先日、Peugeot 208 の試乗をしてまいりましたが、なにせ気に入ったのはシート。
クルマのシートにはちょっとウルサイ(笑)私ですが、Peugeot 208 のシートはサイズ感が日本人にジャストフィット。輸入車ならではの大柄シートが欲しい人には少し残念だけれども、身体にジャストフィットするシートもいいじゃないですか!
それにしても、Peugeot は何故こんなに良いシートを作ることができたのでしょうか? monogress 的見解をお話します。
Peugeot フロントシートミステリー
素敵なシートは色々な角度から
御存知の通り、私は VOLVO V50 から V40、そして Peugeot 308SW と乗り継ぎました。Peugeot 308SW と VOLVO V40 とのシートの勝負は、はっきり言えば VOLVO V40 に軍配があがります。これはどちらも私の愛車であるし、こんなことでウソはつきません。
VOLVO のシートは、身体を包み込むような感覚を抱く。たまごの殻に入り込むような気持ちよさは、他の自動車メーカーでは体験できないものだと思ってました。Peugeot 308 のシートは良いけれど、ここはルックスやオシャレさとの引き換えだと割り切った覚えもあったのです。
それでも Peugeot を許せたのは、308 GT Line に試乗したときの「ふっかり」した乗り味がたまらなかったから。サスペンションの動きとシートの柔らかさのバランスが良く、VOLVO のそれとは違った乗り味がとても快適と思えたからです。
ちょっと残念だったのは、 Peugeot 308SW の TECH PACK EDITION はスポーツシートになるため、少々シートが固めになること。けれどもそれは、おしゃれなステッチで帳消しに(笑)とくかく、同じ C セグメントカーとして VOLVO V40 も Peugeot 308 も同じような満足感を得ることができ、とても幸せなカーライフを続けています。
ところで Peugeot は、VOLVO を含め欧州ドイツ・北欧カーにくらべれば、輸入車としては安めの価格設定。ここに、シートが優秀になったひとつのポイントがあったのだと私は考えます。
VOLVO V40 Momentum の T-TEC テキスタイルシート
V60 Momentum の 本皮シート(レザーパッケージ)
Peugeot 308 GTLine のコンビネーションシート
Peugeot 308 TECH PACK EDITION の 専用スポーツシート
お金のかけ方の上手さが決め手?
Peugeot の新世代シートは、Peugeot 3008 から始まっています。その後 Peugeot 508 にも同様の形のシートを導入。なかなか乗り心地の良いシートで、しかももともと凝ったデザインだったから、使い回しをしてもOK。i-Cockpit とセットで身体を支えるシート側は、モデルごとの微調整だけでほとんどデザインを変えずに搭載できたのではないだろうか。
すると、シート自体の開発費を下げることが出来ます。車ごとにデザインしないなんて不精者、とは言ってはいけません。良いシートデザインを開発したのなら、それを使い回すことは正義だと考えたほうが良いのです。
今の Peugeot のシートは、立体造形+カラフルステッチ。この小技感が光り輝き、同じような形状のシートでも、別のものに見えてしまう・・・お金をかけずに最大限に別物にする技術、これをつまり「オシャレ感」と一言で片付けてしまうのは、少々もったいないけれど。シートのデザインはかなりの部分で、お金をかけずに済んでいることでしょう。
Peugeot 3008 コンビネーションシート
Peugeot 5008 コンビネーションシート
Peugeot 508 本革シート
いいえ、決して Peugeot が手を抜いているとは言っていません。統一されたデザイン言語の中で、最高のモノをつくるルーティーンが確立している。「感動」を呼び起こすインテリア、i-Cockpit。そこへ合わせられるシートデザインは、ひとつの完成形を見たと言える。
この事は、「Peugeot 208 のすべて」の中で、プロジェクトデザイン統括責任者 ヤン・ブレル氏も言っていること。プジョーらしさを一言で表すと、それは「感動」なのだと言う。
そして、シート外側がしっかりデザインされているのであれば、そこは少し放置して中身に少し力を入れちゃおう・・・的なノリなのか。Peugeot 508 はランボルギーニと同じシート骨格を採用。3008/5008 から 508 と、シートの開発につぎ込んだ「お金」はしっかりと、技術的にもフィードバックを受けることができたに違いありません。
その「デザイン使いまわしパワー」を何に使おうかというと。
「下剋上」というわけです。
Peugeot 208 GTLine コンビネーションシート
フォルシアの存在
Peugeot 208 のシートは、はっきり言って世界のBセグメント開発者達を驚かせたに違いありません。
なにせ、Peugeot 308 よりも乗り心地のいい、つまり、C セグメントを喰ってしまう実力を持って生まれてきたから。比べるべきは、高級 B セグメントや C セグメント。数値で表せば、2.5 という感じの車格を手に入れてしまいました。
さらにシートの事を調べていくと、面白いことに気づきます。
Peugeot のシートの開発は、主に「フォルシア」が行っています。世界の自動車会社を相手にして、フォルシアは自動車用シートを供給しているのです。その大株主は、Peugeot 。つまりこれは何かと言うと・・・
各メーカーからの要求に、フォルシアが応えれば応えるほど、フォルシアの技術力は上がっていき、シート開発にフィードバックされていく。で、あるならば。Peugeot が B セグメントで一番良いシートを作れと命じれば、少なくともフォルシアのつくるシートの中で最大級に良い B セグメント用シートができるというスンポウです。
シートには下剋上効果があります。少し昔、トヨタ VS ホンダ 対戦が行われていた頃。ホンダは打倒トヨタの為に「フィット」という刺客を市場に送り込みます。このコンパクトカーに取り付けられたシートは、上級の「オデッセイ」と同じ骨格のシートでした。
結果、フィットはトヨタ・ヴィッツばかりでなく、カローラさえも喰ってしまうクルマへ成長。どこの自動車メーカーとも組まない、一匹狼を貫くための原動力となったのでした。(かなり昔の記憶ですので、引用できる資料が無いのが残念です。。。)
シートへのパワーは世界をひらくかも
例えば、少数精鋭メーカーであるのなら、シートに力を入れることは勝ちの図式に近づくひとつの方法であると言えるでしょう。
VOLVO は年間販売台数で 100 万台に満たないメーカーだけれども、腰痛を和らげるシートとして評判に。シートにお金をかけた VOLVO は、プレミアムへの道が見え始めています。(プレミアムにならなくても、いいのだけれどね・・・)
Peugeot は、PSAとしては 300 万台を販売する自動車メーカーグループの柱。Citroen にライトなユーザーを担当させて、ならば Peugeot は?少し上を目指すようです。その伝説が、少なくとも日本では、Peugeot 208 から始まるような気がしてなりません。
Peugeot が国内販売 2 万台の決め手になるクルマ。Peugeot 3008 でベースをつくり、Peugeot 208 で上乗せして、締めは Peugeot 308 かなあ・・・そんな未来が、見えるような気がしますね(^^)
あとがき
ということで、プジョーのシートのお話でした。
Peugeot 308 は座面の長さがあって、座りにくいと感じる人も多いようです。家内も座りにくいとの事で、腰のあたりに「あんこ」を入れて調整しています。すると、サイドのサポートがあまくなってもったいないとも、言っています。
Peugeot 208 は、このあたりが解消された良いシートになってました。ほんと、シート移植したいわぁ?オレンジと青のステッチは捨てがたいけれどね(^^)