アヤフヤなブランド構築は言葉1つで崩壊する

先日、人の価値観とブランド戦略の難しさでは多くのコメントを頂戴しました。

 

私のブログへの書き込みだから、気を使ってコメントしてくれていることに感謝するし、大げさにメーカーや経営者を批判したところで実利はないのは理解している。だからPSAに対して「プレミアムへの道筋はユーザーはよく見ているよ」というささやかなメッセージが残ればよいと思っていた。

 

しかし、やはりブランドの舵取りは難しいことだと感じてしまう。今度はボルボのことである。ボルボのインタビュー記事を読んでいて、ブランド構築は大変なものなのだと痛感したのだ。

 

ブランドの価値は安易に歪む

BUSINES INSIDER の記事に、ボルボの日本法人の話が上がっていた。内容を吟味するに、なんだか寂しい感覚を覚えてしまったのでお伝えしよう。

 

マイルドハイブリッドと電動化、CSRのことに触れています。

—— ボルボはグローバルの目標として、2025年までに販売車の50%を電気自動車、それ以外をプラグインハイブリッドかマイルドハイブリッドにする方針を示しています。日本でもそこまで普及が進むでしょうか?

 

パーソン:明らかなことですが、日本はヨーロッパに比べてこういった取り組みが遅れています。2025年に日本での販売車の50%を電気自動車にすることはできないと思っています。例えば、充電環境の問題があります。政府や社会全体が充電できる場所を一気に作っていけば、グッと普及していくと思いますが、遅々として進まないと、やはり電気自動車も普及していきません。

 

ボルボがどうこうというより、日本がいかに変わっていくかという問題が大きいです。

 

(中略)

 

—— 自動車産業でも、SDGsに対する取り組みが重要視されてきていると思います。ボルボは電動化の取り組みなどを見ても、SDGsに対する意識が非常に高い印象があります。なぜなのでしょうか?

 

パーソン:まず、最近「サステナビリティ」という言葉が流行っていますが、私たちは流行しているからやっているわけではなく、もっとずっと前からサステナビリティについて考えてきました。

 

—— やっと時代がボルボに追いついてきたと。

 

パーソン:そうかもしれないですね(笑)。

出典:BUSINES INSIDER

 

なんだろう、お国柄の違いなのか、日本においてのこのような発信は、どちらかといえばマイナスイメージがつきそうだ。ボルボが本当に、こんな事を言ったのか?この記事を書いた人へも疑問をもつ。

 

EVが普及しないのは社会が悪い?

マイルド・ハイブリッドで鼻が高い

EVへの取り組みについて、日本の整備が遅れているから、ボルボは 2025 年 までに 50% を EV にするのは不可能だと言っている。日本の政府・社会全体が取り組まなければならない、と言っている。それはわからない話ではないのだが。

 

ボルボがプラグイン・ハイブリッドを販売開始したときから、不安だったことが思い浮かんだ。自分たち、特にディーラー網でできることの発信がされていない。

 

どうして、”ディーラーで誰でも使える急速充電器を置くから EV (以前はPHEV)を買ってください”って言えないのか。

 

文中にもあるのだが、ボルボやスウェーデン人が環境の為に、少し高くても自然由来エネルギーを購入するらしい。自然を守ることは当然という意識なのだし、こだわりをしっかり持つのだと。

 

私も北欧の人々が、あらゆるコダワリをもって作るプロダクトが好きである。イケアにしろ、ボルボにしろ、エレクトロラックスにしろ、だ。

 

でも、そのおかげで商品価格は高騰する。その性格が災いし苦渋をなめた記憶はすでに無いのだろうか。高コスト体質によって利益のでなくなったボルボは、フォード傘下に売却される事態になった。

 

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自らインフラを充実させる力はどこへ

それに、自分たちの目指す世界を語る上で、企業が社会やインフラを疑ってはならないと私は思う。各国のインフラ整備の進み具合を見定めて、EV 販売台数の見通しを発信するべき。

 

