脱ガソリンは日本の共通の認識になったけれど、EV化に傾いている感じがして、すこし不安。
自動車は本当にEVに向かうの? 東京都は 2030年 には少なくとも電動化っていうけれど、日本人の目標は本当にそこで良いのだろうか。ガソリン車よりもエコロジーって、いったい誰が言ってくれる?
まだまだ疑問点の多い環境政策について、クルマを愛するモノの立場から考えてみました。
政府主導の難しさ
気候変動に対する政府や都の方針発表。政治って難しいんだなって感想を最初に得ました。
都の発表資料を読むと、EV充電スポットの拡充だとか、水素ステーションの拡充だとか、書いてあります。自動車会社が今とりあえず販売できる製品を普及させるためのインフラ整備を行いたい。補助金も出す。実効性はたしかにある。
充電スポットなどのインフラ整備
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EVなどの環境対応車を買う人が増える
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2030年のZEV販売数達成
これで、「インフラさえ整ってくればEV買おう」とか「政府がインフラ整備しないでどうするんだ」とか思っている人をZEV化することができる。一定の効果はあると思います。私もEVは所有してみたいし。
でも一方で、内燃機関に期待する人もいるわけです。環境記事を書くために色々私も調べていますが、調べれば調べるほど、EVが完全じゃないこともわかりますし、内燃機関の不要論ってやっぱり、気持ち悪いなって感じるんですよね。
EV推進への違和感
発電所の効率をあげないとEVの意味がない
ひとつは、やはり「発電所の効率」のこと。日本の発電は、まだまだ火力発電に頼っているところがある。CO2沢山だしてる・・・いや、家庭内のゴミの燃焼は昔に比べたら効率はあがったらしいけど、重油を使う時点でまだまだCO2が出る。
だからこそ、原子力をつかう政策を日本はとってきたのだけど、東日本大震災のインパクトで世論は原発NOに向かった。代替えエネルギーを考えないで世論は勝手にNOを言うけど、ならば我々は何をすべきか?は政治にまかせる。原子力はダメ、ダム(水力発電)もダメ、風力発電はパルスノイズがとか、太陽光発電は土地だとか。
その挙げ句、電気が足りなくなって停電する。行き詰まってますよね。
とするならば、送電効率だとかを考えずに済む、その場で「発電」ができてしまう内燃機関は良いんじゃないか?発電所を積んでクルマを動かす。夜間の発電ロスも考えずに済む。
太陽光パネルを敷地内に作って自分で使う。これは良いと思います。発電所の小型化、分散化ですね。ビルならビル単位、家なら家単位で何かしらの発電ができるようにしてしまう。そこから考えるに、蓄電のできるEVは良い選択肢。
けれども、住宅設備とセットで考える必要もある。それに世界はバッテリーだらけになってしまう。ううん・・・発電所には、「核融合発電」という未来もある。この論争もしばらくつづきそうです。
川崎の工業地帯。モクモクとあがる水蒸気は、実は温室効果の高いガス。こいつの影響などうなのでしょうね。
バッテリーの重さは小型車向けか大型車向けか
次は「重さ」。クルマは重くなれば重くなるほど、燃費が下がります。希少金属を使うこともそうです。バッテリー技術の革新が待たれるところ。
2030年と東京都の規制だと、ハイブリッドカーは販売規制の対象とならないらしい。ということは、軽自動車にも何かしらのハイブリッド技術を搭載しなくてはなりません。
トヨタがプリウスを発売して20年。軽自動車はようやく、スズキがマイルドハイブリッドを出したばかり。けれど、トヨタのような規模の大きいハイブリッドを入れてこない。これは何故?と言えば、やっぱり「重さ」なのだと思います。
せっかく、小さく軽くつくって燃費をあげた軽自動車。バッテリーとモーターを入れてしまうと、思ったよりも燃費が増えないんじゃない?
