カー・ジャーナル

【自動車メーカーへ本音をぶつけるぜ】ホンダは、あまりにも上手にクルマを作ってしまった

完成度の高いシビックe:HEVに感動しながら、2年で飽きを感じ、中古のボルボへ。正しすぎるクルマから匂いが消えていく寂しさと、無茶な発想で新しい正解を生み出す「少し臭いホンダ」への期待を、元オーナーの本音で綴ります。

 

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ホンダシビック e:HEVに飽きてから、もう一年が過ぎましたね。ホンダのクルマは、実にいい。シビックを選んだ時、明らかにゴルフよりもいいクルマだと感じたし、そのおかげで娘ちゃんもフィットを選んだ。我が家は多分、国産車はホンダ推しです。

え?何言ってるかわからないって?褒めているのか、けなしているのかわからない?はい、多分、褒めています(笑)飽きたのは、私の主観ですからね。

技術力があって、デザインは性能美に溢れていて、全車安全装置付きという志にも感銘をうけて。でも、クルマをいつまでも愛せないと判断した。これが、私がホンダに伝えたいワガママです。ほんと、ごめんね。

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本田技研工業という技術者集団に魅了され

ホンダVEZELと臨海エリア
HONDA VEZEL は、Bクラスとは思えない静寂性としっとりとした乗り心地を提供する、技術者集団でなくては製造できないクルマだと感じます。

ホンダという自動車メーカーは、「本田技研工業」というかたっ苦しい名前が示すように、技術の研究に長けたメーカーだ…と、私は感じています。本田宗一郎さんが情熱を燃やして会社を大きくし、その情熱に惹かれて、あらたな情熱が集まってくる――私はホンダに勤めていないけれど、こういう人の集団であるかないかで言えば、そこそこ、そうなんじゃないかな、と。

おかげで、私が乗った近年のホンダ車は、大満足の完成度。N-BOXも、フィットも、シビックも、みんなしっかりまっすぐ走るし、車内のインターフェースも使いやすい。きっと、アコードもステップワゴンも、いいクルマなんだろうなあ。

川崎殿町で撮影したシビックのサイドショット
私の自慢だった、シビックe:HEV。20km/Lの燃費を、レギュラーガソリンでマークする燃費のツワモノ。娘ちゃんとの思い出もたっぷりでした・・・

透き通るようなパワーシステム、スポーツe:HEV。大部分をモーターで走行し、そのフィールは、まるでEV。しかも、EVにはあってはならない、エンジンという足かせを逆手にとって、エンジン回転と加速感を同調させ、仮初めの変速フィールまで奏でてくれる。

感動したんです。工夫の中から生まれた、新しい技術。燃費を大事にしつつ、人の感覚を大事にするためのもの。だから、シビックに決めました。とても幸せで、未来の技術を手に入れたように感じました。

その正しさから逃げるように

ところが。

エンジン音の輝きが、ダウンヒルでは聞こえない。平地を走り電力が無くなれば、ハイブリッド特有の、あの中途半端な単調サウンドを聞かなくてはならない。さらには、アクセルオンでのエンジンサウンドも、いつも同じ調子に聞こえるようになる。

HONDA CIVIC e:HEV用エンジン

2年も走れば、どのタイミングでリニアシフトコントロールが機能するかわかるし、自分の操作でその機能を呼び起こすことができる。まるで、よくできたプログラムと対話しているかのようで、クルマという機械と付き合っている感覚が薄れていったのです。

それは、スポーツe:HEVの完成度が低かったからではありません。むしろ逆。違和感を見つけては、それをひとつずつ消していく。振動を消し、雑音を消し、運転の難しさを消して、人間が気持ちいいと感じる反応だけを、正確に返してくれる。

ホンダは、あまりにも上手にクルマを作ってしまった、よね。

そうして性能が磨かれるほど、クルマから匂いが消えていく。どこまでも滑らかで、速くて、燃費も良くて、安全で、誰が乗っても扱いやすい。工業製品としては、たぶん、それが正解です。シビックe:HEVは、その正解にかなり近いところまで到達したクルマだったと思います。

ところが私は、その正しさから逃げるように、10年以上も前の中古のボルボを選びました。

走り去るシビック

今のクルマと比べれば、動きは鈍いし、燃費も良くない。ナビゲーションは古く、便利な機能も足りません。アクセルを踏めば、エンジンとトランスミッションが少し考えてから動き出す。まっすぐ走ることさえ、シビックほど透き通ってはいない。

