プジョー308SWとボルボV40の比較記事。今回はフロントシートに着眼する。
クルマで移動を楽しむ上で、シートというのは重要なポジションだ。座れれば良いという考えを持つ人もいるが、300万円を超えるクルマを購入するのであれば、シートにはコダワリを持ちたいものだ。
今回の要点を纏めると、以下のようになる。
- 座り心地は明らかにボルボが一歩上。
- ボルボは体全体を支えるシート、プジョーは腰回りをしっかり固定するシート。
- デザインは好みにも寄る。308SW TECH PACK EDITIONの華やかさは稀。
詳しく見ていこう。
比較する2車種のシートの座り心地
peugeot 308SW TECH PACK EDITION BlueDHi は 座面が硬いが快適
プジョー 308SW TECH PACK EDITION BlueHDiの運転席のドアを開けた。
「PEUGEOT」のスカッフプレートが目に入ると同時に、サイドシルがかなり太い印象を持つはずだ。ボディ剛性の為なのか、配線の為なのか、とにかく太い。
おおきな「壁」がある印象だが、包まれ感も出ている。不思議な空間デザインだ。
シートに腰を落とす。
身体を預けるエリアは、アルカンターラが施されている。手触りのいいアルカンターラは、ホールド感をサポートする役目も担っているようで、身体がズレないのが良い。TECH PACK EDITIONのシートは中央部が縦にファブリックになっているので、さらに快適。
手に触れるところはテップレザー。汚れのつきやすいところだから、掃除のしやすいレザー調はありがたい。
座面は硬いが、疲れる硬さではない。手で押してみるとコシがあり、張りのよい革を連想させる。
あずけている身体に馴染んでいく感覚があり、面白い。
プジョー208のリアシートで経験したような柔らかさと包まれ感は無いので、好みが合わなければAllureのファブリックシートが良いだろう。
クルマを発信させ、カーブを通過する。
このシートは、腰で身体を支えているのがわかる。背中の途中からお尻までが、シートと一体化したような印象だ。腰に無駄な力がかからないので、中距離〜長距離ではとくに疲れにくく感じるだろう。
ただ、左右のサポートがきつめ。背の低い人だと、このサポートの張り出しが肩を押し、疲れてしまう。大きめのネックピローなどを使って、身体を少し起こすと良さそうだ。
VOLVO V40 D4 Momentum は 卵の殻に収まるような快適さ
ボルボV40 D4 Momentum のドアを開き、運転席に座ろうとする。
扉の付け根が後退しているので、乗り込むときも降りるときも、ドアを蹴らないように気を遣う。扉も意外と大きい。スポーツカーを連想させる。
シートに腰を落とす。
座面は適度に柔らかく、体重を分散しているように感じる。背中から肩口で体を支えるので、卵の殻に入っているような感覚に陥る。とても快適に過ごすことができそう。
座るところはファブリックで、デザインテイストとして一部にレザーが入る「T-TEC テキスタイルコンビネーション」シートは、快適性なら本皮シートよりも上だ。
(ボルボの場合、本皮の上にファインナッパレザーシートがあって、ベンチレーション機能もつく。小さな穴から、エアコンの空気が送られてムレや暑さを取り去ってくれる。V60以上のInscriptionに装備。)
座面は、プジョー308SWのスポーツシートのほうが長そうだ。ボルボV40のMomentum用シートはスポーツシートでもコンフォートシートでも無いけれど、大ぶりで上品な座り心地。
万人の体を支える素晴らしさ、不思議だ。
Momentumの運転席には、8Wayパワーシートが装備されていて、前後、上げ下げを細かく設定できる。
一方、308SWは手動。微調整はボルボが上だし、運転席の場所をメモリーしてくれる機能もプジョーには無い。「快適」という言葉はボルボが一枚も二枚も上手だ。
機能の比較
308SW | V40 | |
---|---|---|
シート地 | ||
ファブリック | – | TACK |
レザー・ファブリックコンビ | Allure | Momentum |
レザーコンビ | TECH PACK / GT | R-Design |
本皮 | – | Inscription |
機能 | ||
運転席パワーシート | – | Momentum以上に 8Way |
助手席パワーシート | – | Inscription以上に 8Way |
運転席ランバーサポート | ○ | ○ |
シートヒーター | – | Inscription以上 |
シート地の差
V40のR-Designは、オプションで 本皮・バーフォレーテッドレザーシートからNubuck・バーフォレーテッドレザーシートへ変更ができる。
