テスラ新型小型車のバッテリーと国家思想の行方

自動車を取り巻く環境は、私達がドライブを楽しんでいる間にも変化している。こと、今は電気自動車への移行の時代。バッテリー覇権争いの終着点は見えないままだが、車好きとしては気にしていたい事実がある。

 

政治利用の場に「ほぼ」なってしまった北京オリンピック

国、思想、宗教。人の持つ集団的思想というのは、恐ろしい。

 

2022年北京オリンピックに先立ち、中国ロシアの蜜月アピールが報道された。世界第2位の経済力を持つ中国、領土拡大の野心が絶えないロシア。世界二台共産国家という大きな勢力は、今後も世界で牽制しあう火種になることは間違いなく、きな臭い、感覚的に嫌いだと思う人も多いだろう。

 

一方で、経済的な繋がりには国家の敵対を越えようという動きもある。自動車は様々な部品から構成されているが、日本産のものもあればドイツ産もあり、当然中国産だってある。半導体一つで世界の経済が止まる世の中、切り離したくても切り離せないことがあるのは、私たちは理解しなければならない。

 

そのような中、テスラの新型小型車にパナソニックのリチウムイオンバッテリーを使うという報道があった。いま、テスラに採用されているバッテリーはメーカーがバラバラだ(パナソニック・CATL・LG化学)。新型ではパナソニックバッテリーが返り咲くが、国産バッテリーの採用に、自動車大国日本の将来をどれほど期待して良いのだろうか。

 

MINI PHEVの電力不足表示
今後数年間は続く、エンジンと電動車の共存。プラグインハイブリッドも楽しい選択肢のひとつになる。

 

パナソニックは新型バッテリー「4680」をテスラに提供する

私が真っ先に知りたかったのは、パナソニックが高性能で低価格なバッテリーを開発できたのか、というところだった。新型小型車は テスラ model 3 よりも小さいと言われていて、価格帯は 30000ドルを下回るというから、日本で考えればカローラあたりが相手になる。家の近くのショッピングモールへの買い物から、旅行へも使われるなど用途の幅はとても広い価格帯の車が相手だ。

 

当然、世界のCセグメントカーはその性能にヤキモキするに違いない。フォルクスワーゲンならiD3(走行距離最大550km/価格450万円)、日本では日産がリーフ(走行距離 320km/価格  320万円〜450万円)でEV市場を牽引するが、それらの値付けは崩壊する可能性が高くなる。

 

この疑問に対して、パナソニックは報道の中で、「4680」と言われるバッテリーを開発し、2021年度中には工場の試作ラインを構築するとしている。バッテリー性能は、現在 テスラ model3 に搭載されている「2170」の5倍というから、容積あたりのエネルギー密度で2倍を達成したことになる。(4680は、直径46mm、高さ80mmという意味。)なかなかの性能アップだ。

 

高性能は日本製 低価格は中国製 構図はいつ崩れるか

手放しに喜べないのは、このバッテリーによるパナソニックの競争力だ。テスラとパナソニックは車載バッテリーの開発にパートナーシップ戦略をとってきたが、テスラの低価格化対応には中国産バッテリーを採用した。高価格帯から低価格帯へ移行していくEVだが、やはり価格勝負になってくると日本産の弱みが見える。性能を前面に押し出す時は日本産、価格帯を下げる時は中国産という構図は、大量生産時代に入る時には危ういと言わざるを得ない。

 

そして、テスラは今回の新型小型車にはパナソニックのバッテリーを使うということになるのだから、新車の開発でしっかりとした性能が欲しいという事なのだろう。メーカー選定の構図には変化は見えない。

 

しかし、この先はどうなるのだろうか?

 

中国ロシアの蜜月とウクライナ情勢を見た時に、いつまで中国産バッテリーを使うべきかは、各国自動車メーカーは悩ましいところだろう。私は欧州自動車メーカーが、中国からバッテリーを仕入れるなんてよくぞ言えるよなと思う時もある。我慢強いというか、そこまでしてでも中国市場に食い込んでいたいのだろうか。資本関係なんて解消して、経済圏から隔離してしまえば良いではないか。と、感情的に考えてしまうこともある。

 

もちろん、資本関係を結んでいるからこそ大きな戦争が起きずに済んでいるという見方もある。戦争が無いのなら、経済戦争でいいじゃない?と言いたいところだが、経済戦争でも困窮する人は出てくるし、ウイグルやウクライナなど見過ごせないことを平気でやってくる国々だ、いきなりバッテリーの輸出を辞める・・・なんて言いかねない。

 

米中摩擦の事情もあるから、日本製を使っておくのが無難・・・そう考えることもできそうだ。

Peugeot 2008 オレンジ色
メーカーによっては脱中国の動きもある。不確定な情報だが、プジョー e-2008 に搭載のバッテリーは欧州産、「Automotive Cells Company」とWEBには記載がある。

 

 

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力をつけるべき日本企業 後押しは消費者の行動も関わってくる

中国は、ロシアによるウクライナへの侵攻に容認している。日本は経済大国第三位の地位を使い発言力を発揮するべきだが、その為にはどの国にも負けない事業の強化が必要だ。テスラがパナソニック以外のバッテリーは使えないと言えるくらいの商品力を世に示すこと。日本にもう一社、大きく技術力のあるバッテリーメーカーも必要だ(ホンダーGSユアサ連合にも頑張ってほしい)。自動車産業を見渡した時、これは危機だし、日本の産業の力を取り戻すチャンスでもある。国際情勢と経済は、とても凝固につながっていると私は感じる。

 

それでも、資本関係の解消は難しいことだろう。お金のやり取りによる約束は、とても強固なものだからだ。今後、自動車の電動化が進んだ時には、グレードによりバッテリーメーカーが違うという事は当然のように起こるだろう。その時、どのグレードを選ぶか、というポイントがきっと生まれてくるはずだ。

 

つまり、自分が良いと思う国が作る部品が搭載されたグレードを選ぶということだ。人権侵害や領土拡大という危険思想は、当然国家運営だけの思想だと信じたいが、事実がある以上は仕方がない。消費でしか意思表示のできない我々でも、四捨選択で自分の意思を伝えることができるのだ。この事は充分に考えて、車を買うべきだと主張したい。

 

これは、monogress を書き始めた時にキーワードとしてあげた、「良い心を持つ人の作ったモノかどうかの見極め」のひとつである。

 

ところで、中国CATLのルーツは、TDKなんだね。パナソニックも中国にバッテリー工場を作っているし、世の中は複雑に絡み合っている。日本は産業の先行きを見定めて、本当に保護しなくてはならない事業を外に出さないようにしないとね。

 

参考文献

 

中ロ首脳会談 “NATOのさらなる拡大に反対” 共同声明を発表 NHK NewsWeb

パナソニックがテスラ向け大容量バッテリーを2023年に生産開始との報道 TECH Crunch