今をときめくディーゼルエンジン!燃費の良さもトルクの太さもピカイチで、ガソリンハイブリッドでプチ電動を楽しむか、生粋のディーゼルで怒涛の加速を楽しむのか。一昔前はマルチシリンダーか280psかという選択肢しかなかったところ、今はバリエーションも方向性も豊かだから何を選ぼうか迷いますよね。
今回の記事は、プジョー、マツダ、フォルクスワーゲン、ボルボのディーゼル比較記事。欧州でも特にディーゼルに力を入れているフランスプジョー、ドイツのワーゲン、突き詰めてはすぐに手放す北欧ボルボ、そして、日本では一人気を吐くマツダのディーゼルの横比較だ。
私は技術者でもなんでもない、ただの車好きブロガーだけど、素人なりの知見を増やせば増やすほどに内燃機関の将来性を見出さずにはいられない。
という事で、乗り比べの後ろにはチョットウンチク入れてます。楽しんでね!
ディーゼル・エンジンを一気に評価
今回の企画記事、実は2021年の女神湖オフ前に構想を練っていました。今をときめくディーゼルエンジンが勢揃い!とくれば、記事にしたいと思うのがブロガーというもの。
残念ながら308の故障があって全てのディーゼルの特性を書き切るには至らなくって、半年ほどお蔵入り。短く、濃く伝えたいもんね。オフ会で各々の愛車のコックピットに座らせていただいて、皆さんには感謝!思う存分、ディーゼルの美味しさを語ります。
実力一級品 PSA DV5 1.5L “BlueHDi” ディーゼルエンジン
プジョーは欧州の他の自動車メーカーと比べても、ディーゼルエンジンへの力の向け方が半端ない。サーキット用にディーゼルエンジンをいち早く投入したり、ほぼすべての車種にラインナップがされている。
ならばディーゼル一辺倒なのかと言えばそうではなく、BEVの開発にも積極的。パワー・オブ・チョイスを上手く混ぜ込み、各国のユーザーに寄り添う精神がプジョーの良心。こだわりの強さは日本にもドイツにも負けやしない。だからワインがうまいのだろう!
そんなルネッサーンスなGroup PSA が開発した最新ディーゼルエンジンは、低回転での豊かなトルクはもちろんのこと、高回転域まで回しても無駄な振動をひとつも起こさない精巧さが自慢である。それは私にとっての自慢でもあって、オフ会でステアリングを握る皆さんが太鼓判を押してくれるのがとても嬉しい。良いエンジンを選んだものだ。ボルドー片手に語りたくなるくらい白眉だから、自信を持ってお薦めする。
1.5リッターで 300Nm は、周りを見渡してもハイスペック。一番の武器は、ダウンサイジングによる小型化だ。軽量なフロントはカーブでのコントロールが容易なので、街中でもワインディングでも疲れ知らず。クルマにとって軽さは力。そのうち他メーカーの追従があるだろうけど、今は世界一の小排気量ディーゼルエンジンと言っても過言ではないでしょう。
もうひとつ。エンジン音は全ディーゼル中最高である。これは譲らん、譲らんぞう。
項目 | スター | |
---|---|---|
トルクの力強さ・突きの良さ | 3 | |
フィーリングのナチュラルさ | 4 | |
エンジンサウンドの気持ち良さ | 5 |
ブレない魂 マツダ S8-DPTS 1.8L “SKYACTIVE-D” ディーゼルエンジン
Twitter で交流させていただいているYOUTUBERパンプケンさんの mazda3 のステアリングを握らせてもらう。かれこれ3回運転させてもらっているが、印象は一貫して「良い車」。低速域での揺れの少なさ、車内の静けさは大したもので、日本車もここまで来たかと言ってしまう出来の良さ。
そしてエンジン。ギャラギャラと高音域での力強い鼓動が鳴るところが如何にもディーゼル車と言えるのだが、車内の防音対策がしっかりしていてドライバーには「独特なエンジンサウンド」として認識される。クルマの静寂さを求める人にはオススメしないが、元気さを求めるのならアリだろう。
1.8L で116ps/270Nmというスペックの出力特性は思いきりガソリン寄り。低回転域よりは中回転域以降でトルクが効いてくる感覚は、自然吸気エンジンと大差ない。せっかくのターボディーゼルなのにツマラナイという意見もあるだろうけど、mazda3 には似合っているんじゃないかと私は感じる。
マツダには一貫した走りのイメージが存在していて、エンジンが変わることで性格が大きく変わるのを嫌がっているんじゃないかな。低回転域大トルク+高回転で伸びないディーゼルって、少なくとも mazda 3 には・・・・ね?
