「こういうのは、女性誌ではくすみカラーっていうのよね。」と、プジョー・ライオン・エクスペリエンス2021についてきた家内はいう。新型 Peugeot 308 のグリーンを指した感想だった。私たち夫婦の意見は「素敵」で一致。色の付いたクルマは、やっぱり良いもの。
パールホワイトの308SWを持つ人間の言うことでは無いかもしれない。けれども、良いものは良いのです。悔しいだとか欲しいを通り越して、新型Peugeot308のエクステリアの出来の良さには感服する。
このクルマを、「エモーショナルでスポーティでカッコいい」と言うのは、単純すぎて失礼である。すき焼きに美味いと一言で終わらせるのと同じである。いい卵を使っているね、などと表面だけを見て褒めるのと同じである。確かにカッコいいのだがそれだけで終わらない奥ゆかしさ。言葉で表すにはなんと難しいクルマだろうか。
写真よりも本物が良い新型Peugeot308
色々ゴタゴタ褒めたいところではあるのだが、まずは私が撮ってきた新型 Peugeot 308 を見ていただきます。いつもの勝手論は後回し。実車を見なければイメージ湧きませんからね(^^)。
フロント〜全体像
Peugeot 308 2022 欧州仕様車。よりワイドに、より大きくなったボンネットが印象的。グリルの大型化は写真で見ると大げさだが、バックミラー越しに見た時はかっこよく写るだろう。ヘッドライトからサイドに回り込むように伸びるキャラクターラインは影が濃いめに見えるけど、これは映り込みなだけ。実車では気にならない。
ディーラーで撮影の一枚。水も滴るいいクルマ。ただし、洗車には大変な思いをすることだろう。
サイドのメリハリをリアから眺める
Peugeot 308 2022 サイドの造形はクルマの性格を表している。つまり、フロントとリアから互いに伸びるキャラクターラインは中央で消滅しかかる。508 ほどに緊張感のない、クリーンとアグレッシブのギリギリを保とうとしているように見える。
プジョー・リアのキャラクター性と男前のハッチデザイン
208と共通のリアドアの形状はプジョーのアイコンする意図があるのだろう。新型をデザインする際に譲らないと決めたと見える。エッジの効かないウインドウは部分的に切り出すと浮いて見えるが、実際にはルーフラインに合わせていて馴染んでいる。一方、斬新なリアデザインは男前。フロントと合わせて好みの分かれるところだが、世界一スタイリッシュなCセグメントカーと言えば納得がいく。
リアからの一枚。直線と曲線を上手に組み合わせ、彫刻のような造形美。リアシートは少し狭いが、このリアデザインが得られるのなら買いかもしれない。
バランスの取れたサイドビュー
思っていたよりも沢山の人に注目を浴びる新型308。電動化によりバッテリーを積載するため、SUVのラインナップ強化に走るメーカーが多い中、ハッチバックでパッケージを組んだことは称賛。自宅の駐車場に一台飾って、もう一台買って走り回りたくなる造形美。
新型Peugeot308は、期待を通り越した出来である。T9の栄光をしっかりと引き継ぎ、プレミアム感に近づけるために気を使ったテイストに仕上げている。FFプラットフォームのジレンマであるフロントホイールは前面に出ているように見せようと、大きめのライオン・エンブレムを配置した。
会場に居て、女性の積極的に見たいという声がよく聞こえた。リアが短いことへの精神的な楽さ(実際、ハッチバックでのバック駐車はとても快適)もあるだろうが、男性が思っているほど女性はファニー好きではない。ジープの好きな女性は多いし、全体像で感性に訴えるクルマは通じやすいものがあるんじゃないかな。
新型プジョー308のエクステリアを吟味する
508との棲み分けは絶妙!プレミアム感のほどよさは健在だ
そして、私がひと目見て唸ったのは、びっくりするほどエモーショナルではないところ。Peugeot 308 はCセグメントど真ん中のファミリーカーで、エグければ良いというものではない。そのテイストは Peugeot 508 に任せておけばよいのであって、308 には 308 の仕事がある。
