「なら、輸入車に乗るのを辞めてしまえば安心じゃない?」
思いもよらない嫁ちゃんからの一言に、一瞬目の前が真っ暗になる。意地でかじりついてきた輸入車ライフ。自分の誇り、ステータス。せっかく築いた自分のかたちを、今更諦めるなんて出来るはずもないのである。
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皆様、こんにちは。まこまちです。
2020年初頭に購入した Peugeot 308SW は、あと4ヶ月で車検を迎えます。あっという間の3年間は、完全にコロナ沼の中でした。沼でしたけれども、フランス車沼はとても心地よく、私を新しいフェーズに引き上げてくれたと感謝しています。
しかし、車検です。フランス車の車検。いったいいくらになる事やら・・・いえ、車検のせいで車の乗り換えを検討する訳ではありません。コロナ、転勤、家庭の事情。様々な理由で将来設計を考え直す時期なのです。
さあ、私は車を買い替えるのか、愛車の車検を通すのか。3年ぶり8回目の愛車選び、まこまちの自動車選び、開幕です。
まこまち 勝手に悩む
神奈川県内某所。家内を職場に送った私は、ちょっとしたお悩みモードに入り込んだ。新型Peugeot 308が日本にやって来て、無視できない存在になった。プラグインハイブリッドなら、補助金が55万円出るらしい。燃費よりも値引きが大事な貧乏人は、しかしため息をついていた。
出遅れ感。補助金の支給は10月までと、スマホのニュースが目に飛び込む。
だが、ディーラーには試乗車が来ていない。ギリギリのタイミングで焦っても、良い結果は得られない。そもそも、今の愛車が高く売れるかわからない。多少の無理な支払いを通したところで、嫁ちゃんにソッポ向かれるのは愛車を無くすよりも悲しい事だ。
車を変える?車検を通す?いやいや、これは一人で悩んでいても仕方がない。車のことは家のこと。夫婦でしっかり考えないと。
そのような思考のぐるぐるを308回繰り返したところで、そろそろ自分が悲しくなって疲れ切った。もう少し収入があればだとか、違う仕事についていればとか、意味のない思考が混ざり合う自分の脳みそに嫌気がさす。
「あーあ、元気出さないと。」
ウェブを閉じて電話をかける決心をした、悩み多い車好きの心の傷を癒やすのは、やはりクルマなのである。
まこまち フォルクスワーゲンにゆく
フォルクスワーゲンに到着する。1ヶ月ぶりにプジョーに電話をしてみたが「試乗車も展示車も未だ」の回答。うん、マイ・ディーラーは入荷が少し遅いようだ。仕方なくワーゲンに連絡し、あのクルマに試乗する。決して腹いせなどではないので、ご注意を。
世の中の車の指標と言われるまでに優等生な、ドイツ発の庶民カー。立体駐車場制限に収まる横幅1800mm以下は魅力的で、5ナンバー+左右5cmの一言は嫁ちゃんの許しを乞うのに丁度いい。
いやいや、違った。世界のベンチマークを知らずして、次の車は選べない、が正解だ。
・・・いやいや、車を買おうとか思っているわけじゃないぞ(泣)。新型 Peugeot 308SW との対比のためには、一度は味わっておかねばなるまい、という、我が愛車の為の試乗なのだ、と良くわからない正論で心の揺れを抑え込んだ。確かにちょっと欲しい車ではあるのだが、今回もワーゲンには犠牲になってもらおうじゃないか。
試乗車紹介 Volkswagen Golf Variant
Volkswagen Golf Variant eTSI
ディーラーから車道に出て、直ぐに気づくその丁寧な足回り。同乗者の快適が最優先なフラットな味付けの乗り心地。これは家族が喜ぶかもしれないなあ。
視界の良さ、ステアリングの効き具合は最良だ。雑味を抑えたセッティングには惚れ惚れする。ブレーキのオートホールドもついていて、運転する私も快適そうだ。
ロースペックグレードでありながら、妥協のない電子デバイスの応酬は流石欧州。最先端のマイルドハイブリッドと1Lエンジンの組み合わせは、変わったエンジンマニアとしての心を満たす感じもする。
なるほど、これが世界一の庶民カーかと敬服をする一方で、物足りない感が心をよぎる。ゴルフは私に幸せをもたらすだろう?今の愛車 Peugeot 308SW との明確な用途の違いを見いだせないし、買い替えの決定打にはなり得なかった。
すごすご帰還し、ベッドへ横たわる。カタログというお土産は、とりあえずベッドの下にしまい込んだ。自分の気持ちの整理が済むまで、車の話はするべきではないだろう。
そんな陰気な考えは、1週間も持たなかった。
我が家はクルマ買い替えに向かってゆく
気づけば、会社の行きも帰りも、車の予算編成はどうするべきかで頭の中の支配が進む。ゴルフが欲しいという事ではない、このまま Peugeot 308SW に乗っているべきかどうか、ポイントはここにあった。
前から宣言しているとおり、私は田舎でカフェを開くのが夢である。その為に一歩一歩前進し、不動産は売却し、住み替え先の家賃を落とすためにと引っ越しもした。計二回の引っ越しのチカラになった Peugeot 308SW の活躍には惚れ惚れだが、すでに次の引っ越しは「移住」が伴うことが決定的だ。
その時、果たして車は1台で足りるだろうか? 嫁ちゃん専用車の導入は現実的になってくる。今後の維持費を考えた時のベストアンサーは何処にあるか。
いや、一人で考えても仕方がない・・・前もそういう結果になったじゃないか・・・買い換えるか維持するかを一人で悩むのはやめにしようという答えを出していたことに、あたまの中のぐるぐるが 2008回に到達した時点でようやく気がついた。
嫁ちゃんに、クルマの将来について話を切り出す。
「あのさ、今度車検じゃないか。クルマの買い替えも含めて検討したいんだけど。」
あれあれ!?いきなりクルマ買い替えなんて言っちゃったよ、自分!?
「そうね、今のクルマの維持費は不透明だもんね。なら、輸入車に乗るのを辞めてしまえば安心じゃない?」
あれあれー!?その方向の話し合いは、ちょっと嫌かもしれない!思いもよらない嫁ちゃんからの一言に、一瞬目の前が真っ暗になる。意地でかじりついてきた輸入車ライフ。自分の誇り、ステータス。せっかく築いた自分のかたちを、今更諦めるなんて出来るはずもない。
と、思ったのは1秒だけだった。移住と輸入車の天秤は、あきらかに移住成功に寄っているのだ。一旦輸入車から離れようが、移住・商売開始・軌道に乗ればまた買うことはできるだろう。
家族の状況、自分の状況、世界情勢のトータルバランスを考えて、我が家のカーライフプランの策定が今、はじまった。
ーーー つづく ーーー