赤く妖艶なエロボディの mazda 3 のドライバーズシートには、都会的でインテリジェンスな人がよく似合う。ならば、ドッカンディーゼルよりも自然なフィーリングのほうが価値があるよね。
項目 | スター | |
---|---|---|
トルクの力強さ・突きの良さ | 3 | |
フィーリングのナチュラルさ | 5 | |
エンジンサウンドの気持ち良さ | 3 |
これぞ飛ぶレンガ ボルボ D4204T 2.0L “第三の” ディーゼルエンジン
大袈裟なキャッチフレーズで現れたと思ったら、3年で撤退と慌ただしかったのがボルボディーゼル。受注の6割はディーゼルだというのに、早めのEV戦略にかき混ぜられて置いてきぼり感が強かった。けれど、モノの良さはピカイチだ。
曇ったようなエンジン音は日本車では味わえない独特のキャラクター。1750回転で発揮される400Nmの鮮烈トルク。踏めばなかなか速いのだが、見た目はそこまでスポーティじゃないから目立ちたくない自動車玄人には良いクルマだと褒めまくったのが懐かしい。高速道路の追い越しレーンで、サラリと好きなだけトルクが湧き出る。なにせ、時速100km/hでのエンジン回転数は1500rpm。トルクピークはこれからなんだぜ?
トドメの一撃、別売りポールスターパフォーマンスパッケージでトルクを更に2割増!日本人ではちょっと思いつかない尖り方が輸入車の楽しみだけど、ボルボのコイツもジャーマンスリーを黙らせちゃう実力だった。もう、直線番長と言ってもいい。
いやあ、ボルボってトルクで走るの大好きなんだろうな。ガソリンエンジンを含めても、やたらとフラットトルクにこだわる。うん、だからEVに走ったんだろう。フラットだからレンガなんだろうな・・・無理あるな・・・
項目 | スター | |
---|---|---|
トルクの力強さ・突きの良さ | 5 | |
フィーリングのナチュラルさ | 3 | |
エンジンサウンドの気持ち良さ | 3 |
フォルクスワーゲン 2.0L “TDI” ディーゼルエンジン
フォルクスワーゲンはディーゼルゲートを名前がつくほどの失態を犯してしまったのが2015年。しかし、その教訓は更なる環境性能アップへの糧となった。
ブログ仲間の10maxさんのパサートオールトラックのステアリングを握ってみた。フォルクスワーゲン自慢のTDIと、電子制御AWD「4MOTION」。このクルマ、ハッキリいって振り回した時の楽しさの記憶が強いので、エンジンの主張をついつい忘れてしまいがちだ。決してつまらないわけではない、いや、面白いつまらないで語るべきディーゼルエンジンではないのだろう。
静かだけれど少しの雑味を残すエンジンサウンド。オーバーフェンダーで車幅を増やしたパサートオールトラックに相応しく、ちょっぴりヤンチャな気配がするが、街中では本性を隠す。ストロークの効いたサスペンションの乗り心地に合わせるように、アクセル開度の少ない場面はゆったり流しやすい味付けだ。
ところが、一定以上に踏み込んだ時に性格が変わってくる。まるでジョブチェンジしたかのよう。学者から魔剣士になったような勢いというか、3000rpm付近からはカムが切り替わるように元気になる。アクセルに対する敏感度が高くなって、モアスピードを気楽に手に入れることのできる痛快モードに入り込むのだ。1.6トンの車体に十分速度がのって、砲丸に跨いでいるような気分になる中、さらに激しく前のめり。そしてエンジンサウンドにも色気が入るオマケ付きだ。
しかも、4MOTIONの安心感は素晴らしくって、どんなコーナーだろうとアクセルを踏み込んでも曲がれないということが想像できない。狙ったラインにピタリと合わせるAWDが付いているからこそ、高回転域型ディーゼルエンジンにチューニングをしたのだろう。
一粒で二度美味しいキュービィロップのような車が欲しい人には、うってつけのディーゼルカーだ。
項目 | スター | |
---|---|---|
トルクの力強さ・突きの良さ | 4 | |
フィーリングのナチュラルさ | 4 | |
エンジンサウンドの気持ち良さ | 3 |
熟成のディーゼル PSA DW10型 2.0L “BlueHDi” ディーゼルエンジン
