嫁ちゃんが不意に言った。
「シビック、早く来ないかな。」
おお、期待してくれているのか!嬉しくなって応答する。
「そうだねえ、ベストカーには半導体不足は解消しつつあるって書いてあったんだけどね。」
「そいや、交差点のところにあるトヨタ、新しいシエンタ沢山置いてあるね。」
「なんかさ、こんな注目される車になるとは思わなかったよな。」
「そうね、昔のシエンタって我慢車みたいなもんだったもんね。」
「そうそう。ステップワゴンとかノアとか買えない人のための車だと思ってたのに(笑)」
「パパ、昔言ってたよね。」
「何を?」
「あんなデカい車に一人で乗りやがってとか。」
「ううむ・・・」
「空気ばかり乗せやがってとか。」
「そうっすね・・・・」
「でも、今は箱型の小さい車って正義になったもんね。今の若い子って、車は軽自動車乗っている方がモテるらしいよ。」
「よく聞くけどね・・・・・」
「身の丈に合っている車を選べるひとが良いとされているらしいよ。」
「・・・」
「・・・」
「シビックだしね?」
「別にケチなんかつけてないから(笑)」
CIVIC e:HEV 愛車との縦比較
沢山の空気を運んでいる皆さま、こんにちわ。まこまちです。大丈夫、今はどうしてもミニバンを選ばなくてはならない方がいることをしっかり認識しております。あの広さ、魅力的ですよ・・・
シビックを選んで良かったなと思うのは、パッと名前を聞いた時に「ちょっと走る普通の車」っていう印象なところ。先の会話ではありませんが、私たちは私たちで高価な車を良しとしていません。
ボルボやプジョーといった「セミプレミアム」的なところを攻めるのが好き、そう思っていただければ、私の車選びはご理解いただけるんじゃないかなと思います。
さて、はみだし話の第二弾は、シビックと歴代愛車との縦比較編。どうしてシビックを選んだの? 私の試乗の時の心の葛藤をお楽しみください。
HONDA CIVIC 輸入車を意識した試乗インプレッション
シビックの二度目の試乗に挑む。スポーティに走れて燃費も良い、普通なら相反するはずの二つが融合する近未来、こういう車が普及していけば、二酸化炭素の排出も抑えられるし代替え燃料の開発も進むに違いない。
最初の試乗の時のノックアウトをスレスレで避け、他に魅力的な車がないかと歩み続けた 2022 年夏。結局、ここに戻ってきたかと思いながら、膨らみすぎた期待感を確実なものとするために挑む再試乗だ。
運転席の快適性
ドライビング・ポジションをあわせて、自分の姿勢が合うか確認。標準スタイルの車に戻るものの、Peugeot i-Cockpit に慣れた私としてはステアリングは大きく感じる。しかし久々に見るステアリング越しのメーターも面白い。HONDA CIVIC のそれは、できるだけ視線移動を少なくしたいのだろう、デジタル表記の速度計が液晶ディスプレイのテッペンに置かれていた。
シートの感触を確かめる。左右のサポートは HONDA CIVIC はふくよかで気持ちいい。一方、座面の分厚さは Peugeot に分がある。CIVIC はシートの張りで身体を支える構造になっているという。たしかに、印象としては Peugeot よりも VOLVO に近い。シートの造り1位は相変わらず包み込むような VOLVO だけど、CIVIC のこれは及第点だ。
「車道落ち」は最高得点に迫る
