【impression】日産サクラ 航続距離に惑わされないEV主張の宝箱

日産サクラの車としての評価に、困ることはないだろう。初めての実用EV軽自動車、乗用車メーカーが苦心して作り上げた、新時代の先取りカー。この先進性を補助金つきで買えるなんて、日本は恵まれた国である。

 

かく言う私も、セカンドカーをサクラに決めた。嫁さまが選んだところは大きいが、夫婦納得で決めた一台。先進性だけでは選べない、色々な理由がそこにはあった。

 

大変にトゲトゲしく、大変にまろやかな、とてもアブノーマルな憎いやつ。日産サクラを、自分の車であるからこそ、しっかりと評価して皆さんに伝えたい。

 

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NISSAN SAKURA ギャラリー

日産サクラ 田畑の中で撮影 フロント ソルベブルー

日産サクラ(X)ヘッドライト

日産サクラ(X)エクステリア(外観)フロント ソルベブルー

日産サクラ Xグレード 助手席側から見たコックピット

日産サクラ ワイパーレバー

日産サクラ Xグレード コックピット全景

日産サクラ 走行中のイメージ

 

軽EV日産サクラ 所有のメリット

日産サクラの経済性はガソリン車の5倍以上

日産サクラ(X)リアエンブレム
ソルベブルーの日産サクラ。カラーのチョイスはグレードで選べないものもある。我が家のサクラはXグレード。大満足の中間グレードだ。

 

そもそも、軽自動車でEVなんて日本人なら皆欲しいのではなかろうか。街中での取り回しの良さは抜群だし、今や下手なセダンよりも荷物が載る。そこに経済性の高さ、ガソリンスタンドに行く必要のない利便性の良さまでアドオンなのだ。「軽EV」と言うだけで心が踊る事間違いなし。

 

特に経済性は、素晴らしい!EVは充電コストを抑えれば抑えるほど、経済性が高くなる。我が家の場合は平日夜間の電気代を抑えるプランにしてあるので、充電する夜間の料金は1kWhあたり16円だ。(2024年6月現在)

 

日産サクラの電費は、今のところ 10.2km/kWh。つまり、16円で走れる距離が10.2kmである。世の中の車では、10.2km/Lの実用燃費なんて珍しくない。彼らは、10.2kmを走行するのに、165円前後のガソリン代を支払うのだ。燃費の鬼・日産サクラに乗る人は、ガソリンスタンドの電光表示に笑みを浮かべること間違いなし。

 

日産サクラを持つ=時間を買うことができる

日産サクラ シフトレバー
新しいパワーソースには、新しい操作を・・と行きたいところだが、基本的にはオーソドックスな電気式シフトレバー。慣れてしまえばこっちのもの。

 

ただ、問題は、所有するにはそれなりに環境を整えなければならない事だろう。マンション住まい、契約駐車場への駐車となると、メリットが薄らいでしまう。価格が高いのは承知しても、メリットが無くなれば意味がない。だから、躊躇せざるを得なくなるのだ。

 

個人的に、ズバリEVの最大のメリットは、ガソリンスタンドに寄る時間の削減だと思っている。一度の給油で10分のロスとして、月に2度の給油で1年間なら、240分の削減になる。4時間という自由時間を買うことができるのだ。こんなメリット、内燃機関車では得られない。日産サクラ、なんて優秀なヤツなんだ。

 

飛躍しすぎ?いやいや、これこそEVを選ぶための大きな理由のひとつじゃないか?

 

日産サクラ ドライビング・インプレッション

日産サクラの加速感に「ニッコリ」

日産サクラ 森の中で撮影 斜め前
田舎道も似合う日産サクラ。山道が力強いのがホントに嬉しい。これだけで買いじゃない?

 

とは言え、車というものは燃費だけでは語れない。ドライバビリティに居住性能。軽自動車であれば使い勝手も重要だ。日産サクラの車としての出来は、どうだろうか。

 

アクセルに静かに足を下ろし、すっと踏み込む。走り出しは、意外とソフトだ。大きなトルクが持ち味のEVだが、サクラの場合は過敏な反応を上手く隠し、穏便な走りを披露する。日産の味付けの美味さに感心しながら、アクセルをもう少し踏み込んでみると、ちょっと言えない(!)速度になった。

 

正直いって、気持ち良い。シフトダウンによる加速体制への移行のようなラグがなく、エンジン音の爆上がりもなし。ただ、キュイーンと未来的なノリで駆けていく。ムフーー!っと、ついつい鼻息が荒くなる。

 

できれば、加速っぽい姿勢になってくれたらヤル気も更に上がるのだが、速度の上下による姿勢の変化は得られないのは乗りやすさ優先故だ。あくまでも優しく、ジェントルに。プラスアルファで、変態に。この出っ張り引っ込みが、技術の日産の旨みなのか?

