【商品研究】プジョー 1.5L BlueHDi ディーゼルエンジン

プジョー の新世代ディーゼルエンジン、BlueHDi。

 

ディーゼルエンジンに消極的になるメーカーが多い中、欧州排ガス規制にしっかり対応する姿勢に拍手しよう。将来、電気エネルギーに自動車のパワーソースが取って代わるとしても、石油エネルギーからの脱却には、今後10年、20年という長いスパンがかかるのは間違いはないのだ。

 

車の動力を複数から選べる時代が続くとして、CO2排出量の抑制は考慮しなくてはならない問題だ。電気自動車用のバッテリー製造に排出する「CO2」が、「エンジン+燃料の燃焼」のそれを下回るまでは、並行して使うのが得策と私は見ている。

 

今回はプジョー が日本市場へ導入しているエンジンのうち、最新ディーゼルエンジンの仕様をまとめてみよう。情報の詳細は、PSA Groupのエンジン情報ページより引用している。

 

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PSA 1.5リッター ディーゼルエンジン詳細

プジョーの説明文

308シリーズやリフターなど、一部のプジョー・シトロエングループの車両に搭載。商品解説をプジョーのウェブサイトから引用する。

従来の1.6ℓ BlueHDi に代わって、プジョー先進のデジタル技術により設計・開発された最新鋭のクリーンディーゼルです。

 

DOHC 16バルブ化を始め、ル・マン24時間耐久レースの覇者プジョー908から受け継いだ画期的な燃焼システムや200以上にも及ぶ特許技術の採用、80%以上のパーツが新設計となるなど、まったく新しいエンジンとして生まれ変わっています。

 

最高出力96kW(130ps)/3,750rpm、特に高回転域でのパワフルさとレスポンスの良さは、ガソリンエンジンに近いドライブフィールを実現しています。

 

また燃焼システムの効率化やフリクションロスの低減によって燃費も向上。さらに動力性能と並んで、クリーンテクノロジー関しても確実な進化を遂げています。

 

その最大の特長は、酸化触媒、SCR、DPFを同一ユニットにまとめ、エンジン本体のすぐそばに配置したことです。これによって排気ガス処理の効率が大幅に向上し、さらなるクリーン化を達成。

 

2020年から適用されるNOx(窒素酸化物)規制、EURO 6.2も早々とクリアしています。

出典:プジョー公式(308 テクノロジー)

これをもとに、1.5リッターディーゼルエンジン「DV5」の詳細を確認していこう。

 

プジョー908をベースとした画期的な燃焼システム

peugeot908イラスト
プジョー・908シリーズは、ル・マン参戦用のレーシングカーだ。5.5L V型12気筒 ディーゼルエンジンを搭載し、2007年開幕戦で1位・3位に輝いた。

 

耐久レースの頂点とも言えるル・マンにおいて、908開発チームは、プジョー・シトロエングループのエンジニアリング部門と密接に協力。2009年シリーズでは、ワン・ツー・フィニッシュを達成する。

 

100°のバンク角のあるV型ディーゼルエンジン。12気筒が選ばれた理由は、量産車に近いボア径にする為だ。ディーゼルエンジン特有のあらゆる燃料をテストし、最適な燃焼システムを量産車へフィードバック。DV5のピストン形状は、プジョー908のエンジンをベースに作られたという。

 

欧州で特にディーゼルエンジンにコダワリを見せるPSAらしい、レーシングマシンへのディーゼル搭載。その魂、DV5に受け継がれると聞けば嬉しくなるね。

 

ちなみに、ライバルはアウディTDi。プジョーと同じく、5.5リッターディーゼルターボでル・マンに参戦。欧州ディーゼルエンジンの名家だが、この後自らの首を締める事態になろうとは、優勝したときには思いもよらなかったはずだろう。

 

 EURO 6.2 完全適合のクリーン化を達成

排気ガスの浄化システム3つを1つに統合し、エンジン本体の運転席側に設置。浄化システムの一部は一定の温度にならないと動作できないが、エンジン本体に近づけたことにより排気ガスの温度低下を防ぐことができる。

 

つまり、フロア下に置かれる2.0L GT系ディーゼルエンジンの排ガス処理装置に比べると、格段に浄化効率を上げることができるのだ。

 

新統合型システムは「SCFR」と呼ばれるが、排気タービン直下に並べられたミキシングボックスは、PSAの取得した特許をベースに作られた。

 

結果、EURO 6.2 に完全適合。排気ガスは家の中と同等のクリーンさをもつという。

 

出典:プジョープレスリリース

DV6 から 81%の部品を新規設計

エンジン重量 130kgは、1.6L DV6 ディーゼルエンジンよりも 5 kg 重くなったが、 2.0L DW10 ディーゼルエンジンよりも 35kg 軽い。

 

DV6との共通部品は、ハウジングキャップ、クラッチ、および一部センサーとアクチュエーターのみで、19%。他81%は新規設計されている。

 

爆発力を抑えるため、ディーゼルエンジンは重量がどうしてもかさんでしまうが、1.6L PureTech ガソリンエンジンと、ほぼ同等のエンジン重量に抑えた。排ガス浄化及びパワーアップを実現したDV5 は、その軽さにより、優れた回頭性能を搭載するクルマに与えることができるのだ。

 