車道に出る。最初の評価ポイントは、歩道から車道に出る時の段差、通称「車道落ち」(オリジナルです)だ・・・ストンと落ちてしなやかにクッションした。これは良い。Peugeot や VOLVO を凌ぐ、そして Volkswagen Golf に迫る出来である。ステアリングを切り、リアのタイヤが左右別々に車道に落ちる時も、無駄な揺れがなく心地よい。
乗り出し最初の印象は、Peugeot 308 以上。Peugeot 508 とはベクトルが違うが、より軽快な印象を受けた。VOLVO で近いのは V60 くらいだろうか?あの濃厚なクッションのシートには及ばないものの、流石欧州向け輸出を目論む HONDA CIVIC e:HEVだ。印象はかなり良い。
街中低速走行はEV感で優位にたつ
相変わらず県道は渋滞だから、アクセルはそよそよとした踏み込めない。EV 走行がメインになるが、ギクシャク感は特に無い。いや・・・変速機は無いと思って良いのだ。ガソリン車よりも有利な点と言えるだろう。そして夏場の微速走行が明らかに苦手だった我が愛車に比べれば、格段に良いと言えるだろう。
不意に渋滞が消えて、前の車が遠のいていく。アクセルをキュッと踏むとレスポンス良く、そして無音で前に進んだ。ハイブリッド走行ではなく EV 走行を街中で楽しめる HONDA CIVIC e:HEV。日本車らしく低速での使い心地もスタートダッシュもキレがある。
これを選べるのは、Peugeot や VOLVO で十分ディーゼルを堪能したからだ。ディーゼルはドロッとした初期動作(それでも、随分良くなっていたが)があってからの力強い加速の披露だった。ガソリンに比べて明らかに大きいトルクが自慢のディーゼルだが、EV はその美味しいところをさらっていく。もっとも、加速に伴うエンジン回転数の上下を楽しめるのは純エンジン車。ディーゼルの低い回転数でモリモリ走る様は楽しかった。
パワーソース・ウォーズはまだまだ続くだろう。いい時代に生きているな、としみじみ感じながら、幹線道路に車を進めた。
幹線道路ですでに楽しい HONDA CIVIC
ぐっとアクセルに力を入れると、例のエンジン音ギミックが軽く聞こえつつ車を前に押し出してくれる。この音があるとないとでは、車の活き活き度が違うと感じる。積極的に走りを楽しもうと誘われているようでゾワゾワする。そこで「スポーツモード」に変更して、再度アクセルに力を込めると、今度はしっかりとエンジン音を聞かせながら、レスポンスの良くなった出足を披露した。
「おぉぉ、やっぱり楽しい!」
思わず、声が出る。単純に面白い。無理やりな加速の楽しかった GT カー VOLVO V40 D4(400Nm)や、軽快感を狙ったツーリングワゴン Peugeot 308 SW(300Nm)よりも、あきらかに走りを楽しむシチュエーションだ。
背を低く構えているのも気分が良い。そのくせ、足まわりのしなやかで、不快な微振動はシャットアウトだ。ゴトゴトといった車内に響く音も少なく快適。ノイズキャンセラーが効いているのか・・・? 街乗りでの快適さ・楽しさは、同じ C セグメントにいた輸入車達を置き去りにする。あわよくば VOLVO V40 の後継車が出ていたら評価は変わっていたかもしれない、Peugeot 308 の新型にのってもしかり、なのだが、輸入車から離れようと決断した中では最高の車に出会ったのではないか?