ディーゼルエンジンは低回転域の太いトルクが自慢である。だから、重量級のクルマとの相性は抜群だ。なら、車両を軽くすればするほど、スポーティなクルマに仕上がるのではないか?という疑問は、車好きなら何度も考えるに違いない。
ブログ仲間のUUさんの、Peugeot 3008のアクセルを踏む。塊感のあるボディデザインはフットワークの良さに出ていて、自慢のディーゼルエンジンとの相性は抜群だ。FF重量級SUVが、こんな走りをしても良いのか?ちょいと一年貸してごらんよと言いたくなる。マイナーチェンジでプラグインハイブリッドが登場したけど、総合燃費はやはりディーゼルが上だった。ベースの実力が高いのだ。
2リッター直列4気筒ディーゼルエンジンの400Nmという大トルクはとても扱いやすい。それなりに重いとはいえ、街中を流す程度での急激な押し出し感はまったくない。ならばとチョット力強くアクセルを踏んで見れば、反応よくクルマを押し出してくれるのも頼もしい。最大の美点は、過度な癖がないものだから、アクセルだけでのコントロールもお茶の子さいさいなところだろう。一度速度が下がり切っても、グイと踏めば速度を戻す。トルクの扱い方のお手本みたいなエンジンだ。
そこへ猫足が組み合わさる。
粘りの効いた足回りは路面を掴んで離さない。急のつくようなステアリング捌きをしたところで、姿勢を崩すことなど一切なし。アクセルを踏み込みながらでのカーブでさえ、リア・サスペンションの粘りに支えられてレーンをきっちりキープする。おいおい、こいつはそれなりに背の高いクルマなんだぞ?山路を楽しく走れるSUVが欲しいなら、Peugeot 3008のディーゼルモデル一択なのではなかろうか。
項目 | スター | |
---|---|---|
トルクの力強さ・突きの良さ | 4 | |
フィーリングのナチュラルさ | 4 | |
エンジンサウンドの気持ち良さ | 3 |
ディーゼルエンジン車を平等に比較してみた
今回は5つのディーゼル車の比較だが、ボルボV40だけはすでに買えない古いモデルだ。だからかもしれないが、ビックトルクは楽しいけれども工夫の少ないディーゼルだった。もちろん、その後に投入されたモデル達が良くなっただけであり、私が所有していたときは一位二位を争うものだと確信していた。
しかし、ディーゼルエンジンは進化する。トルクがさらに大きくなった!というわけではなく、燃費が無茶無茶良くなった!というわけでもない。クルマの性格に合わせてチューニングされるようになったのだ。
飛び抜けディーゼル派か雰囲気ディーゼル派か
Peugeot 308に搭載されるディーゼルエンジンは、小ささにこだわったエンジンだ。元々はDV6という1.6Lがベースだが、更なるスペックアップを狙い80パーセントの部品を新設計。華麗なるエンジンサウンドは一級品で、この音だけで買っても過後悔しないと思うし、新型 Peugeot 308と組み合わせた暁にはエロ車候補に上がるだろう。
そして、軽いフットワークは揺れを許容する Peugeot 308 のサスペンションともお似合い。付くべくして付いた、そんな組み合わせだったりする。
それに比べると、マツダの1.8リッターディーゼルエンジンはパンチ力には欠けている。噂によれば2.2Lには魔物が住むと聞いているが、今回の相手はあくまでも1.8リッターに焦点をあてた。そして、パンチが効いていないからなんなんだ、というのが私の答えだ。
ムーディなmazda 3に乗り込んで、高価な時計細工を思わせる三眼メーターに満足を覚える。ゲート式シフトノブは動かし心地が気持ち良く、低い着座位置からの見晴らしもスポーティで気分が良い。車内も静かなものだから、洋楽を聴きながらドライブなんて洒落込んでも大丈夫だ。
そこへ、いきなりエンジンが主張したらどうだろう?なんだか色々ぶち壊してしまうに違いない。走りを一人で愉しむ彼をみたら、助手席の彼女はしらけてしまう事だろう。
つまり、マツダが目指すのはクルマのトータルバランスなのだ。良いものを作るという良心の塊。この力はスペック表には書かれない。Peugeot 308の1.5リッターディーゼル・エンジンとは、ベクトルの方向が違いすぎて比べられない。
