ディーゼルエンジンの将来は閉ざされたのか

古くからmonogress、そして前のブログから読んでいてくださる方はご存知だろうが、私は結構頑固なまでにディーゼルエンジン信者だった。その事で敵を作った事もある(笑)確かに、ガソリンエンジンのほうが軽くて、振動も少なくて、回転数の伸びも良いし、ハイブリッドとの相性も良い。それに私は今、 e:HEV というホンダのハイブリッドに乗っているが、やはりディーゼルエンジンは応援したい。

 

私の主張はささやかなもの。さりとて口を閉ざすわけにはいかない。なぜなら、ディーゼルエンジンの未来にも、カーボンニュートラルは見えるのだから。

 

スポンサーリンク

ディーゼルエンジンは敵視された

ボルボV40 ディーゼルモデルとタンク
懐かしの愛車、VOLVO V40は、JC08モード燃費20km/L。高速道路での実燃費は、それを上回る事もあった。

 

世の中には、ディーゼルエンジンなんて時代遅れ、いずれ無くなる時が来るなどと言う人がいる、経営者がいる、政府がある。それは上記の理由の通りで、解らなくはないのだが、やはり時期早々だと感じてしまう。そもそも、ディーゼルエンジンはガソリンエンジンよりも熱効率を上げる為に産まれた技術だ。簡単に手放す方がもったいない。

 

ヨーロッパでは、脱ディーゼルが進行した。日本でも、ディーゼルエンジンの存在感は年々小さくなっている。世界を見渡せば、都市部に入れない、買えないなど制限が進み、メーカーでもディーゼルエンジンをラインナップから削減している。

 

エンジン屋といえば真っ先に思い出すBMWは、次期型3シリーズやX1、マツダにしても次期CX-5には、ディーゼルは搭載しないなんて噂があるほどだ。そして、日本政府も2050年カーボンニュートラル実現の名の下に、静かにディーゼルに別れを告げようとしている。悲しいことだ。

 

世界のディーゼルエンジン需要は増加傾向?

MAZDA 2 フロントマスク
ディーゼルエンジン+MTという稀有な組み合わせ、mazda 2。大きいトルクはエンスト知らず。実燃費は軽く30km/Lを超える。

 

だが、現実は単純ではない。日本国内に目を向ければ、マツダはSKYACTIVE Dが根強い人気を誇り、トヨタはランドクルーザーに、悪路走破性と燃費のバランスでディーゼルエンジンが選ばれる。

 

輸入車でも、Peugeot やBMW、メルセデスに至るまで、走りと燃費の両立を求める消費者のためにディーゼルはラインナップし続けているのだ。日本のガソリン税の二重課税に嫌気がさして、ささやかな主張としてディーゼルエンジンを選んでいるユーザーだっているかもしれない。

 

そしてもっと視野を広げれば、世界のディーゼルエンジン市場は2033年に3,100億ドル規模に膨れ上がるという予測もある。これは2023年比130%であるのだが、これが意味するのは、地域によってはEVよりもディーゼルエンジンのほうが適しているという、極めて現実的な選択肢の存在だ。

 

参考文献 IMARC Group

 

ディーゼルエンジンの環境負荷は低い

大自然とともにゆく Peugeot
こちらも懐かしの愛車、Peugeot 308SW。低振動、低騒音、そして5,000rpmを超えて回転する色っぽいエンジンが魅力の車。

 

そもそも、ディーゼルエンジンは既に環境負荷は低い。少し前、都心の空気よりもキレイな排ガスだと言われていたことを覚えているだろうか。SCRやDPF、高圧インジェクションなどによって、NOxもPMも極限にまで削減されている。空気清浄機よりも上だという主張だってあるのだ。

 

比較項目 ディーゼルエンジン ガソリンエンジン コメント補足
CO₂排出量 少なめ

(ガソリン比10~20%低い)

多め 燃焼効率の高さにより、ディーゼルはCO₂排出が少ない
NOₓ排出量 多い 少ない 高温・高圧燃焼のためNOₓが発生しやすい
PM(スス)排出 旧型は発生しやすい ほぼなし 高精度の噴射とDPFで削減可能だが完全ではない
燃費効率 非常に高い(ガソリン比20〜30%良い) 普通 低回転高トルクで燃費に優れる
騒音・振動 大きい 小さい 新世代ディーゼルでは改善されているが、ガソリンより劣る
始動時の排出 多い(特に冬期に濃い排気が出やすい) 少ない 暖機前の燃焼効率が低い
排ガス浄化技術 複雑(EGR, DPF, SCRなどが必要) 比較的シンプル(3元触媒が中心) ディーゼルは構造が複雑かつ高コスト
燃料の環境性 軽油は硫黄含有量が課題(低硫黄化進む) ガソリンは精製時の環境負荷がやや高い 両者とも改善進行中
エンジン寿命と廃棄 長寿命(商用車用途に多い) 短め 長寿命=環境負荷低減に貢献

