【i-Cockpitの本質】操縦の違和感はドライビング・ポジションにあり

Peugeot i-Cockpit はジャーナリストにウケが悪い・・・自動車紙を読んでいると、そんな気分になってくる。試乗記を読めば「違和感を覚える」だとか「私は慣れなかった」とか書いてあって。

 

文句ばっかり言っていないで、どのあたりが違和感なのか、どうして慣れなかったのか言ってみて!って思ってしまう。そこがジャーナリストの仕事でしょう?と言いたくなる。欧州ではプジョー・シトロエングループで販売台数2位を確保し、日本でも成長株なプジョーを捕まえておいて、いつまでも違和感なんて言ってられないのではなかろうか。

 

ところが、私も「違和感」を感じることがあった。Peugeot SUV 2008 に乗ったときのことだった。

 

peugeot 2008 GTLine サイドビュー
Peugeot SUV 2008 は、全高 1550 mm のコンパクトSUV。思えば、このジャンルのクルマに乗ること自体が初めてだった。もう少しドライビング・ポジションにこだわらなくてはいけないね。

 

クルマの点検がてらに試乗を申し込んだ、Peugeot SUV e-2008。適度な車高で乗り降りがしやすくて、街乗りカーには最適!なんて思いながら、コックピットの位置決めをする。

 

試乗車のステアリングは、いつもどおり高い位置に調整されていた。プジョーの試乗車に乗るときに感じることが多い、この感覚。私は身長 170cm で、さほど小さくもなく、大きくもない体格だけど、試乗車で感じるこの独特の感覚は、たぶん i-Cockpit の調整がうまくできなかったのだろうな、と勝手に思っていた。

 

i-Cockpit の姿勢の決定は、①椅子の位置を決める ②ステアリングをお腹の位置まで下げる ③メーターの視認性を確保する の三段階で調整する。初心者さん(笑)は、②ができない。だから、③もできない。これができない・・・すなわち、ステアリングの位置が一般車のように胸の位置にあると、メーターも見づらくなって違和感が出てしまうのだ。

 

Peugeot 208 3D i-Cockpit
Peugeot 208 の 3D i-Cockpitのメーター。プジョーでは、「ヘッドアップ・インストルメントパネル」と呼ぶ。このディスプレイがしっかり見えることが、プジョーでの正しいドライビング・ポジション生成の第一歩だ。

 

ところが、Peugeot SUV e-2008 では、この調整がうまくできない。せっかく借りた電気自動車だし、運転しながら調整すれば良いやと思いながら出発したが、終始違和感を拭うことができなかった。

 

SUV なら、Peugeot SUV 3008 にも乗ったことがあるし、その時は違和感も感じなかった。なのに 2008 はなぜか、しっくりこなかった。その後何度か愛車を乗り降りするうちに、もうひとつ、調整しなければならなかったことがあることに気づいたのだ。

 

それは、「背もたれの角度」だ。

 

私は結構、感覚的に垂直なのではないか、と思えるくらいに背もたれを起こす。TOYOTA CELICA に乗ったときからの癖なのだが、私にとっての適正なドライビング・ポジションをとると、着座位置は低め・足は適正・背もたれは起こす・ステアリングは手前に名一杯に引く、となる。他の人より少しだけ腕が短いらしく(そのぶん足が長いわけでもない・・・涙)CELICAのときは、足は結構伸ばし気味にしていた。

 

そこから、 足の位置の適正化・・・教習所で教わるよりも少しだけゆるく座る・・・を経て、身体を起こし気味で座るようになったのだ。

 

Peugeot 308SW Cockpit Photo
座面と背もたれの角度が、おおよそ90度付近に見える私のシート調整。皆様はいかがだろうか?

 

この着座位置で適正化された愛車 Peugeot 308SW は、まるで飛行機で空を飛ぶような感覚で運転ができる。ステアリングについているものは、前輪ではなくて羽根であり、身体を傾けるような感覚でステアリングを動かすと、そのとおり 308 は曲がってくれる。

 

ステアリングの向きが、タイヤの方を向いていないのがキーだと感じる。自動車ジャーナリストの皆様は、毎日様々なクルマに乗るだろうから、どうしても「ステアリングに前輪がついていない感覚」が気持ちが悪いのではないだろうか。

 

そして、背もたれの角度を曖昧にしてしまった私の Peugeot SUV e-2008 の試乗では、前輪を動かす感覚の一般車と、空を飛ぶように走る i-Cockpit 車の曖昧な感覚だけが伝わってきてしまったのだ。うん、きっとそうに違いない!

 

Peugeot 3008 i-Cockpitでドライブを愉しむ
Peugeot 3008 を愉しむ筆者。大柄なボディながら、意のままにコントロールできるのがプジョーの良いところ。崩れた姿勢からの復帰の動きは、高いドライビング・ポジションだからこそ感じ取れる。

 

ということでオサライ。

 

プジョー車に試乗するとき、購入したときは、以下のポイントをしっかりおさえて、ドライビング・ポジションを調整しましょう。でなければ、スペックは一般的なのにスポーティに乗っている感覚になれる、プジョー車の美味しい感覚を得られない。

 

  1. 膝の角度を適正化し着座位置を調整する
  2. シートの背もたれを調整する
  3. ステアリングをお腹の位置まで下げる
  4. メーターの視認性を確認する

 

・・・普通のクルマと同じことを言ってしまいましたね(^^;)

 

①〜④までを行って違和感がある、またはメーターが見づらい場合。たぶん、メーター(インストルメントパネル!)がステアリングの上部と重なってしまうコトが多いだろうから、背もたれを起こすか、ステアリングの位置をもっと下げるかの調整をしてほしい。特に③は、初めてプジョーに試乗する人ができないことの一つだ。

 

快適で楽しいプジョーライフを満喫するためにも、試乗のときには「しっくり来るコックピットの調整」をじっくり試しておこう。

 

Peugeot 508 i-Cockpit
Peugeot 508 の i-Cockpit。308よりも着座位置は低めになるが、ドライビング・ポジションは変わらない。シフトレバーの位置が高くなって、操作しやすいのは 508 の美点。

 

思い出してみれば、プジョーに最初に試乗したとき、ステアリングをグングン下げて収まった時の感覚は不思議だった。そして小径ステアリングだとは言うものの、どうしてそのままクルマの乗り降りができるのだろう、太ももがステアリングに当たらない不思議さを感じていた。

 

でも、この不思議さの魅力は実はどうってことなくて、走り出して操舵したときの応答性の良さ、一体感に感動した。i-Cockpit 付きプジョー車に乗る人は、みんなそう感じたんじゃないですか?

 

他人にプジョーを勧めるときは、i-Cockpit とドライビング・ポジションのギミックを理解して試乗するようにしたいですね(^^)