 

カックンブレーキ?日産サクラにもあった回生ブレーキのクセ

日産サクラ フロントマスク 日産エンブレム
日本でのEVパイオニア、日産。なのに、ブレーキがちょっと惜しいのは、コストの問題かな?それでも満足してしまう、ライバル不在の軽EVだ。

 

うん、加速ダイスキ、G最高!なんて叫ぶとなれば、その分ブレーキも気にかかる。止まれないならジェントルどころかジャジャ馬だ。だが、期待も虚しく自然なフィーリングを披露した。流石、嫁さまのココロを射抜いた車である・・などとひがんでも仕方がない・・が、ちょっとだけ惜しかったのは、停止の直前の回生ブレーキから摩擦ブレーキへの切り替え。

 

減速Gが変わるので扱い辛い。

 

実は、我が愛車ホンダシビックe:HEV(ハイブリッド車)でも、このタイミングは少し苦手だ。特に雨が降っていると、摩擦力が変わるのかどうしてもカックンブレーキになってしまう。回生ブレーキからの切り替えは、お手本にトヨタプリウスが居る。今後のマイナーチェンジに期待である。

 

ステアリング特性は及第点も 許してしまうサクラの味付け

日産サクラ Xグレードのステアリング
日産サクラ Xグレードのステアリング。見た目の質感は良いのだけれど、掴みやすさは少し難あり。ステアリングカバーつけたいなあ。

 

クルマ全体の動きを見ていこう。安定感は軽自動車のなかでもバツグンに良い。背高の箱型ではないセダン型、かつバッテリーの重みも手伝い、揺れ方に落ち着きがあり快適である。嫁さま曰く、風で煽られる事も少ないらしい。

 

ステアリングを切り込んでみる。重量級軽自動車だから仕方がないが、フロントタイヤを捻るようなグニャ感がある一方で、路面のつかみ具合はわからない。このあたりは、ホンダN-BOXが上手かった記憶がある。

 

もう少し詳しく言うと、ドライブモードが「ECO」だと、パワステのアシスト量を増やすようで、いよいよ路面の感覚がわからない。「STANDARD」はアシスト量を控えるようで、とりあえずなレベルでライントレースできるようになる。

 

だが、人は時に疲れるもの。「ECO」にしてゆっくり、淡々と走るのも悪くない。何故ノーマルモードの方がアシスト少ないの?とハテナがつくのだが、日産サクラの、ちょっと面白いキャラクターだと思って受け入れよう。

 

思わず寝る!日産サクラは乗り心地良いね!

日産サクラ リアシートリクライニング
リクライニング機構を備える、日産サクラ。たった2段階でも、あるのとないのとでは雲泥。シビックにも欲しかったなあ・・

 

乗り心地は、ちょっと唸る。良いの上くらいのレベルだと感じる。特に、運転席意外に座ると印象が良い。日産サクラのドライバビリティは、悪くはないとは言え軽自動車だ。音のしないパワーソース以外は、残念ながら雑味に溢れている。

 

ところが、助手席に座っていればそんな事は感じない。せいぜい、路面のザラつきノイズくらいだ。リアシートに至っては、フロントシートよりも広々していて快適性がアップする。なんと、試乗中に私が居眠りしてしまうほどに良い乗り心地だったのだ。ぐーぐーぐー!

 

足回りはコシがあって、絶えず仕事をしている感があるし、重さに耐えられずに底つきを起こすこともない。だから、なんだか安心感が芽生えてくる。長いホイールベースのおかげで、身体が上下にゆすられることもない。コストの関係でシートの見た目のチープさが気になるのだが、180kmくらいなら快適に座っていられそう。質実剛健。奥様方は、ぜひ自慢して欲しいぞ。

 

日産サクラの総合評価

日産サクラ アンテナ
アンテナ。可愛い。放電機能も欲しい・・サクラに触れると、他の車よりも静電気が強い気がする、とは嫁さま談。

 

こんな評価で、我が家のセカンドカー日産サクラは、トゲのあって可愛いやつだと、親しまれている。

 

インテリアは小物入れが少なく不便だが、雑味がなく質感高いファブリックで覆われていて、我々夫婦はお気に入り。実は、リアはプラスチック丸出しで質感のシの字もないのだが、その割り切りも良し、と意見が合致した。

 

乗り出し300万円、補助金ありで250万円のお買い物は正直ビビったが、毎日の運用コストを計算したら、ローンベースで200万円の従来型軽自動車と価格差がなかったところも大きかった。新型N-BOXもそそったのだが、20km/L走ったとしても毎月1200km走れば9900円の燃料費だ。移住先の長野はガソリン代が高かったことも背中を押した。

 

日産サクラ インテリア カッパー色アクセント
ファブリックのインテリアが日産サクラのイカすポイント。白色仕様もあるが、汚れが目立つと嫌だということでブラックに。

 

