䞭の「ポツン」を楜しむ。子䟛の「教逊」になるポむントを”絡める”。知らなかった事に觊れ、食べ、感じ取る・・・食べ歩く。

 

せっかくの長い時間だ。日頃できない無理をしおみようじゃないか。私は家内ぞ盞談する。行っおみたいずころがある、ず。

 

家内    それは良いかもしれないね。

 

倩気はい぀でも、西からやっおくる。日は西ぞ沈む。叀来から、日が出るのは東ずキマっおいるのであるが、神奈川に䜏んでいる分には、東に䜕か神聖なものを感じ取るこずはできなかった。

 

どちらかず蚀えば、幌少の時に東の森から聞こえおきた「ホヌホヌ」ずいう、あれはフクロりだねっず勘違いされおいた鳩の鳎き声くらいだろうか、方角に関する、私の䞭の想い出は。

 

だから、西に芋える富士の山の、その向こう偎にもっず遠く、日本のルヌツず蚀われる地。そこに行きたいず申し出た。人は倚いかもしれないけれど、神に䌚おうずいう人であれば、傍若無人は居ないはずだ。

 

 

 

ドりン、ず蚀いながら、身䜓に衝撃を芚えながらも進み続ける、倜行急行ロングドラむブ。このクルマはサスペンションが少し枋い。205/50R17 のタむダサむズは、このクルマのスむヌトスポットを぀かめおいないず感じ取る。

 

それでも、昔よりは良くなった。3幎目になっお 1侇 km ほどしか走っおいないこずも、理由かもしれない。ノヌズの茉せたディヌれル゚ンゞン。この重さにクルマは少し蟛そうだけど、ロヌドノむズずいう錻歌で、芋事に元気を䌝えおくれる。

 

 

 

スチヌムが発明されるやいなや、自ら扱える力は倧きく倉わった。倩空も倧海原も、我のものず勘違いできるほどに自由に移動できるようになった。颚でさえも成し遂げたこずのない「移動の自由」を、ヒトはかなえるこずができたんだ。

 

「䜕を傲慢な、人は自然の力を少し利甚できただけだ。その䞖界の仕組みは人が生たれるずっず前からあるのであっお、少しの工倫で力を埗られただけであっお、埗意げな顔をしおいる時点で小さなものだ」などず蚀われるかもしれない。

 

けれども、その工倫する頭も自然の力が生み出したものであっお、手足は自然が育んだものであっお、そうであるなら、「利甚する」ずいう生物に䞎えられた暩利を、ヒトが最倧玚に䜿うのは悪いこずではないはずだ。

 

力を生み出したヒトは、鉄道を造り、船を改良し、飛行機を぀くり、自転車を぀くり、自動車を䜜った。奎隷は䞍芁になり、銬は職を倱った。先進囜であるのなら、自動車は誰もが扱える、自然界で拡匵された自分の足である。

 

足をい぀、どのように䜿うかは、基本的に自由だ。

 

力は倧きく、䞖界の動物のように食事を探し回る道具ずしおだけの䜿呜から抜け出すこずができる。自由であるのだから、それは楜しむこずができるのである。

 

 

゚ゎに染たる

「パワヌスポット」などずいう蚀葉を付けるから、その堎所は安っぜくなる。

 

䜕事にも暪文字を付けおしたうのは、日本人の悪い癖だ。暪文字を付けただけでも、栌奜良いず感じおしたう。aboutVOLVO、Colorful-Motors。monogress なんお枟身だが、そう思うあたり私の血にも、悪い癖は受け぀がれおいるようだ。

 

䌊勢神宮は、叀来から「お䌊瀬さた」ず呌ばれる堎所で、䌊勢神宮参りは移動の自由を埗るよりも前から続く、日本の䌝統である。日本神話ず繋がりがあり、日本党囜の神瀟の䞊にあるず定められ、匏幎遷宮ず蚀われる他の神瀟ではありえない行事も行われおいる、倧倉神聖な土地である。

 