Peugeot 308 はエグくあってはならなくって、もちろん適度に抑揚のあるスタイリッシュなデザインは必要ではあるものの、拘りすぎない美学の必要なクルマである。空気力学をわかりやすく表現したり、大ぶりのシートでゆったり座れるパッセンジャーシートを用意したりという金持ち主張は不要なクルマ。
プジョーは各車種にテーマがあって、車種ごとのヒエラルキーの薄いメーカーだ。Peugeot 308 が欲しい人が、将来は Peugeot 508 にしよう、とはなかなかならない。手頃なサイズ感と適度な主張・高級感、それに安定した若々しさを欲するクルマ。どちらかと言えばクリーンでエコロジーな感覚を覚える方向性。立髪バリバリの雄ライオンとは思わない。実車を見ると主張は大きいとは感じない。
ロー・ワイド・アグレッシブは Peugeot 508 の目指す方向性。Peugeot 308 はあくまで万能を目指すクルマ。世界の標準を目指すクルマ。使いやすさを犠牲にせず、合理的な範囲内でデザインにしっかり気を配るクルマだ。
少しエッジを効かせて派手さを増したその理由は、今までの Peugeot 308 ユーザーの満足度を上げつつも、Peugeot 508 では少しエグいと感じる人たちを取り込みたい。そんな狙いを感じずにはいられない。
大きくなったボンネットは賛否がわかれるか
ところで、新型Peugeot308は残念ながら、ミニマムボンネットではなくなってしまった。T7型は流れるような流線型、T9型はクルマらしいボンネットを主張しつつ、あくまでスペース効率を可視化した実用感のあるテイストだった。
新型308はボリュームアップし、エンジン縦置きかのようなボンネットを手に入れた。これを残念と思う人もいるかもしれない。
大きな決断だったはずだ。
プジョーが今推進するのは、同じボディで電動車とエンジン車とを共存させる「パワー・オブ・チョイス」である。全く違う2つのクルマを、同じボディで架装するのと同意である。これを実現する為に、クルマのサイズは大きくする必要が出てくるのだ。
例えば、Peugeot 308 を電気自動車にするのなら、PHEV仕様よりも多くのバッテリーを搭載する。すると、ボディは強く、車重はドンと重くなる。そこに衝突安全性を先代同様に確保しなくてはならないとすれば、クラッシャブルゾーンとしてボンネットを広げる他にない。
今までの 308 ユーザーは少し悲しいかもしれないけれど、理由を考えれば仕方のないこと。それよりも、このボディ、このセグメントで電気自動車を数年以内にお披露目してくれる可能性があるということに、喜びを感じたほうがきっと楽しいに違いない。
プジョーの攻めたいところが見えてきた?
私は Peugeot 308 を購入して以来、新型 Peugeot 208 / 2008 をじっくり観察し、Peugeot 508 を何度も貸してもらい、さらに今回の新型 Peugeot 308 を見たことで、プジョーのひとつの目標が見えてきた。
それは、各クルマが各セグメントを半歩出るというところ。Peugeot 208 がCセグイーターに成らなくてはいけなかった理由は、Peugeot 308 がDセグイーターになるからだ。
それでも、Peugeot 508 までは届かない。届かせない。そんな考えがよく伝わってくるのである。この話は、次回にとっておこうと思います。
来年も来たくなるライオン・エクスペリエンス
簡単なアンケートに答えた結果は、ボールペンでした。個人情報かなり安価(笑)まあ、こんな催しを開催してくれるのだから逆に感謝か。今度は神奈川県で開催してほしいかもね。
それにしても、オリンピック期間中で首都高が値上げしていることもあってか、都内の道路は大混雑だった!
でも、プジョーに乗っているとご機嫌だ。クイックな操作は小さなステアリングでも簡単に済んでしまうし、先の見通しが良くなれば独特の直進性能で安心して巡航可能。東京なんてチョチョイのチョイだ。本当に面白いクルマに巡り会えたと相変わらずホクホクしている。
プジョー乗り。幸せな奴らだぜ、まったく(笑)