六本木に新型プジョー308を見に行ってから数ヶ月。マイ・ディーラーの担当さんから、ようやく Peugeot 308 (P5) がやってきたと連絡がはいった。ディーラーでの試乗会より前に、少しだけインテリアを見せてくれると言うではないか。
全国的には試乗会は行われており、私のディーラーはどちらかと言えば遅い方。試乗車が恋しいところではあるが、ぐっと我慢して(何を?)インテリアだけの取材に訪問。プジョー・ディーラーは私の我儘に優しく応えてくれた。
ということで、今回は沢山のインテリア写真を用意。とりあえず一気に見てほしい。相変わらずの勝手な意見は後半にコソっと忍ばせておく。
Peugeot 308 P5 インテリア・ギャラリー
デザインの洗練された 新型308(GT) i-Cockpit
シフトレバーが廃止されてスマートな操作系と思いきや、最近のプジョーらしい幾何学模様的なコックピット。相変わらずの小径ステアリングは、プジョー乗りにはスッと受け入れられるだろう。カップホルダーがふたつ用意されたのは朗報。置くだけ充電エリアは、半導体不足の影響で単なるモノ置き場になってしまった。
新型308(GT) インストルメントパネル/10インチタッチスクリーン
ナビゲーション画面がインストルメントパネルにも表示されるのは嬉しい。ようやく他の輸入車に肩を並べた。10インチタッチスクリーンの地図画面は詳細でわかりやすい。手前には配置を変更できるショートカットが。手垢が付くのはご愛嬌か。エアコン操作がワンタッチでないのは、残念かも。
スイッチひとつでドンドン切り替わるヘッドアップインストルメントパネル。ソフトウェアにかなりコストをつぎ込んだようで、切り替わりのアニメーションも見ていて楽しい。i-Cockpit は一種のエンターテインメントに変わろうとしている。
新型308(GT)ドアパネル操作系
運転席側のウインドウ操作スイッチ系。GTグレードだが加飾なしの割り切り感は、なんだか 308 っぽくて良い。過剰加飾は高級なクルマになってしまう。緑色のステッチはライバル不在で、所有する喜びを得るのに一役買っている。
新型308(GT) アンビエントライト
10インチタッチパネルでの操作で、色を変えることのできるアンビエントライト。その下にはスウェード調のソフトパネルがおごられる。コストをかけるところ、そうでないところのメリハリが良い。コックピットのパネルへ続く緩やかなラインそれぞれに、手が込んでいると感じさせる工夫がある。
新型308(GT) ダッシュボード
ステッチが入っていて質感の高いダッシュボード。エアコンの送風口が助手席まで回り込ませ、なおかつ人の座るところより遠くに配置。フロントガラスからの距離もあわせて先代よりも塊感が薄れたのは好みによるが、左前側の距離感はつかみやすいと感じる。視覚的に少しうるさいかもしれない。
新型308(GT) フロントシート
フカフカな乗り味なのに背中をしっかり左右から抑える逸品シートは、今回の取材でいちばんの収穫と言っていい。シート地が滑りにくい素材で出来ているのも、良好要因のひとつ。キャラクターをスポーティからラグジュアリーに少し移行させたとして、その都合に上手く合う気持ちのいいシートになった。
新型308(GT) リアシート
あとで酷評するかも。見た目の質感は良く、座り心地もわるくないリアシート。ただしお世辞にも大人2名が乗るのに広いということはできず、臨時用と割り切る必要がある。不満がある人は、1年後に入ってくるという新型308SWがオススメだ。
新型308(GT) リア・ベンチレーション
やっとついた!リア用エアコンだ。その下にはUSBポートもあり、さらにスマホを置けそうなスペースもある。今やCセグメントには必要な装備。価格を上げてでも付けるのは必至。搭載には感謝である。
新型プジョー308 GT のデザインを吟味する
予想通りのDセグイーター Cセグメントの質感を牽引するクルマになった
Peugeot 208 が「Cセグイーター」と言われて久しいが、新型Peugeot 308が上位セグメントに痛快に切り込んでいく様が見れそうだ。インテリアを見るまで断言はできなかったが、やはりというか、様々なマテリアルに「Peugeot 508をぶっつぶす!」的な上質感が備わっている。
ダッシュボードに鎮座する10インチタッチパネルディスプレイは高精細で質感がよく、その周辺にあるショートカットキーもしかりである。決して Peugeot 508 の真似になっていないのも印象が良い。
新型Peugeot 308の目指すのは、扱いやすいスポーティ感。キャラクターが 508 とは明確に違うこと、新しさを見出だせることなど、難しい関門があったにもかかわらず、見事にスッキリしたデザインを手に入れた。単純に線を減らしたわけではなく、包まれ感を演出したアールの数々には脱帽である。
Peugeot 208や2008は、508で作り上げたデザインの延長線だったが、新型Peugeot 308は方向性を変えている。くねくね線をいじるのではなく、スパッと伸ばしている。シンプルな線を多様することで新しいプジョーのキャラクターを演出しているように感じるのだ。
508を超えたデジタルアイテムの数々
そして、個々の手触り感は 508 には負けるものの、デジタルパーツで 508 超えを果たしてきた。
横長のセンターディスプレイは最近のトレンドだが、プジョーはその下にショートカットキーを配列する。見た目は昔からありそうなタッチ式スイッチだが、配置を変えられるのは新しい。この、横長サイズの液晶パネルは特殊サイズで、コストがかかっていることが伺える。508 に搭載の折りにはどのように進化するか、という興味もつきない。
先代である Peugeot 308 (T9)がシンプルの中の機能性を追求したのに対し、新型 Peugeot 308 (P5)がゴテゴテとスイッチを並べたことは若干不可解ではあるものの、これはこれであり!という説得力も備えている。ただし、ハザードスイッチは助手席から押すことができる位置にしてほしかった。
先代 308 ユーザーは素直に入れるか!?