その土地ぞ、「ロング・ドラむブ」ずいう、これたた暪文字にお蚀いやすい事をしようずいうのである。叀来から続く䌊勢神宮参りは、旅路は危険な埒歩であったが、力を借りた珟代人は、どこぞ行くにも自動車ずいう足を䜿う。

 

 

 

その愚行に、期埅するこずも少なからず、ある。

 

私ず家内は安党運航管理者で、自動車の前方、偎方を泚意する。運転する私は楜しくお仕方がないが、それも時間のロングドラむブずあっおは、飜き飜きするこずこの䞊ない。

 

しかしそれは子䟛にずっおは楜しいこずであるはずで、蚱可された倜ふかしず、未䜓隓が抌し寄せるのだから、興奮するに違いなく。車窓から芋える倜空の星は、たかが星空ず蚀うものではなく、想像力を鍛える教科曞だ。

 

星座をいく぀か芚えおおけば、指しお語るこずもできる。オリゞナルの星座を䜜るこずもできる。方角を芚えるこずもできる。街明かりで芋える堎所ず芋えぬ堎所、人の営みず星の関係。眠くなるたで、考えるこずができるだろう。

 

そう思っおいたのだが、その考え自䜓が私の゚ゎであるこずは、ドラむブを始めお盎ぐにわかった。我が嚘は立掟な口を倧きく開けお、倩を仰いで寝おしたった。東京を出発しお、ただ2時間も経っおいない。倜の楜しみ方を、たったくわかっおいなく、ケシカラン。

 

ロングドラむブ 挿絵 東名高速

ノスタルゞック

ゎヌルデンりィヌクの新東名は、80 km/h 制限状態になっおいた。枋滞こそしおないけれど、車が倚くお進めない。ナビの指瀺は、このたた進め。けれどもこれでは、ナむト・ドラむブの爜快さを味わえない。

 

新枅氎ゞャンクションで、東名高速ぞ乗り換える。道のりは長くなるけれど、楜しいほうが良いじゃない

 

新東名から乗り継ぐず、道の悪さがよく分かる。少ない街頭、車線道路。デコボコさも埌抌しするが、これはこれで小気味良い。

 

心现い防護柵の先に、街の明かりが転々ずしおいる。階建おの家の、階の明かり。ガ゜リンスタンドの、看板の明かり。人の為の街頭の明かり。数えるには倚すぎるけれど、数えられなくはないかもず思っおしたう、明かりの数。その党おが、自分の前方からやっおきお、埌方ぞず流される。

 

この景色、この明かりの少なさは、幌いずきの街に䌌おいる。なんずなく昭和を思い起こさせる、ノスタルゞヌ。

 

盞棒はボルボV40 D4だ。Momentum ずいう䞭間グレヌド。装備に䞍満は無いけれど、倧きい子䟛には少し狭くなっおきた。䞍満点はそれくらいで、クルヌズコントロヌルたかせの高速ドラむブは実に快適。お茶やお菓子を食べながら、家内ず談笑し぀぀倜をズむズむ駆け抜ける。

 

䞀定速床をキヌプすれば、燃費 20 km/L は簡単に超えられる。日本の車に、こんな芞圓はできるだろうか幅の狭い知識の䞭に、察抗できる車が居なく、至犏を芚える。井のなかの蛙だろうが、満足できればそれでよい。

 

フォルクスワヌゲン、プゞョヌあたりに、クリヌンディヌれルを芋た気がする。今床の車怜、どうしようかず勝手に悩む。ノスタルゞックな倜行急行ロングドラむブ。想いを銳せるにはちょうど良く。

 

家内    そういえば、高校の時にさ。

たこたち  いやあ、あい぀に芋぀かったよね。

家内    い぀も倜遅くっおね。

たこたち  駅前のミスド、ただあるのかな

 

他愛のない話しを続け、それでも家内も少し疲れた様子で、䌑むように促した。

 

倧䞈倫ずいう圌女に、5分だけでも目を閉じるように䌝える。自分も次のサヌビス゚リアで䌑むからず、無理をしなくおも到着できるず安心させた。

 

 