 

そして、e-Fuelやバイオディーゼル、水素混焼などの技術の進化により、カーボンニュートラルを目指す道筋も明確になりつつある。技術の手を止めない限り、ディーゼルエンジンは過去の異物にはならないのである。

 

積み上げられる技術 水素混焼ディーゼルエンジン

PORSHCE 718 Boxster GTS エンジンフード
こちらはポルシェのエンジンフード。ディーゼルエンジンではないけれど、進化の象徴として掲示する。エンジンは感動を呼び起こすのだ。

 

さて、水素混焼は恥ずかしながら、最近知った技術である。自動車用としてはまだ先の技術となりそうだが、せっかくなので私の理解する範囲で説明をしておこう。

 

水素混焼ディーゼルエンジンとは、読んで字の如く、ディーゼルに水素を混ぜて燃焼させる技術である。燃料として混ぜるというよりは、吸気時に水素を混ぜ、軽油と共に燃焼させるのだが、これにより、二酸化炭素の排出を減らすことができるのだという。

 

一時期は、水素を燃料にしようという動きがあった。しかし、水素単体ではパワーが出ない。一方、ディーゼルエンジンはパワフルだが、二酸化炭素はどうしても発生する。そこで、二酸化炭素の排出量を少なくし、環境負荷を減らすために開発されたのが、水素混焼技術だ。

 

参考文献 TOKYO UPDATE 水素と軽油の混焼エンジンを搭載した、世界初の水素旅客船

参考文献 JStage 数値シミュレーションによる水素ディーゼル混焼エンジンの燃焼プロセスの分析

 

つまり、水素混焼ディーゼルエンジンは、完全に二酸化炭素排出ゼロでは無いものの、従来のディーゼルエンジンに比べてもクリーンな排出特性を得られると考えられている。内燃機関の未来を作る技術として、注目するべき技術だろう。

 

閉ざすことのできないディーゼルエンジンの未来

mazda CX-60 の直列6気筒エンブレム
日本では一人気を吐くマツダ。新開発縦置き用直列6気筒ディーゼルエンジンには敬意を表するそ。

 

コモンレール、水素混焼と、ディーゼルエンジンの進化は進んでいる。そして、長距離運送や建設機械など、ディーゼルエンジンが有利なものもある。自動車用とはかけ離れているという指摘があるかもしれないが、技術革新は電気自動車だけでなく、ディーゼルエンジンにも適用されるもの。いずれ搭載されるはず。

 

電気自動車を安く作ることは、とても大事なことだと思う。新しいパワーソースの出現は、車好きなら応援するべき。私は電気自動車もハイブリッドも否定しない。全ては車のひとつの要素。素晴らしいことじゃないか。

 

だから、ディーゼルエンジンだって必要で、悪者扱いも商売の目の敵も許せなかった。

 

mazda CX-60 きらめく全身

 

そもそも、ディーゼルエンジンが敵視されたのは、排出ガスのPMの存在だ。だが、さまざまな技術によって、可能性のあるエンジンになりつつある。低回転での大きなトルクは魅力だし、重いとは言っても電気自動車ほどではない。そもそも、重さは移動の最もたる敵である。

 

マツダCX-60のカタログを見ると、面白い。ディーゼルエンジン搭載車の車重は、4WDで1,870kg、一方、PHEVは2,080kgだ。WLTCモード燃費は、ディーゼルエンジンモデルが勝る。マツダがディーゼルエンジンに力を注ぐわけである。(もちろん、マツダが売りたいのは、さらに燃費の良いディーゼルハイブリッドだろう)

 

ディーゼルNoを大々的に言った人達は、今も同じ考えなのだろうか。世界は広く、深い。目の前の商売の事だけを考えるのではなく、様々な視点から、物事を考えるべきだったはず。

 

VOLVO V40 大町にて

 

青空を守るために血眼になる技術者がいる。その手段を持って、生活する人がいる。助かる命がある。繋がる幸せがある。移動は世界の根幹だ。技術車に敬意を表し、動力の選択肢を、いつまでも沢山持つべきなんだ。

 

多様なパワーソースが共存し、選択ができる車社会へ。それが、真に持続可能な未来なのだと、私は強く叫びたい。