そう、308 は先代に比べてスイッチ類が増えている。どれも必要な機能ではあるものの、シンプルさを好んでいた 308 人には受け入れられるか不明である・・・だが、それは T9 と P5 とで別のクルマと割り切ることもできるのも事実である・・・ではあるのだが、私がドライバーズシートに座った感想は「やっぱり欲しい」だった。
特に気に入ったのはシートの出来。柔らかく身体を支えるにも関わらず、サイドのサポートがしっかりするから安心して身体をあずけることができるのだ。508 の本皮シートは、身体が滑って困りものだった。308 は 508 のシートに比べて少し小さい気もするが、身体を支える能力は 508 より上である。
また、インストルメントパネルと10インチタッチパネルの位置関係が、先代と新型で変わっていないのも◎。シフトレバーまわりの開放感も変化がなく◎。Peugeot 508 や Peugeot 3008 で演出されていたシフトレバー周りの包まれ感が無いのは、Peugeot 308 の個性をブラさずに開発している証拠だろう。
狭いリアシートはパーソナルユースか子育て予備軍がターゲットか
ところで、手放しに褒められないところもある。リアシートはその最もたるところだ。一言でいうと「狭い」のである。
そんなことは分かっている、という人は読み飛ばしてほしいのだが、Peugeot 308 のハッチバックはリアシートに人を乗せることを、あまり気にしていないようだ。その役目はSWが担えばよく、ハッチバックはパーソナルユースか、フロント2名のスペシャリティという感じがする。(先代に乗っていないので新型のみを見た意見ですが。)
ホイールベースが長くなり、レッグスペースが増えたと言うが、増えたところで広いとは言えない。リアシートはシアターレイアウトを取り入れてほしかった。後席に乗る人の視界の確保は大事なことだ。でなくては、熊の冬眠状態に陥ってしまう。ジュニアシート前提の席なのかもしれないが、それにしても低いのだ。
質感の上昇は激しいのだが、パッケージングに工夫が無い。トランクの容量なんて気にせずにリアシートの位置決めを改善していれば、完全にオススメできるクルマに仕上がっていただろうに、この点だけが残念だった。
やはりCセグメントの戦いは熾烈だ
それにしても、所有欲を駆り立てるデザインの数々である。新型Peugeot 308は、全幅を 1,850 mm にまで広げ、他のCセグメントの少し上を狙っているのは明らかだ。
今まではゴルフの後ろを追うようなポジションだったが、今や様々なメディアの評価が「ゴルフを超えた」と言っている。試乗していないので評価は預けるが、今回はゴルフ側がかなり簡素なインテリアに仕上げてきており、せめぎ合うベクトルが変わりつつあるように思う。今後はCセグメントを2つに分けての戦いになるかもしれない。
というのは、今後来るであろう多様性が求められる時代において、ステランティスというブランドの多様性を味方につけたプジョーはそれぞれのセグメントの「すこし高額なゾーン」での頂点を目指すという意思表示が見えるのだ。もちろん、GTだけでなくAllureを上手に使い、真ん中のゾーン以上を取りに行こうとしているし、その実力は今回のインテリアを見て「アリ」だと感じることができた。
今回の Peugeot 308 P5は、少なくともインテリア・デザインは他社より一歩抜きん出た。走りまでのトータルバランスで高く行けば、世界のCセグメントのベンチマークになりえるかもしれない。とても心強いクルマが現れたと言えるだろう。
新型Peugeot 308のデザインに興味が湧いたなら、故障など気にせず是非ともフランス車・プジョーを選んでみてほしい。日本車のヒエラルキーから抜ける気持ちよさは、今までとは違った人生観をもたらすに違いない。