プジョーの販売台数がコロナ禍の今でも好調だと、自動車関連記事で見かけるようになりました。各社さまざまな考察をしていて面白く、自分の所有するメーカーが躍進するのは、オーナーとしても嬉しい限り。
販売が好調な理由はさまざまにあるでしょう。思ったよりも品質が高いとか、どのクルマにもドライバーを楽しませる演出がされているとか、脳裏に焼き付くデザインだとか。日本車のセンスに飽きた人には、ちょうどよい選択肢だと思います。
そして私まこまちが考えるプジョーの躍進の原動力は、製品の良さを活かす力の存在。それは「ラインナップの誠実さ」。今回は勝手な考察を披露します。勝手だから、気にしないでね(笑)
プジョーの販売台数は前年比168%販売台数の好調さ
2021年7月の販売台数をJAIAの統計情報から読み取ると、その好調ぶりが見て取れる。1月からの累計では、前年比 168.5%。2020年のプジョーはコロナ禍突入の年であったにもかかわらず、1月〜12月までの販売台数で前年比 101% をマーク。だから、前年比 168.5% とは2019年と比べても好調だというのがわかりますね。
期間 | 販売台数 |
---|---|
2019年1月〜12月 | 10,626台 |
2020年1月〜12月 | 10,752台 |
2021年1月〜7月 | 8,525台 |
出典:日本自動車輸入組合 http://www.jaia-jp.org
月販 1,200 台前後のペースという好調ぶりを維持すれば、年間 14,000 台〜15,000 台・・・これは、やはりドイツ勢で占拠されている輸入高級車枠の一角を狙うボルボと同じ水準です。輸入車というジャンルの中でも、プジョーがひとつのブランドとして力をつけてきた印象がありますね。
さて、この販売台数の牽引役は、言うまでもなく Peugeot 208 と Peugeot 2008 の新車効果と言える・・・と考えるのが一般的でしょう。実際、2020年10月〜2021年12月期では、Peugeot 208 は輸入車販売ランキングで10位に食い込む快挙をなしとげました。
けれども、そっけなく新車効果と言ってしまうには、少々もったいない気がします。なぜかと言えば、そもそもマイナーな輸入車であるプジョー(ごめんなさい!)にとっては、新車効果自体は薄いものだからです。
日本車や有名輸入車は購入する安心感があって、前から気になっていたモデルの新型車情報を見れば、この機会に買おうとディーラーへ出向く人も増えるでしょう。
けれどもプジョーならびに無名(ってほどでもないけど、知らない人はいるだろう)輸入車は、新車云々よりもまず、トラブルなく動く事が大事です。キュートなかたち!と思ったところで、一年待ってトラブルがないか様子を見ようと考える人も多いわけ。高速道路で止まらないかな、交差点で止まらないかな。そんな奴らはフランス車に乗るな!という声が聞こえてきそう(笑)でも、初めての輸入車でそのように躊躇する人はいるはずですよ。
ところが、何かしらの理由があって Peugeot 208 は成約率が高い。つまり、不安感が払拭された?このマジカルはどのように生まれるのか?
これを私は、ラインナップの誠実さにあると言うのです。
車格感の払拭とラインナップの妙
プジョーの現行ラインナップは、スモールハッチの Peugeot 208、SUVの Peugeot SUV 2008、ハッチバックとワゴンの Peugeot 308、人気SUVの Peugeot SUV 3008、フラッグシップセダン&ワゴンの Peugeot 508、そして7シーターSUVの Peugeot SUV 5008と並んでいる。
セダン、ワゴン、SUVを織り交ぜながら、スモールからミドルサイズまでをカバーします。一応、どのサイズにも提案できる車種を持つラインナップの持ち主と言えます。プジョーの持ち主は生活環境の変化によって、サイズダウンもサイズアップも可能です。せっかく慣れた i-Cockpit は、もう一度乗りたくなる逸品だしね。
あらゆるクラスのクルマをメンテナンスできるというのも、安心感につながるかも。
さらに、プジョーは車格の差を感じません。
Peugeot 308には 308の、Peugeot 508には508の魅力があって、お互い、相手が持っていないものを持っています。将来は Peugeot 508が欲しい、いつかはプジョーの最高峰が欲しい・・・などではなく、私が欲しいと思ったクルマはこれだ!と自信を持って選ぶ事ができるのです。
Peugeot 208 が気になってディーラーに入った時、必ず Peugeot 508 を目にするでしょう。小型車を狙っている人にとって、508は大きくて眼中には入らないとして、どのようなラインナップがあるかは見て回るはず。
展示されている Peugeot 508 を見て、なかなか質感が高いなと顎に手をあてることでしょう。こんなクルマも良いなと。マンダムだと。けれども、自分の狙いは Peugeot 208 のサイズなんだよなと。
そこで Peugeot 208 に試乗すると、ほとんど同じ質感を備えたスモールである事がわかります。インテリアやエクステリアのデザインも、クルマを動かす楽しさも、素晴らしいクルマ。上位車種のような質感なのに、目的である小さは妥協しない。これぞ欲しかった車だ!となるんです。
さらに、ちょっとリアシートが狭いなあという人には Peugeot SUV 2008 をオススメ。SUVと言えども多少背が高くなるだけだし、ワゴンでなくSUVだからこそ車長を大きく伸ばさなくてもユーティリティを増やす事ができるSUV2008は、ちょっとしたサイズアップの希望に見事に応える。
このラインナップの妙こそ、プジョーの力。Peugeot 208 の販売を成功させるために、影で支えた力です。
★はみ出しコラム★
実は、このラインナップの妙には私も救われました。VOLVOとの決別を決心したとき、それまでボルボのインテリアは最高だと語っていた私にとって、次のクルマのインテリアも最高と言えるものでなくてはならなかった。
Peugeot 508 のインテリアは素晴らしく、もともと狙っていた Peugeot 308 との差は歴然だと思っていました。ところが、308に試乗してすぐに分かります。やはり私は、エクステリア・インテリアを含めてこのクルマが欲しいのだ!
