シビックという車は、本当に素晴らしい車である。同じ形のボディで、エンジン+CVT、エンジン+6MT、2モーターハイブリッド、さらにはチューン全開のTypeRまでラインナップ。今どき、世界を見渡しても、ここまでラインナップの充実している車は無いんじゃないですかね?
さて、そうなると気になるのが、同じ車種の別の車。自分の選択は合っていたのか、それとも…と、ついつい考えてしまうのは仕方のないこと。e:HEVを選んだ私だって、6MTは気になった!
そんなところで、ブログ仲間のUUさんがプリウスからシビックに乗り換えた!しかも、6MTのエンジン車を選んだというじゃありませんか。これは横に並べたいぞ、乗り比べたいぞ〜
赤コーナも青コーナーもシビック!身内のライバルの登場です!
ホンダ・シビックはクルマ好きに刺さるはず
その念願が叶い、雨がシトシト降る秋の野尻湖でプチオフを開催です。相変わらず2人揃って雨男ですが、HONDA CIVIC FL1とFL4、しっかり吟味して乗り比べしようじゃありませんか。
なお、UUさんの乗り比べ記事はこちらです。足回りの感じ方、参考になるぞぅ。
ワインディングでFLシビックを試乗、レベルの高さに改めて驚いた 2024.11.10公開 2024.11.18更新 約1…
FL型シビックを一言で表すなら、スポーティ・ファミリー・4ドアクーペ。ストイックな性能を TypeR 限定とすることで生まれた、扱いやすいパワーを剛性感高いボディで味わう魅力たっぷりのハッチバック。ステアリングやアクセル、ブレーキは、操作に対して極めて忠実。紙一枚の差さえも変えられるんじゃないかという組付け精度の高さが印象的。
さらには「セダン」という事を忘れない、広い視界が生み出す爽快さ、硬派でありつつノイズの少ない足回り、4人が余裕で座れるパッケージングと、やたらめったらにスポーツしない、公道前提でフィーリングを楽しむための車なのです。
この車を選ぶ人は、車のことをよく知っている人だろう。300万円〜400万円のベストバイは、明らかにシビックであると声高らかに叫びたい。
FL1 MTの爽快はやはりエンジン音
そんなシビックのうち、182ps/240Nm を発揮する1.5リッターターボエンジン車が、FL1と言われるモデルです。その小さくも強靭な心臓を、6MTで楽しむことのできる贅沢なクルマ。
ショートストロークのシフトレバーは身体にフィットする感覚で、左右にキコキコ移動させても遠くに感じず扱いやすい。軽くアクセルを叩いて、クラッチを緩やかに繋いでいくと、スッと身体が前に押される。MTはこの感覚が、やっぱり楽しい。
直結を耳と身体で感じたなら、アクセルに右足の力を込める。遠くに聞こえるビートのボリュームは若干残念ではあるものの、しっかりとホンダの魂を感じ取れる気持ちの良いサウンドは、車速の上昇で発生するロードノイズと混ざり合って、心地の良い爽快感を味わえた。
FL4 e:HEV は IKASAマチックに高性能
バーサス、184ps/315Nm を誇るH4型モーターで路面を蹴るのが、FL4。グレード名は e:HEV (マイナーチェンジ後は EX / LX もつく)だが、これはこれで素晴らしい。燃費が良いのにスポーツできるという、イカサマチックなクルマです。
MT専用と思われたシフトアップの感動を、リニアシフトコントロールで右足を深く踏み込むだけで味わえてしまうハイテクさ。バッテリーの重さを上手く使い、しっとりさをアドオンした乗り心地と、粘り感のあるリアの踏ん張り感も味わえる。価格通りの実力差を見せつける他、ライバルを蹴散らす実力の持ち主になったのだ。
この2台をワインディングで試すのである。なんとも幸せな時間じゃないか…!