オルタネーター式アイドリングストップ復帰機構

従来、セルモーターによって行われていたアイドリング・ストップからの復帰を、オルタネーターで行う仕組みを導入(DV6でも同様)。オルタネーターはエンジンの駆動力を使い、クルマに必要な電力を発生させる発電機だが、アイドリングストップからの復帰では、蓄電したバッテリーより電力供給を行い、クランクシャフトを駆動する。

 

このシステム、メーカーによっては、マイルドハイブリッドの動作用モーターとすることができる。アイドリング・ストップからの復帰を素早く行える他、セルモーターに比べても振動を抑制できる美点がある。

 

小排気量というエンジンサイズの小ささも手伝ってか、308SWの車内では殆ど振動を感じない。

 

高回転域のパワフルさ

peugeot DV5RC 性能曲線
微々たるものかもしれないが、DV6(1.6Lディーゼルエンジン)に比べると、DV5(1.5Lディーゼルエンジン)は、1000 rpm付近の低回転域ではトルクの出力で負けている。しかしトルクの立ち上げは素晴らしく、1500 rpm以降で負けることは無い。

 

PSA 1.5リッターディーゼルエンジン DV5 は、130 ps の出力を 3750 rpm で発揮する、直列4気筒ターボエンジンだ。

 

最大トルクは 300 Nm 。フラットトルク特性ではないが、ピークから最大出力発揮ポイントまで穏やかなカーブを描きトルクを維持する。

 

DOHC 16バルブ化を果たし、2000 rpm、3000 rpmを超えても伸びやかに回転。それは、旧来のディーゼル・エンジンでは味わえなかった爽快さ。

 

極低回転域でのトルクの細さは、今や 8 段となったオートマチック・トランスミッションで補うことができるようになった。DV6 よりも低回転域のパワフルさは衰えるが、クリーン化の最適解に出力を合わせ、足らないところは他で補う。結果、308シリーズはのきなみ、20 km/L を超える燃費を叩き出す。(JC08)

 

※性能曲線は monogress の独自研究資料です。

スペック

Peugeot DV5RC ディーゼルエンジン
排気量 1.5L
最高出力 130ps / 3750rpm
最大トルク 300Nm / 1750rpm
気筒数 直列4気筒
ボア x ストローク 75mm x 84.8mm
バランスシャフト 不使用
最大回転数 5,100rpm
インジェクター BOSCH(2000bar)
ターボチャージャー VGT方式
圧縮比 16.4
アドブルー 使用 10000 km
排ガス規制 Euro 6.2 クリア
重量 130 kg

欧州BOSCH製ハイプレシャーインジェクションを搭載した小排気量ディーゼルエンジンで、フォード社との共同開発とされている。

 

出力を回転数で補っているわけではないが、ディーゼルエンジンにおいて最大回転数5,100rpmはなかなか高い。ボルボV40 D4(最大4,500rpm)やBMW 320d(最大5,000rpm)と比べても、高回転の許容範囲が大きいことは嬉しい。

 

排気量が小さいメリットを活かし、バランスシャフトは使用しない。小排気量の軽さを活かし、回頭性を確保したまま高燃費エンジンで気ままに遊びに出かけられる。これが1.5Lディーゼルターボの魅力だろう。

 

エンジン・フィーリング・レポート

プジョーはプラットフォームの変更により、308 で言えば、約 150 kgの減量に成功。その軽快なフットワークに、実によく似合うディーゼルエンジンだ。

 

同じPSAグループ内のガソリンエンジンに比べても、素直に高回転まで回ってくれる。例えば、508などに搭載される 1.6リッター PureTech エンジンと同じように、音色よし扱いよしで魅力的なエンジンだ。

 

正直に言って、車内に居ればガソリン・エンジンと間違えてしまう。

 

本来、低回転域の大トルクでクルマをグイグイ前に出すディーゼルエンジンの性格に、クルマの楽しさを感じる、回転数が上がっていく楽しさを併せ持つ。 3000 rpm から上に回そうが、加速が衰えることはなく、クーンとノビノビ唄うのだ。

peugeot 308sw リア

搭載車種

モデル グレード
プジョー308 Allure BlueHDi

GTLine BlueHDi(2020年モデルまで)

GT BlueHDi(2021年モデルから)

プジョー308SW Allure BlueHDi

GTLine BlueHDi(2020年モデルまで)

GT BlueHDi(2021年モデルから)

プジョーRIFTER
シトロエンベルランゴ

モデル末期の308シリーズに力を吹き込み、カングー対抗のリフター・ベルランゴには新しい魅力を植え付けた。

 

2017年に発表された比較的あたらしいエンジンの為か、搭載車種は限られている。今後は1.6リッターBlueHDiを更新していくだろう。

 

このエンジン、本当に上手く音を抑え込んでおり、車外で効いてもディーゼル固有音は控えめだ。2000 rpmを超えたところで、このエンジンの本当の楽しみ方がわかってきた。

 

ガラガラ音を上手くスポーティに仕立てるディーゼルエンジンもあれば、DV5RCのようにひたすらスムーズなエンジンもある。ディーゼルエンジンは、まだまだ面白くなる。

 


プジョー308SWでドライブ と箱根乙女峠

【商品研究】プジョー 1.5L ディーゼルエンジン


2020 年 2 月 24 日 投稿

2020 年 5 月 6 日 更新

2021 年 2 月 7 日 更新