でも、その曖昧さが、妙に愛おしくなってしまった。私が好きなクルマというのは、クルマの匂いというのは、こういうものだったんだ。

シビックe:HEVに乗ったことは、私を懐古主義へ走らせた、ひとつのキッカケだったのかもしれません。

私が期待したのは「少し臭いホンダ」

さて、懐古主義なんよ、昔のホンダ車のほうが魅力的だったんよ――などと言い始めれば、面倒なクルマ好きの完成ですが、実際、昔のクルマには欠点がたくさんあって、現在と同じ安全性や環境性能を求めれば、成立しないものばかりでしょう。それでも、シビックやインテグラ、CR-X、S2000という名前を思い浮かべるほど、作り手の熱や、少し無茶な企みまで伝わってくる気がします。

優等生ではあるけれど、少し変。合理的なのに、どこか意地になっている。その“少し臭いホンダ”を、私は期待していたのかもしれません。

もちろん、こんな願いは勝手です。時代も市場も法律も無視した、クルマ好きの戯れ言でしょう。それでも、完成度の高さを知っているからこそ、その技術力を、正解ではない方向にも使ってほしい。ホンダなら、誰も頼んでいないものを本気で作り、それを新しい正解に変えられるのではないか。

HONDA VEZEL Play のカラフルで落ち着きのあるインテリア
VEZELのインテリアも、なかなかセンスがある。まるでフランス車。こういう工夫をどんどん増やして、所有欲の満たせるクルマをガンガン売りさばいてほしいぞ。

期待するのは、平成時代の挑戦者という姿勢。やはり新しいジャンルを作って欲しいと思います。今はトヨタが、そこも強くて、クラウンブランド化は、上手いなあと。FFとFRのどちらも用意するとか、底力しか感じない。

ホンダがやるなら、ZR-VのAWD機構を使ったスポーツワゴンかな。SH-AWDは高額だから無理だとしても、e:HEVとAWDを組み合わせて、レヴォーグ領域に攻め込もう。苦手な欧州でもマーケットが広がるかも。セダンもラインナップして、今は亡きマークXあたりを狙うのも良い。ひっくり返して、e:HEVをミッドに置いたS-2030スポーツクーペも、アリかもしれない…!

そんなホンダを待っている人間が ここにいる

ホンダの挑戦の証 HONDA-e
技術的には申し分がなくても、特別感があまりにもなかった、Honda e。このボディデザインが昔のホンダ車のマージュなのはわかるけれど、新しさがあっても良いと思う。

まったく、ほんとうにくだらないクルマブロガーなんですよね、私って。

でも、そんなハチャメチャが現れれば、私はきっと「ホンダが元気になった!」と、再び騒ぎ始めるのでしょう。

S-MXやストリームのように、まだ輪郭のなかった需要へ、ホンダ自身が新しい形を与える。あるいはTYPE Rとはまったく違う方向へ振り切った、説明の難しい上級車を作る。常識的に考えれば成立しそうにないものを、技術の力で成立させてしまう。そんな完璧主義の使い方こそ、私が見たいホンダなのかもしれません。

私が待っているのは、「誰も頼んでいないところまで踏み込む無茶」。それをワガママと呼ぶなら、たしかにそうなのでしょう。でも、少なくともここに、そんなホンダを待っている人間がひとりいる。

正しいクルマではない、飽きないクルマ。まだ誰もみたことのない景色へ連れて行く、魅力に満ちたクルマが欲しい。

HONDA CIVICの夕暮れ

せっかく誰もが美しいと感じる技術を作り、環境や安全へ果てのない挑戦を続けても、私のような外野は、ああでもない、こうでもないと叫びます。開発している人にも、販売している人にも申し訳ないと思いながら、クルマ好きは、どう足掻いても好き勝手なことを言うのです。

まったく、ほんとうにくだらない。

けれども、そんなくだらない願いも、やはり愛情を土台に育まれたもの。シビックを通じて魅せてくれたホンダの意地の片鱗は、今日も私を「またホンダに乗りたいな」と惑わせます。そんな期待を持たせるホンダが、私は歯がゆくて仕方がないのです。

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