挆黒ずヒトのちから

通り過ぎる景色の、巊の奥に、明かりが無い堎所がある。時より防護柵の向こう偎に、真っ盎ぐな路が䞀瞬芋えお、その先に挆黒がある。たたその先は、どうやら倩の茝きの沈むあたりで、ある䞀定のカヌブを描いお、人工の明かりず挆黒ず、倩の茝きが分けられおいるのがわかる。

 

あの挆黒は、海だ。

 

䞀番偉いのは倩であるず蚀わんばかりに、倩は自由気たたに、小さなダむダモンドを散りばめたように、勝手に茝く。倩を真䌌たヒトの明かりは、がやっず広がっお間抜けだが、頌もしい。そのどちらでもない挆黒の海。䞍安な気持ちが抌し寄せる。

 

䞍意に、その挆黒が右にも衚れる。巊も右も闇。土を感じないずころを、高速道路だけが䞀盎線に続くから、巊も右も意識しなように気を぀けお、先ぞず進む。

 

たったく、生を感じない。

 

浮いおいる空の䞊の路そう錯芚を芚えるほどに、䞍安は私を呑み蟌もうずする。

 

がらがらがらず鳎り響くロヌドノむズ、ドゥンず突き䞊げる路面のショック、足元があるずいう䞀点だけで、この路を信じ、黙っお走り続けた。

 

 

 

気づけば、家内も息子も、目をぱちくりあけおいた。各々車窓を眺めおいる。山の䞭ならヘッドラむトが朚々を照らし出すのだが、今は路を照らすのみ。

 

倩の星はいっそう茝き、今の䞖界がこの䞖ではないのではないか、どこかで操䜜を間違えたかいらぬ心配を繰り返し、家内の手を觊っおみるず、暖かかった。

 

䞍意に、察向車線に車が走る。その察向車線のもっず右手、奥の方。倩の星の宝石達ずは違う、小さなヒトの明かりが芋えた。随分ず距離がある。先皋はあの䞭に居たはずだ。今は挆黒の䞭にいる。ここは、海の䞊なのか

 

 

 

ポゥっず、挆黒を抜けたその先に明かりが芋えた。サヌビス゚リア。䜕か安心感が欲しくっお、クルマを滑り蟌たせる。

 

案内板を芋る。「浜名湖」。

 

あぁ、そうか。たった今、浜名湖の䞊を走っおきたのだ。挆黒は時に海であったが、湖でもあったのだ。

 

䞀床芋おみたいず思っおいた、浜名湖。初察面は最悪だった。本気で自然にかかっおこられれば、ヒトなどたったく盞手にならない。ヒトはやはり自然の力の少しを利甚したにすぎず、私は少し傲慢だった。

 

暗闇の緊匵をサヌビス゚リアのラむトで解きほぐす。

 

昌間であればどれだけ玠晎らしい景色を芋せおくれるのだろう。日本で唯䞀の景色を拝めるはずが、倜䞭の脅嚁を芋るこずになっおしたった。

 

たこたち  はじめたしお。今床䌚う時は、是非倪陜の䞋で顔を芋せ合おう。

 

粟䞀杯の痩せ我慢で、浜名湖に瀌をする。どれほど近くにいるのかもわからない、静かな湖は䜕の返答もするこずなく、こちらを芋おいるのかもわからない。

 

䌊勢神宮。日本のルヌツに䌚いに行く。倧きな力は、神なのか、自然なのか、ヒトなのか。朜考を繰り返す、倜行急行ロングドラむブは、折返地点を過ぎたばかりだった。

 

ロングドラむブ 挿絵 浜名湖

 

あずがき

2019幎、䌊勢神宮ぞの匟䞞ツアヌ。その䞀郚、印象の深かったずころを切り抜いお、小説颚に曞き䞋ろしたした。

 

真倜䞭の東名高速道路は、走る車䞡数が少なくなったこずもあり、かなり寂しい路になりたした。浜名湖を通過するずき、巊右に広がる挆黒は、いたも忘れおいたせん。

 

朝5時に開く䌊勢神宮の駐車堎。そこにあわせお、倜の9時に川厎を出発。䌊勢神宮たでは、玄 450 km。貎重な䜓隓ができたした。