308SWは日本でのベースグレードになるAllureでも、レザーとファブリックのコンビネーションシート。TECH PACK EDITIONとGT-Line、GTは、テップレザー・アルカンターラのコンビネーションシートだ。
本皮シートが選べるのはV40 Inscriptionのみになる。
体感で言えば、触り心地はプジョーのほうが上質。座り心地はボルボが上と言えるだろう。
機能の差
快適装備は308SWには一切ついていない、と言えばわかりやすいと思う。
ボルボに搭載される運転席パワーシートは、鍵でシート位置を覚えていられる。2名以上が運転する場合、ボルボが有利になる。1人しか乗らないのであれば、微調整が効くという点に目をつぶれば問題は無い。
シートヒーターは寒冷地では重宝する。しかし人工皮革はあまり寒さを感じない。どうしても欲しければ、次世代308か508を選ぼう。
プジョー308とボルボV40のシート比較 総合
シートの硬さ
2つのシートの乗り心地は、以上のような感想だ。
人工皮革は手触りがよく、体がズレにくい効果があるように思う。だから左右のサポートはもう少し控えめでも良いかな、と思うのがプジョー308のスポーツシートだ。
ボルボに比べればプジョーは硬く感じるのだが、ドイツ車よりは硬くない。
フォルクスワーゲンとメルセデスの本皮シートに乗ったけれど、かなり硬かった。これで疲れないはウソだろうと感じていた。
本皮オンリーが欲しければV40だが
プジョー308には本皮シートの設定は無い。人工皮革になるのだが、この選択は正解だと思う。おかげでコシがあり、上質なソフト感覚を持ち合わせたシートになっている。良いシートだ。
さらにTECH PACK EDITIONは赤と青の2色のステッチが入る。オシャレ度では世界一なのではないか?自分で買ったものだからって、褒め過ぎだろうか。
デザインでの対抗馬は、ボルボでは「シティウィーブ」という2トンカラーのファブリックシートだ。どちらも最高グレードへのセッティングではないあたり、中間グレードの大事さがわかっているのだろう。
現代において、ファブリックシートは丈夫で快適だ。本皮は質感が良いのは認めるが、本皮一択になる必要は無いと感じる。
ボルボのシートはシート地が多岐に渡るが、どれも乗り味は同じだ。身体の固定も同じ。XC40が若干小さめに感じる程度で、それでも快適性は損なわれていない。
デザインも基本的に同じだ。シート地によって雰囲気が変わるので、インテリアデザインで満足の行くグレードを選べば問題は無いだろう。
お互いの悪いところ
ひとつ苦言を呈すと、プジョー308は眠たい時にシートを倒すことが出来ないのはいただけない。
その場合、308SWならラゲッジで寝ることになる(笑)なお、ボルボの8Wayシートの場合も、エンジンがかかっていないとシートが倒れない。かかっていたとしても、シートを倒すのには時間はかかる。
ボルボのシートは本当に疲れない、と言いたいが、V40のシートは腰は少し疲れた。座面の調整で直したいところだが、車内の高さが少ない為、あまり自由に設定できない。細かいところだが、この心配はボルボ車全般に言えることだ。
そこを考えると、ボルボのXCシリーズはシートだけを見れば、ボルボの中では最高の選択肢と言える。高さの自由度というのは、意外と影響があるものなのだ。
ヘッドレストの違い
最後に、フロントシートで決定的な違いを紹介する。
それは、ヘッドレストだ。プジョーのヘッドレストの表面形状は「凸」。ボルボの表面形状は「凹」だ。これはヘッドレストを多様する人には、大きな差になるはず。
ボルボで凹んだヘッドレストに慣れていた私は、プジョーの丸みのある形状には違和感が多かった。以前試乗したMINI CrossOverも、凸形状だった。どちらが世界標準化はわからないが、ヘッドレストはやはり、ボルボの形状が人の身体にはしっくり来るだろう。
プジョー308SW vs ボルボV40 比較結果
ボルボV40のシートは確かに良い。これは崩れない。
しかしプジョー308のスポーツシートもなかなか良い。空間デザインまで含めれば、高さ方向に余裕のあるプジョー308は、シートの調整幅にも余裕が効くのは、試乗してみればわかるはず。
そして長距離ドライブをしてみた限り、プジョー308はシートに対する不満は、肩口のサポートの強さだけだった。身長175cmを超えるようなら、まったく問題ないと見ていい。
最後は個人の主観になると思うのだが、私はプジョー308SWのシートを高く評価する・・・ボルボV40が90点に対し、プジョー308SWも90点。TECH PACK EDITIONのステッチの恩恵が大きく入っている事にご注意されたし(笑)