良き時代のボルボは、EV を必ず普及させるように、世界へ様々な働きかけをしたに違いない。少なくとも私には、そういうイメージがついている。これはあきらかに、ブランド・イメージ。だから、シートベルトの標準装備という、無理やり押し通して世界にメッセージを発信した記憶があるから、同じことができるだろうと期待していた。

 

企業としての見通しを間違えて、顧客の期待に答えられない。Vision 2020 の未達成が思い出される。経営者の発言で、ブランド・パワーは簡単に崩れてしまう。今回のこの発信はまずいのではないか?と感じてしまうのである。

 

ボルボXC40

PHOTO : XC40 Recharged Plugin Hybrid など自慢できるプロダクトがあったとしても、ブランドの操作ひとつで霞んでしまう。

 

ボルボのサステナビリティ自慢

再生可能エネルギー使用はもっとアピールせよ

もうひとつ。サステナビリティに対しての質問である。ボルボは以前より、サステナビリティに積極的に取り組んできたと話している。

 

サステナビリティには次のような意味合いがある。

社会・環境・経済の3つの尺度から企業価値そのものを上げていくという意味でのCSRに今、海外の企業は取り組んでいます。その結果、現在、英語圏では、以前使われていたCSRやCorporate Citizenshipという言葉以上に、コーポレートサステナビリティ(Corporate Sustainability)という言葉が使われるようになってきています。

出典:サステナブルジャパン

 

私は、「長期的な視野に立ち、環境への影響を配慮しつつ社会に貢献することが、今後の企業に求められる社会的責任だ。」とサステナブルを理解している。

 

そこでこの質問と回答。「世界がボルボに追いついた」???

 

ボルボの販売する商品は、去年ようやくマイルド・ハイブリッドを搭載したばかり。クルマの電動化についての返答であるのなら、人々は燃費・走行中のCO2排出量へ気が向いてしまう。

 

生産工場の 100% 再生可能エネルギー化を言いたかったのか?

 

 

欧州排ガス規制では甘い数値

欧州排ガス規制も、2016年での排ガス排出量が他メーカーよりも多いため、2021年の規制においても他メーカーよりも甘い数値になっている。本来、鼻を高くしている場合ではないはずだ。

欧州 2021 年排出ガス規制目標値
FCA 91.1 g/km
Hyundai-KIA 91.7 g/km
PSA 92.6 g/km
TOYOTA 94.3 g/km
VolksWagen 96.3 g/km
VOLVO 103.5 g/km

 

重く大きいクルマしかないから・・・ではなく、小型で燃費の良いクルマを作ってこなかったから、このような数値になってしまう。

 

本当にサスティナビリティを考えているのであれば、小型乗用車をつくり(もしかして、完成しかけている?)、そちらへシフトを促すこともできるのだ。クルマの燃費を稼ぐのであれば、小型化、軽量化に勝るものはない。そこへ、「時代が追いついた」というのは、記者から言われたとしても否定するべき文言だ。

 

ブランドはあまくない

クルマの質があがったから、装備量が増えたから、パーツを吟味して良いモノを使っているからと、プレミアムを望むのは悪くない。それを望む新しい顧客層を開拓し、二度と経営の傾かないメーカーになるのであれば、私としては寂しいけれど、それも一つのブランド戦略だ。

 

シートベルトを語るも良い、歩行者エアバッグを語るも良い。己の歴史を振り返り、誇れることを顧客へ伝えて満足度を上げていくのも商売だし、ブランドの構築の要素である。

 

ボルボV40でビーナスラインを紅葉ドライブ

 

だからこそ、歴史はメーカーだけのものではなく、ユーザーもまた歴史をあずかるコミュニティの一員であることを、忘れてはならない。ブランドとは、商品の品質だけでなく、関わった人であるとか、長く続いた歴史・時間、つまりビジネスモデルとしての信頼性の高さも関わった上で成り立つものだ。

 

つまりそれは、誠実さであったり、ユーザーからの評判だったりも含むということ。特にユーザー・コミュニティは、SNSという誰もが発信できるものによって、大きな力に変わってきた。その制御を、どこまで行うことができるだろう。

 

最後には「正直者が勝者になる」。奢りは敵である。ブランド構築の難しい舵取りを、ぜひボルボには成功させてほしい。