日産サクラの登場直後のレビューを読むと、やれ航行距離180kmが短いだの、300万円が高いだのと書かれていたが、評論家の単なる先入観だったと言わざるを得ない。田舎では、ガソリンスタンドまで10km以上なんてザラである。ガソリンを入れに行くために1Lのガソリンを使うなんて、本末転倒ではないか。

 

そんなモヤモヤに仕方なく付き合っていた人への、超ドストライクな宝箱の贈り物。それが、日産サクラだったに違いない。家に充電器を用意でき、軽自動車を所有するなら、ぜひ日産のアブノーマルな憎いやつ、サクラを検討することをオススメする。

 

(主張)EVを持つ時に忘れてはならない二つの事柄

(このセクションは、まこまちの主張が書いてあります。読み飛ばして頂いても構いません。)

ところで、日産サクラを含むEVについては、読者さんも通りすがりさんも、新しいもの故に色々思うところがあるだろう。特に、ライフ・サイクル・アセスメントを見た時に、その二酸化炭素の初期コストはEV否定のひとつの根拠になり得る。

 

日産のウェブページでの説明によると、日産サクラと同型車との比較では、走行距離10万kmの時点で20%の二酸化炭素を削減できているという。走れば走るほどに、EVのほうが二酸化炭素の排出を抑えられるという主張だ。

 

ゼロエミッションは二酸化炭素排出ゼロではない

日産サクラ エクステリア(外観)リア側 ソルベブルー

 

ここで私が見つめるべきと思う事柄が2つある。ひとつは、ベースとして排出している二酸化炭素が多い事を認識する事。けっして「ZERO EMISSION」=「二酸化炭素ゼロ」と勘違いせず、「廃棄物をゼロに近づける取り組み」という本来の意味を忘れずに、購入するべきである。

 

その考え方は、化石燃料から自然由来エネルギーへの転換の観点や、身近なところで言えばゴミを少なくする取り組みに必ず結びつくはずである。普通の軽自動車よりも高いお金を出し、二酸化炭素排出の少ない車を買ったとアグラをかくことではない。EVと共に、できるだけ二酸化炭素排出を減らそうと考えるべきなのだ。

 

産業の発展と地球の将来を否定してはならない

日産サクラ エクステリア(外観)右サイド ソルベブルー

 

もう一つ、EVは発展途中の技術だと認識する事だ。某国のコバルト発掘における子供の労働の問題などと絡めると、EVを否定したくなる気持ちはわからなくはない。だが、産業の発展を止めることもまた、悪なのだ。

 

ガソリンを燃焼させても二酸化炭素が排出されなければ、問題にはならないが、無理である。EVがもてはやされたのは、化石燃料しか使えない車から、様々なエネルギーを電気に変えれば走れる車にシフトできるからだ。太陽光発電、風力発電、地熱でも波でも電気を作ることができ、化石燃料に頼らずに人類が続くための手段になる。これが素晴らしいのである。

 

これらは色々な人々の思惑や欲求が含まれているのは否めないが、否定をすればその分だけ、化石燃料が減ってしまう。地球温暖化が進むのである。だから、ガソリンの使用量を少なくするターボ技術、エネルギーを無駄なく使うディーゼル技術と同様に、クルマ用のエネルギー生成の多様化の為の技術のひとつとして認識して、国だ主義だに左右されてEVを貶す事のないように知識をつけて行動するべき。

 

日産サクラ シフトレバーとディスプレイオーディオ

日産サクラ Xグレードのシート調整

日産サクラ 田畑の中で撮影 リア ソルベブルー

 

EVの、その先の未来があるかもしれない。私も、以前はディーゼル信者的であったが、エネルギーミックス、パワーオブチョイスと様々な考え方に触れ、EVを許容できるようになった。

 

自動車は、楽しい技術だ。将来の人類が自動車を楽しめるように、私たちもしっかりと車文化を次世代に繋ごうじゃないか。その主張は、車選びひとつでも実現できるーーー日産サクラの功績は、小さいクセにソコへ投じた一石だ。

 

やれやれ、自動車ブロガーとしても開発に携わった人がチョッピリ羨ましい、ちょっと凄いやつである。

 

結びの駿景

日産サクラ 森の中で撮影 フロント

 

久々のインプレでした。ちょいと変わったところもありますが、やっぱり車は面白いなと感じるプロダクトでした。自動車メーカーの色々な工夫に出逢えるのって、楽しいですよね。

 

日産サクラに乗ると、次はEVが良いなあと思います。日産ならアリア、プジョーならE308に期待ですし、カングー EVも魅力的(国内販売はいつ?)。こんなふうに、選択肢というか視野が広がるのが良いですよね。

 

しかし、その為には国内インフラをなんとかしないと。日本はまだまだ、EVに対する課題が多いですね。