WAGON R | MOVE | PRIUS | |
---|---|---|---|
WTLC | 25.2 | 20.7 | 30.8 |
市街地 | 23.0 | 17.0 | 28.2 |
郊外 | 26.5 | 22.5 | 33.2 |
高速 | 25.4 | 21.6 | 30.4 |
※ SUZUKI WAGON R Hybrid FZ / DAIHATSU MOVE X / TOYOTA PRIUS A
ハイブリッドじゃないダイハツは、燃費で水をあけられているね・・・軽自動車規格でEVが出れば良いのだけど、車両重量が増えるということは、クラッシャブルゾーンを増やさないといけないし、小さいからこその難易度もあるだろう。それでも東京都や国が電動化というのであれば、せざるを得ない。
だからこそ、ライフサイクルアシスメントで見たら、内燃機関よりもEVのほうがCO2を多く排出していた・・・なんてことにならないように、生産拠点毎のCO2排出をしっかり見た方針を掲げて欲しい。消費者的にも、そこが見えないとEVは買いづらいです。
そういえば、水素エネルギーは大型自動車用なんですよね。バッテリーは重すぎるし充電にも時間がかかるって。
代替燃料を無視してはならない
燃料をカーボンフリーにしてしまおうという構想も進んでいます。水素燃料もそうだし、炭化水素燃料とかバイオディーゼルとかもそう。クルマ単体でみるとカーボンフリーではないけれど、エネルギーサイクルで見ればCO2を出さないとみなすことができる。
アウディの研究している e-Diesel は、余剰電力を使用し、「水」を電気分解して「水素」と「酸素」に分け、「水素」と「空気中の二酸化炭素」を反応させて「ブルー原油」を作り出します。ここからディーゼル燃料を生成する。
既存の内燃機関でも使うことができる、石油を使わないエネルギーを作り出すことができる世界も、形成されつつあるんです。
とすれば、効率の良いエンジン開発は辞めてはならない。代替燃料の確立でEVが総スカンを食らう世界もあり得ることを、しっかり予想しないといけません。
政府・政治の責務
なら、政府の、都の旗振りはどうするべきなのか。
やっぱり、国のインフラでのカーボンニュートラルを求めていく必要があると思います。国のエネルギーがカーボンフリーに近づくほど、EVの存在意義も上がる。代替燃料を作るプラントを発電所の横に設置するのも良い。
そして、家も自動車も「エネルギーの適材適所」を明確にする。家庭には太陽光、自動車には代替燃料、大型自動車や公共運送には水素だとか。つまり、社会インフラの将来像を見せること。日本が世界を牽引するつもりで、各メーカーと話し合えばいい。
EVだって、用途を選んで使えば良いんです。でも、EVを強く推進して、EV向けのインフラ整備を進めるのなら、その他のエネルギーについても考察して、発信すべきなんですよね。実際、現時点での日本の発電事情では、EVは100%エコとは言えないんだからさ。
私が大嫌いなものがあります。「お金を出した人には自然由来エネルギーを使ったとみなす」というもの。例えば、太陽光発電や水力発電で得たエネルギーを、特定の価格を支払った企業へ供給したとみなすこと。
企業は、「自社はカーボンニュートラルです」「グリーンエネルギーを10%使っています」などと言う。でも実際につかっているのは、CO2をしっかり出したエネルギー。これって、自己満足にしか見えないんです。
そしたら、カーボンニュートラルなエネルギーは企業に買われてしまっていて、私達はCO2たっぷりのエネルギーを使っているということになる。でも、エリアによっては近隣のメガソーラー電力を使っている家庭もあるでしょう。
そんな「みなしカーボンフリーへの逃げ道」を作るんじゃなくて、グリーンエネルギー基金でもつくって、出資していますって言ったほうが印象が良い。そして、CO2を排出している責務は、しっかり負うべき。
そうしなくては、働いている社員は「うちはカーボンフリーだぜ」なんて言いながら、ポイ捨てするような人になってしまうかもよ。