カー・ジャーナル

EV専売化の発表でわかる 脱・内燃機関戦略の難しさ

高級車メーカージャガーは、2025年にEV専売に切り替えると発表しました。老舗ブランドの内燃機関切り捨てのニュースには、不安視する声が数多く寄せられています。これはいったい何故なのか。

 

―― ◯ ――

 

EV専売化・・・プジョーでもボルボでもありません。ジャガーがベースの話ですが・・・車社会は電動化への流れはどこまで続くのでしょうか。

 

高級車メーカージャガーは、4年後までに全てのラインナップを電動化すると発表しました。自社で保有するランドローバーも、5年で6車種の電気自動車を投入するとし、2039年にはカーボンニュートラルを達成するとしています。

 

この話、やはりというべきか、発電が置き去りにされているだとかで日本ではあまり良い印象を得ていないように感じます。それが何故なのかを、私なりに考えてみました。

 

スポンサーリンク

カーボンニュートラルの具体性が見えない

私はまだまだこの先も、内燃機関はクルマというツールの重要なパーツになると信じています。カーボンニュートラルな燃料が開発されつつあること、バッテリーの製造によるCO2排出量の数値が見えにくいことが主な理由です。

 

もちろん、バッテリーカーがダメと言っているわけではなく、適度なミックスが必要だという主張です。

 

例えば、バッテリーの製造におけるカーボン排出量を、バッテリー工場を稼働する発電所におけるカーボンニュートラルの達成度と直結すると仮定します。

 

バッテリー製造でつかう電力を供給する発電所がカーボンニュートラルであれば、バッテリーもカーボンニュートラルと言えるでしょう。では、同じ発電所を使用して内燃機関を製造したときの、CO2排出量はどうなるでしょう。

 

すべて電力で作れるなら、同じくカーボンニュートラルは達成されます。実際には鋳造(鉄を溶かして形作る)など高熱が必要な工程はあるものの、世界のエネルギーが化石燃料由来でなくなれば、クルマにまつわるカーボンニュートラルへの道のりは、すべてが肯定されるのです。

 

けれども、カーボンフリーな燃料の精製量は石油よりも少ないことでしょう。一方で、全てのクルマが電気自動車になってしまえば、その電力需要を支えるのも大変です。

 

だからこそ、これからはあらゆる事を考えながら、エネルギーミックスの最適解を模索して、その割合をコントロールできる社会をつくる必要があると思うのです。

 

大黒埠頭のカープール

 

過去があってこその将来がある

そういう考えの中で言えば、私はジャガーに乗ることは無いでしょう。

 

CSR(企業の社会的責任)の為、各自動車会社がカーボンニュートラル達成への道を模索していることはわかります。一定の電動化を推し進め、とりあえず目の前にある燃費目標を達成する。イギリスが内燃機関を辞めると言うなら、ジャガーも辞める。これは単純でわかりやすいです。

 

けれども、CSRは「これからの事」だけに目を向けるのではなく、「今までの事」にも目を向けるべきでしょう。

 

クルマが誕生し、ガソリンスタンドまで石油が届くインフラが整えられ、鉄道網を衰退させ、モータリゼーションが行われた。その中で商売を繰り広げた自動車メーカーは、世界のモーターインフラに対して責任を持つ必要があります。

 

ジャガーは2025年の電動化達成で、どれほどのCO2削減を見込むのか。それは、適正な価格で自社の顧客が購入できるものなのか。2039年にカーボンニュートラルが達成されると言うとして、一時的にCO2排出量が多くなったりしないのか。

 

これらを考えて発信するのが、メーカーの本当の責任だと思うのです。

 

企業の取り組みでクルマを選ぶ人もいる

Peugeot e-2008 ボンネットの中にはエンジンが?

Peugeot 2008 のボンネット。ここに、EVでもICEでもパワーを発生させるものが搭載されている。内燃機関を諦めないのは、今まで販売してきたメーカーの責任だ。

 

プジョーはご存知の通り、パワーチョイスを施策としています。世界各国の情勢に合わせられるようにと、同じボディで別のパワーソースが選べるようにと、EV、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジンの開発を辞めません。

 

ボルボはどうでしょう。ディーゼルエンジンのDriveEの開発こそ凍結の判断をしていますが、EVを先頭にPHEVやMHEV内燃機関開発の余地を残します。EV専売という先進性はポールスターに任せて、地道な部分はしっかりと残します。

 

各社の思惑、国々の計画、さまざまな背景がある事でしょう。この先のロードマップ変更はあるかもしれない。けれども、今は何かしらの意思表示が必要な事もまた、事実です。

 

内燃機関がなくなることへの寂しさという感情面があるのも事実。

 

そして、企業の考え方を読み取りながらクルマを選ぶ人がいることも、また事実です。

 

 

もともと私には縁のないメーカーではありますが、せっかくの老舗ブランドがEV化への舵をとったことには、違和感を感じてしまいます。テスラはテスラだからEV専売で良いのであって、老舗は老舗ならではの、大事にしなきゃいけないポリシーが欲しい。

 

こんな要求を受け入れていては、存続できないと言われればそうですが、ね(^^;)

 

コメントで応援してください!

  1. くろ より:

    まこまちさん

    難しい問題ですね。
    この間、会社で創造学という研修受けまして、結構インスパイア受けました。
    手段を目的にしてはいけないといった趣旨でしてた。
    分かりやすい例としては昔の人は空を飛びたいと思った時に鳥を見て、羽ばたくことを目指したせいで
    何百年も飛ぶことが遅れたと言った話でした。
    飛ぶことの手段が羽ばたくことであって、飛ぶ目的は引力にどう逆らうかが本来の目的であると。
    そこに気づけば、気球や飛行機、ヘリコプターなどの発明に繋げることができるはずと。
    CO2も今、発生しないことばっかり言っていますね。
    でも難しい。電気や鉄はCO2発生のもとに出来てますから。
    人類の本当の目的は大気中のCO2濃度を抑えて温暖化に歯止めをかけたい。
    では、吸着して大気中のCO2濃度を減らすことが出来れば・・・
    案外、解がそこにあるのではなんと思っています。
    ユーグレナさんみたいな特殊な会社にスポットライトが当たるかも知れませんねw

  2. まこまち より:

    くろ様

    実は、色々調べている中でCO2の吸収を考えている企業があることがわかりました。
    出さないのは無理なのだから、吸収しちゃおう。くろ様のお考えのとおりです。
    私が必死に(?)バイオディーゼルを肯定するのも、CO2の吸収に繋がるからです。

    将来、例えば遠い先のことですが、CO2が大気中から無くなると、どうなるか。
    もしかしたら、100年後にはこんな話がされているかもしれませんね。
    兎にも角にも、今は目の前のCO2排出削減が重要事項。世間の雰囲気にのまれないように、私も発信しようと思っています(^^)

タイトルとURLをコピーしました