私の仕事をしている地域に、ボルボの認定中古車販売店「ボルボ・セレクト」がある。
ボルボV40、V60、前のモデルから人気のあったXC60が多く展示されていたが、最近9割5部がV40になっていた。ボルボの販売比率として、エントリーモデルであるV40が多いのは解らなくはないけれど、少し多すぎやしないだろうか?
そこで思い出したのは、ボルボ・カー・ジャパンの展開していたカー・リースプログラム「ブリッジ・スマボ」だ。
ボルボのスマボのスタートライン
納車遅れを上手く使う
「ブリッジ・スマボ」は、XC40やXC60の購入において、納車まで半年待ちという状態に対する、ボルボ側からの答えのひとつだ。
車検切れに合わせてクルマを乗り換える人は多い。古くなったクルマを車検で余計な出費をするのであれば、新車へ乗り換えようという考え方は必然で、私もほとんどは車検合わせでの乗り換えだ。
ここで、今回はボルボにしようと来店してみたら、お目当てのクルマは納車まで半年待ち。当然、半年間も代車を借りることもできない。なら、車検を通して新車を待たないといけないの?となってしまう。
そこでボルボが出した回答が、「車検代を諸費用として使って、格安のリース料で半年間、注文したクルマ以外で新車に乗りませんか?」これが「ブリッジ・スマボ」なのだ。
効果的だった「ブリッジ・スマボ」
リース | 価格 | 登録諸費用 | 月額 |
---|---|---|---|
ブリッジ スマボ | 299万円 | 25万円 | 2.9万円(1%) |
※ V40 T2 Kinetic で算出
ユーザーとしては、1年間で2回新車に乗ることができるという、車好きオーナーであればホクホクの条件になる。無論トータルでは安くはないのだけれど、世界的人気車種なのだから仕方もない。
登録諸費用と、毎月車両代の1%の支払いで、当面ボルボに乗っていられる。V40 T2 Kinetic を半年間乗った場合、おおよそ43万円。毎月にならすと約7万2千円となるのだが、ボルボはすでに高級車。気にしない人も多いだろう。
日本法人としても、半年待ちのクルマを受注しても、納車しなければお金をいただくことはできない。新車登録台数も増やせない。そこを切り抜けることのできる、なかなか良い手段に思えていたはずだった。
再販しにくいジレンマと解決方法の「セレクト・スマボ」
当然、ブリッジスマボのリース車両はディーラーへ返却される為、第二の人生を考えてあげなくてはならない。中古車として再販する?しかし使用料 1%で貸出していた車両だから、安値で再販することもできない。
これをどうするのかと思っていたら、「セレクト・スマボ」なるものに切り替わっていた。ブリッジスマボでの新車登録はここまでにして、2020年は”返却されたリース車両を再リース”する方向にしたようだ。
リース | 価格 | 登録諸費用 | 月額 |
---|---|---|---|
ブリッジ・スマボ | 299万円 | 25万円 | 2.9万円(1%) |
セレクト・スマボ | 220万円 | 18万円 | 2.8万円(1.3%) |
※ V40 T2 Kinetic で算出 登録諸費用は予測価格
今度は 1.3 % でのリースである。 0.3 %の差は小さくなく、新車登録のブリッジスマボの値落ち分、取り戻すことができる仕組みだ。299万円のクルマを、1%のときは毎月2.9万円。再販で280万円とはいかないけれど、220万円に値下げしたって、1.3%ならば相変わらず毎月2.9万円を請求できる。よく考えられたものだ・・・
車両代金全額を回収することは難しそうだ。車両の原価はわからないが、ディーラーは相当辛い気がしてならない。高価なモデルで回収するつもりだろうか。
来年はさらに、1.6%にするのかも。一部の車両は中古車ネットワークに流して「消化」も目論む。XC40だって、いつまでも半年待ちではないけれど、納期の度合いと消化の度合いを上手く管理すれば、変に在庫を持たずに運用できるだろう。
2020年6月の今、ボルボ・セレクトでの中古車台数 1766台、そのうちの V40 の台数 591台。そこから2019年以降登録という高年式車両が 309台。自社登録や「スマボ帰り」の V40達が並ぶ。
ボルボの屋台骨を支えてきたV40は、いまや金融商品のひとつと化してしまった。
そのクルマに愛情は注がれるか?
自分のモノにならない大前提
何か、寂しいと思ってしまうのは、私だけか?前の車がV40であるから、気にせずにはいられない。
そりゃ、ボルボ・カー・ジャパンだって企業であるから、お金を稼がないわけにはいかない。あらゆる手段を講じて、全国のフランチャイズ店にも稼がせないといけないのも、わかる。
それにしたって、半年しか乗らないとか、最終的に自分のモノにならないとわかっているリース車両に、どれだけ人は愛情を注ぐことができるだろうか。
毎月 750km の走行制限だとか、リース車両だからこそ丁寧に乗るという「大事にしてもらう」仕組みは整っている。けれども、クルマへの愛情って、そういうところではないよね。
自分の好きな人と、好きなところで、大事な時間を共有するのがマイ・カーなんだ。想い出に残らない付き合いなんて、寂しいじゃないか。
カー・リース事業は日本を理解できるかだ
これはボルボだけでなく、マイ・カー事業にリースを組み込もうとするディーラー全てに言えることだが。
海外では主流になりつつあるという、カーリース。どれだけのシェアを握ろうと考えているのだろうか。日本で浸透しない理由は、長い間自国の文化を大事にしてきた日本人だからこその、海外との考え方の違いだ。
そもそも、欧州ではクルマを企業が社員に充てがう文化がある。だから高価だけど燃費の良いディーゼルが売れたし、定期的に買い換えるのならリースにするのも頷ける。
我が国は違う。消費文化を良しとせす、モノを大事に長く使ってきた。
リース車両の再販に、ボルボも「新車の乗り継ぎ」に使うという手段に出ている。苦労している。昨年好調だった販売台数も、今年はコロナの影響にうまく隠れることになったが、中古車の再販にも力をいれなくてはならなくなる。
世界と日本の違いに気づけ
カー・リースと、モノを大事に思う心をもつ国民性との相容れぬ問題。確かに、カー・リースは一部のユーザーには浸透していくことだろうけど、その為には、”買うよりもお得である演出”が、もっともっと必要になってくる。
値引き販売でクルマを買い、長く使うのが日本人。
クルマに名前を付けてしまい、売るときに悲しくなるのが日本人。
値引きゼロ、カーリースの浸透を図るボルボの販売体制は、日本の購買体質に真っ向から歯向かい、必死に「お得」を演出する。
モノを大事に考えたいという心を否定するとき。そのメーカーは縮小を余儀なくされる。そんな勝手なことを、ボルボ・セレクトに見てしまった気がした、2020年6月だった。
後書き
手放した人間が何を言うか、と言われそうではありますが、ボルボのことは相変わらずよく見ています。11年も付き合ったんだもん、仕方ないじゃない?
さっぱりと別れられる性分なら、あんなにボルボをもてはやしたりネチネチしたりするブログ、書きません。
けれども、ディーラーも良くなったという話も聞きますし、ほんと、中古車の再販を頑張ってほしいです。高年式で大事に使われたボルボV40が欲しい方は、多分今はチャンスですよ!