バランスディーゼル派か電子制御ディーゼル派か
トータルバランスで言えば、Peugeot 3008も良い出来だ。次世代のファミリーカーはこうあるべきだという、メッセージを受け取れる。そして、2リッターディーゼル・エンジンも上手く調整されていて、大袈裟な主張をしないのも好印象だ。
もちろん、加速したいときはしっかりと加速してくれる。私はフットワークの事をよく言うが、フットワークの良さを活かすには適度な加速とブレーキ性能があってこそだ。でなければ、豆腐屋のハッチバックのようなシチュエーションのみのつまらない車になってしまう。
よく言う「走る、曲がる、止まる」のバランスを高次元でまとめ上げる、誰にも優しい車に仕上がる。だから、スポーツモードでのV8擬似サウンドもクスッと笑えて楽しいと感じる、大人なクルマになれるのだ。
それらを、テクノロジーでねじ伏せようと言うのがフォルクスワーゲンパサートオールトラックだ。名前が長いが、詰め込まれた技術の量も今回の登場人物の中でも最も多い。
エンジンの性格もサスペンションの柔らかさも、電子制御でコントロール。スポーツ四駆は昔のクロカンみたいなイメージからは逸脱していて、ぐりぐり曲がる、好きなだけ曲がる、アイスバーン以外ならどこに行ってもトラクションが効かなくなることがない。フットワークから加減速まで、何もかもが総合的にコントロールされている。
だから、強烈にパワフルなディーゼルエンジンさえも、電子制御の支配下に置かれる。こういうのって、ランサーだとかインプレッサだとか日本製が得意だと思っていたが、いつのまにやらワーゲンのモノになっていた。いや、今も四駆の技術は同じくらいあるかもしれない。
ワーゲンしか持たないもの、やはりそれは、ディーゼルエンジンとの組み合わせ。この特別感を味わうには、世界を見渡してもパサートオールトラック一択なのだ。(たぶんね!)
私が最も嬉しいのは、「ディーゼルエンジン」ひとつだけで比べてみても、色々な性格の車があると言う事だ。ひとつのエンジンバリエーションとしてだけ語られることの多い彼らだが、それぞれしっかり主張があって、エンジンだけでは比べるのは難しい。
それぞれの想いを受け取って、しっかり吟味して自分に合ったディーゼルエンジンを選んで欲しい。そんなメッセージが届いたなら、ブログ冥利に尽きるというもの。
いつまでもディーゼル・エンジンの夢を!
そもそも自動車メーカーというのは、エンジン屋と言っても良いだろう。さまざまなサプライヤーと手を組み、精巧な部品の提供を受けながらも、自動車の総合的なデザインを行うのはやはり自動車メーカーで、クルマの性格を第一に表すものもエンジンと言えたのだ。近年、バッテリーEVが参入しやすいとしているのは内燃機関を作らずに済むからで、つまりは「総合デザインができれば良いんでしょ」という風潮を感じてしまうが、車好きから言わしてみればチョット違うんじゃないかな、という気分になってしまいます。
内燃機関を創り上げてきた自動車メーカーには膨大な経験と知識があって、単純に振興メーカーがステアリングだシフトノブだのデザインをするだけ(というわけでは無いとはいえ、感情的に言えば)でクルマを作り上げることはそもそも難しく、そして大変失礼なことではないかと感じてしまうのは、私だけではないはずだ。
クルマというのは「鉄くずを動かす技術」があるからこそのクルマであって、そのテクノロジーの基礎知識はすっ飛ばすべきことではなく、エンジン屋はデザイナーである前に技術屋であり、いつまでも最新の技術を研究していかなくてはらない。
その理由は、例えばトヨタが創り上げたハイブリッド技術、マツダが実用化したHCCIエンジン技術、欧州が得意とするディーゼル技術が、本当に必要なときには一つに纏めて、究極の内燃機関を作り上げることができるからだ。いつそうなるかは不明だし、ならなくても良いのだが、地球環境がこれ以上後戻りできなくなった時、そして代替燃料技術が確立されるその日まで、自社の持つ技術というものを大事に育てていて欲しいと願うのである。
その技術の中には、ディーゼル機関は当然のように含まれる。胸を張って、ディーゼルエンジン車に乗っていただければと思います。