そこには、308よりも508のほうが高いから良い、というヒエラルキーを感じない世界があって、私のプジョー購入の背中を押してくれたのです。TECH PACK EDITIONの存在も大きかったです(^^)
Peugeot 208の好調は販売姿勢と妥協しない性能のダブル評価
そして、プジョーが他の輸入車メーカーに比べても自信をもって素晴らしいと言える事が、フルモデルチェンジした Peugeot 208 に隠されています。
まず、買いやすいスモールであるという事。高級輸入車を目指したいプジョーではあるものの、メーカーの裾野を広げるスモールカーをラインナップすることは、高級を押しつけてCセグメント以下を販売しないメーカーとは違います。
スモールを販売するということは、販売価格の下限を落とすことに他ならない。プジョーは高級車というポジションではないから、スモールを販売するしかないという話もあります。でも、Peugeot SUV 3008 が売れ筋になった今でも、Peugeot 208 の導入を躊躇いませんでした。彼らは、自動車文化の裾野を広げる役目を放棄しなかったのです。
そして、性能に妥協がないこと。EVをラインナップする Peugeot 208 を見れば、技術力の高さを感じるだけでなく、環境問題にも向き合っている事が明確です。史上初のEVとICEの同一ボディでの提供は、聞いた当初に驚いたことを覚えています。
小型車に徹底的にパワーを使うのは、例えばトヨタも同じです。アクアはやはりスモールですが、ハイブリッド機構を入れる事で最高の低燃費を実現します。
日本で元気のあるメーカーだなと感じるのは、アクアを持つトヨタ、同じくハイブリッドスモール フィットを持つホンダです。日産もノートへ搭載のePowerにより、元気さを取り戻しつつあります。
特別な性能を勿体ぶらず、一番小さいクルマへ搭載し普及を狙う事は自動車メーカーとしての誠実さを感じます。ユーザーに最大限のメリットを還元する。高性能はお金持ちのためにあるのではなく、誰でも享受できるもの。この考え方が素晴らしい。
確かに価格では上がりつつあるプジョーだけど、クルマは庶民のものであるという事を忘れずに、今の技術を余すことなく Peugeot 208 に注ぎ込んだからこそ、メーカーとしての信頼を得て購入する人が増えたのではないか・・・と私は分析するのです。
ファンを増やす戦略
輸入車インポーターとしての基本的な提案車種の少なさを、ラインナップの良さでカバーする。そこには車格感が少ないので、どのモデルに変わったとしても満足度の高い買い物になります。さらに、プジョー最小スモールカー(実際には輸入されていない 108 というモデルもあります)に入る最高の技術。
スモールからフラッグシップまで差をつけることなく、どれを買っても満足度の高いラインナップ。これを私は、「ラインナップの誠実さ」と呼びました。これらの要素は足し算ではなく掛け算になり、プジョーの販売を押し上げたと私は見ています。
新車効果だけではつまらない。視点を変えてデータを見るのも、クルマを語る楽しさのひとつですね。
思えば、i-Cockpit も Peugeot 208 が最初でした。今回の 208 から始まるのは、パワーオブチョイスの具現化。世界のさまざまな地域の実情に合わせつつ、最終的にユーザーがパワーソースを選べる戦略。エネルギー問題の先行きが不透明な中で、最先端のEVとブラッシュアップされた内燃機関を併せ持つ。コストはかなりかかるでしょうけれど、別の車を作るよりは安く済む。
これはプジョーからの提案であり、プレゼント。考え抜かれた合理性は、新たなファンを生み出します。
Peugeot 208を皮切りに、美しくなった Peugeot 308も控えています。近い将来、年間販売台数2万台をマークし続ける事になるかもしれません。
その先駆けに、私たちが購入したプジョー があると思うと、なんだか嬉しくなりますね。