シビック MT と e:HEV をワインディングで乗り比べ
姿勢制御は僅かな差
走り出してすぐに気づいたのは、FL1の落ち着きの良さだ。先に断っておくのだが、UUさんのFL1は2024年製造モデル、私のFL4は2023年製造モデル。どうやらシートクッションに差が出て悔しいのだが、それを差し引いてもFL1の落ち着きは予想外。
簡単に書くと、FL1はサスペンションで初期微動をキレイにしている印象だ。だいたいのクルマは重量が多いほうが乗り心地は良くなるので、ハイブリッドであるFL4が基本的には有利なのだが、ストロークの残りの量に応じる部分もありそうで、上手く路面のザラリをオブラートで隠している。
FL4はというと、そのあたりの対処はタイヤで行っているような印象でした。ミシュランタイヤでロードノイズとザラリをスッキリ取り除く。ちょっと大きめの路面からの入力があったとき、タイヤの突き上げ→着地→元に戻るの繰り返しの中、先にスッと姿勢を正すのはFL1で、ジワリとワンポイント置いてから姿勢を正すのがFL4だ。
カーブの取り扱いで差のつく両車
R10、R20の急カーブに、登り降りが混ざる野尻湖周辺ワインディング。ひとつひとつのカーブでの取り回しで、意外な性格の違いを感じとれた。ドライバーはこの違いでMTかハイブリッド(やCVT)を選ぶんじゃないか。
というのは、カーブを曲がる姿勢を作るとき、FL1のMTはアクセルオフだけでエンジンブレーキがかかり、前輪に荷重をかけていける。対してFL4 e:HEV は、基本的にはブレーキペダルで前輪に荷重をかけるのである。
目の前に迫る急カーブ、FL1 MTは少し低いギアをセレクトし、右足でエンジンの回転数をコントロールしながら車速を制御。カーブ手前でアクセルをジワッと離し、エンジンブレーキで姿勢を作る。そのままクルマの向きを変え、アクセルを踏み込んで速度を回復させるーーーうーん、操ってる感が素晴らしいね。
これら一連の動作を、アクセルペダル一本で作り出せるのが MT の楽しみであり、当然といえば当然なのだが、ハイブリッドとの違いが最大になる瞬間だった。
同じコースを FL4 は、パドルシフト型の減速セレクターを使用し、回生ブレーキで姿勢を作る。車速をじわりと落とす際は、ブレーキペダルでコントロールだ。クルマの向きを変え、アクセルに踏み変えて加速する。惰性とブレーキで制御するハイブリッドは直結感では叶わない。MTを経験すると、踏み替えが煩わしくなる時もある、が、無音加速の醍醐味がカーブ直後に待っている!
結局のところ一長一短
やっぱり、これは一長一短。目指している方向性はもちろん一緒なので、好みに応じて選べば良い。
FL4 e:HEVは、両手をステアリングから離さずに済む分、コーナーでの舵の微調整がやりやすい。絶対的なパワーもあるから、右足ドーンで急加速を楽しむことができる。そしてスポーツマインドを刺激する自然吸気エンジンの軽やかなサウンドと来たもんだ。簡単に楽しむなら、オススメはやっぱり e:HEV になるだろう。
FL1 MT は、シフトチェンジを繰り返し、クルマと対話しながら様々な道路を駆け抜ける楽しみが待っている。もう一度同じコースを、今度は 2速でなく3速で走り抜けてみようかな・・・そんな楽しみ方だってできるのだ。絶対的なパワーだって必要十分。2.4L自然吸気並のトルクを使い、より深みのある走りを堪能すれば良い。
気に入った道路が見つかれば、何杯だってオカワリできる。そこが MT の美味しいところだと思います。
やっぱりシビックは楽しいなあ
ついでにバッサリ褒めておきます(笑)
部品精度の高さを感じる両車だが、よりその感覚が高いのは、FL4のハイブリッド。アクセル・レスポンスの機敏さがそう感じさせるのだろうけれど、モーター走行のそれは右足に対してリニアなので、慣れるまでは急アクセルになりがち。慣れてしまえば、本当に見事に右足に追従してモーター出力をコントロールできる。
これは他のメーカーではEV以外では味わえない、特筆できる楽しさポイント。
対してFL1は、エンジンオンリーであるということ、MTのクラッチミートでどうしても緩やかなエリアがあることで、印象が「柔」になる。これはNGポイントではなく、意外とパッセンジャーにとっては良いんじゃないかな、と感じるポイントでした。ボディの硬さに比べてパワーが程よいのも、余裕を感じる大人びた印象も、FL1で強く感じた。
もちろん、ワインディングでは姿勢制御のレスポンスが高いし、実際 MT はアクセル操作だけでコーナーリングを駆け抜けることができるから、スポーティ走行もこなせる。両得感があることを付け加えておきましょう。
手前味噌な勝負の結果は
MTという乗り物は、私は実は苦手である。満足に練習もせずにMTを卒業し、水平対向+4ATという「エンジンの美味しさだけを堪能したい族」に転身後、直列5気筒やらディーゼルやらでウツツを抜かしてきた私にとって、MTの歴史は ZZT231 セリカにまで巻き戻らなくてはならない。
当時はホンダはVTECで楽しいレッドゾーンを提供していた。それに対し、セリカもまた可変バブルタイミングを用意したのだが、カムが切り替わってからは前輪の制御が思うようにいかず、クラッチを切るのもシフトチェンジするのも、その操作のたびに身体が揺れて、クルマも揺れる有り様だった。
つまりは、運転が下手だったのではあるのだが、当時よりも身体の衰えた現代において、クルマを安定して制御できるシビックFL1のMTパワートレインはなんと素晴らしいものだろうか。クルマの進化は汗水かいて楽しむ時代から、純粋にクルマの美味しいところだけを楽しむ時代に変わったのです。
しかし、美味しいところをかっさらいたいなら、FL4は大変有力なプロダクト。美味しいエンジン、美味しい燃費、美味しい乗り心地。絶品だけを味わおうとする贅沢を、e:HEV は持っている。
ごめんねテヘペロ、この2台は本当に悩ましい2台だが、まだ乗ってはいない RS を気にかけながらも、今この瞬間はオーナーであるという意味も込めて、僅差で FL4 の勝ちとしたいと思います!