少し強引な速度で交差点を右折する。いつも、いろいろな車で曲がる交差点。ニュートラル・ステアで描いたとおりにスッキリ曲がる。フロント・ヘビーは少し感じる・・・Peugeot の 1.5L ディーゼルの優秀さが際立つが、適度にサスペンションを動かしながクルリと方向を変える HONDA CIVIC にも美味しいキャラクターが見え隠れする期待感だった。
HONDA CIVIC お買い得度調査
CIVIC e:HEV | 308 1.5L D | V40 2.0L D | |
---|---|---|---|
エンジン(初動) | 5 | 4 | 4 |
エンジン(中速) | 5 | 5 | 5 |
エンジン(高速) | – | 4 | 5 |
街中旋回性 | 5 | 5 | 3 |
街中直進性 | 5 | 5 | 5 |
ワインディング旋回性 | – | 4 | 3 |
高速道路直進性 | – | 5 | 4 |
サスペンション(低速) | 5 | 3 | 3 |
サスペンション(中速) | 5 | 5 | 4 |
サスペンション(高速) | – | 5 | 4 |
シート サポート | 4 | 5 | 4 |
シート 快適 | 4 | 3 | 5 |
シート ポジション | 5 | 3 | 5 |
リアシート サポート | 3 | 2 | 3 |
リアシート 快適 | 3 | 2 | 3 |
視界(運転席からの) | 4 | 4 | 2 |
サウンドシステム | 4 | 2 | 2 |
シフトレバー | 3 | 3 | 4 |
ドリンクホルダー | 4 | 2 | 4 |
ラゲッジの広さ | 4 | 5 | 3 |
合計 | 68 | 76(58) | 75(59) |
車両価格 | 399万円 | 339万円 | 384万円 |
※( )内数値は、CIVIC で判定できなかった部分を引いた時の評価
試乗終了時の脳内得点評価が上記。HONDA CIVIC では評価できないポイントがあるが、そこには期待値 17 ポイントを加えることができる。
CIVIC e:HEV | 308 1.5L D | V40 2.0L D | |
---|---|---|---|
ポイント合計 | 85 | 76 | 75 |
車両価格 | 399万円 | 339万円 | 384万円 |
価格/得点レシオ | 4.69 | 4.460 | 5.12 |
価格/得点レシオは、1ポイントあたりの価格を表している。低いほどお買い得だ。つまり、Peugeot 308SW はかなりお買い得だった。ちなみに、Peugeot も VOLVO もかなり値引きを頑張ってくれたので、お買い得感はもっと高まる。うぅむ・・・
HONDA CIVIC も頑張ってくれたのだが・・・まあ将来の車検代やメンテ費に期待しようじゃないか!
HONDA CIVIC 所有する喜びはあるか
どの色にしようかな・・・などとセールス氏と話しながら、私は「この車を所有する喜びを感じることができるか」を考えていた。どうしても輸入車から離れることをネガティブに考えてしまうからだ。
先程のポイント表でも明らかだが、すでに「日本車=安い」とは言えなくなった。どちらかと言えば「実力がついた」と言ったほうが良いだろう。たしかに HONDA CIVIC e:HEV と同等の性能は輸入車なら高額になりそうだが、満足度だけで評価してしまえば輸入車を14年乗り継いだ私としてもドロー。デザイン代を考えれば、輸入車なりの価値があるのだ。
そして、性能=価格 主義になってしまいがちな日本車よりも、存在そのものに価値を見出だせる輸入車に魅力を感じていたわけだ。
では、HONDA CIVIC にはそのような、性能=価格 意外のオーラは出ているのだろうか?
・・・うん、ある。
決め手のひとつはクーペスタイル。そもそも、クーペってなんだろう?と言われかねない絶滅危惧種だ。一時期は「デートカー」なんて言われたりした、2ドアクーペやハッチバック。私も、嫁ちゃんと LEVIN や CELICA で関東中を走り回った。デートカーと言われる所以は諸説あるとして、私が欲していたのは「優雅なスタイル」「少しスポーティ」「乗り心地は少し硬くても普通車並」の3ポイントだ。
HONDA CIVIC にはこれがあるし、実は Peugeot 308SW にも VOLVO V40 にも存在した。単純な話、コテコテスポーツの二歩手前みたいなクルマが好きってことだ。
SUZUKI ESCUDO を思い出す。買った当初はワクワクして、「俺も 4×4 だ!」なんて言いまくって、嫁ちゃんに「無理じゃないの?」なんて言われていた。本当に無理だった(汗)半年で手放して呆れられたが、これが輸入車購入へのきっかけだったのだ。
そして、街中であまり見ない希少性。今回は「こだわってあの色にしたんだね」と言われる、「プレミアムクリスタルブルー・メタリック」だ。VOLVO のパッションレッド、RENAULT の ジョン・シリウス、CIVIC TypeR のチャンピオンシップホワイトに比べても(きっと)遜色ない、素晴らしいブルー生活を楽しむんだ!
最後に、嫁ちゃん登場。
「本当に、ブルーにするの?」
「うん、決めた。」
「本当に?本当に?」
「・・・・・」
「本当にブルーなのね?」
・・・・ えぇぇええええぇ!?(´;ω;`)