ボルボは北欧の自動車メーカーであり、世界中にある自動車会社と比べても特色ある自動車づくりが目を引く会社です。
1年間の販売台数はわずか60万台。これを数年のうちに100万台にしたいというのが、ボルボの希望であり目標。
他の自動車会社よりも、より良い自動車を開発する。選びやすくする。買いやすくする。満足してもらう。どの自動車会社も基本的に考える事を、ボルボも行なっている。
わかりやすいモデルの系列化、価格の整理、魅力的なグレードセッティング。消費者に車を選んでもらうために、様々な販売計画をたてる。自動車メーカーそれぞれのこだわりは、自動車の性格として醸し出されるから自動車は面白い。
VOLVO モメンタムのススメ
シンプルなグレード設定
ところがボルボは少しこだわりが強いようだ。
車種が少ないのは小規模自動車会社だから致し方ないのだが、グレードセッティングが面白い。全てのモデルで、同じグレード名を使うのです。最小モデルであり唯一のハッチバックであるV40も、7人乗りの大型SUVも、グレード名は統一しています。
基本的には、Momentum、Inscription、R-Designの3つ。クロスカントリーにはSummumやProもあるが、基本は先の3つに集約されます。
なぜこのような事になるかと言えば、選びやすさを追求した結果のよう。どのモデルでも充実装備グレードのMomentum、豪華装備グレードのInscription、走りの装備R-Designとすることで、ボルボの購入を検討している人にわかりやすい車選びを提供できている。
そもそも物事を割り切る事は、アメリカ人の方が得意そうである。様々な人種が行き交うアメリカでは、グレードやオプションの設定で迷うようなことがあれば、民族的な論理の違いで『いちゃもん』が付けられるに違いありません。(偏見)
選べる要素をより簡単にすることで、無用な交渉をせずにお客様の選んだご注文を賜ることができるわけです。だがボルボのそれは、中国資本に移った後からなのが面白い。
また、グレードをシンプルにすると言う事は、おおよそ日本人の感覚で言えば、自動車購入の楽しみをスポイルされる気分かも。他の人とは少し違う機能もほしいし、メリットを感じない機能は買いたくない、この葛藤が自動車購入の醍醐味である・・・少なくとも何割かは、そうである。
ボルボはそのような消費者の目線は無視しているかのように見える。満腹満足なInscription、走行性能アップの装備がついたR-Designは、ドライバーの趣向を捉えたように見えて、実際にはパッケージ化されたものしか選択ができない。
ならば、Momentumはどうなのか。
40シリーズ Momentumは立ち位置が独特だ
「Momentum」は、ざっくり簡単に言ってしまえば(先ににも言ったが)充実装備モデルです。
人が不満を覚えるような装備の少なさではない、けれども、Inscriptionのように豪華に、きらびやかに多くの装備を付けているわけでもない。ただ自動車ライフを楽しむ上で、これで十分だなと思わせる装備体系を見せている。
しかしボルボは、Momentumにはモデル毎に、少し違ったメッセージを入れているように思います。例えば、40シリーズや60シリーズでは『カジュアル』がそれ。
T-TEC/テキスタイルコンビネーションシートはMomentum専用品
VOLVO V40 / VOLVO XC40 のカジュアルは明白です。
専用装備である『T-TEC/テキスタイルコンビネーション』シートは、本革に無い魅力がある。
ベースはファブリックでありながら、所々に革素材をあしらったそのシートは、見た目が若々しくて好感を持てます。
人間は春夏秋冬さまざまに自分を着飾るコーディネート、つまりファッションを楽しむ。時にはジーンズだって履きたい。昔はジーンズを乗って輸入車のディーラーに行ってはならないなんて話があった。ジーンズは本革シートとの相性が悪かったらしい。
そのようにファッションによって車に乗れないなんて、悲しいではないか。客人を迎えに行くときに、ジーンズなんて履かないでなんて言いたくないし、では言わなかったとしてやはり、本革シートにジーンズで乗られると嫌だな、なんて思うかもしれない。(今のシートは大丈夫かもしれないが。。。)
しかしMomentumのシートは基本ファブリック。そのような寂しい想いをしなくて済むのですね。
ファッションはオールマイティに合わせられる
更に言えば、どのようなファッションにも似合うのは、本皮シートよりもT-TEC/テキスタイルのシートでしょう。
本革シートの車から降りてきた人がカジュアルな服を着ていると、ちぐはぐな感覚を拭い去ることができない。やはり本革に合わせた格好でファッションを決めるべき。
ところがT-TEC/テキスタイルのファブリックシートは基本的にオシャレなので、カジュアルな服はもちろん、スーツやドレスを着ていても様になる。
極め付けは「シティーウィーブ」と言われる白系内装専用のT-TEC/テキスタイルのシート。濃い色の柄の入ったシートは、このシートが欲しいからMomentumにするのだと言う人もいるほど人気です。
XC40 ホワイトルーフカラーはMomentum専用品
XC40は、更に上を行くカジュアルを楽しむことができます。
『アイスホワイト・パッケージ』というオプションをつけることで、車体上部のボディカラーを「ホワイトルーフ」にすることができる・・・!
このオプションのおかげでInscriptionよりも主張が効くようになったMomentum。ボルボの美しい造形美と相まって、例えボディ半分がホワイトだったとしてもフォーマルまでこなすことができる、これは他の輸入車メーカーには無い強みである。
選ぶ意味が増えるSPA用 Momentum
では60シリーズのMomentumはどうだろう。
シートは40シリーズと同様で、気持がよくてデザインもいい、T-TEC/テキスタイルコンビネーションシートが奢られている。日本法人は基本的にはレザーパッケージを勧めてくるだろうが、カジュアルで触り心地のいいシートは拘っていいポイントです。
もちろん、レザーパッケージをつけて本革シートを楽しむのもアリ。
・・・するとファブリックがいいのかレザーパッケージで本革を選んだ方がいいのか、何を言っているんだ!となるかもしれない。しかしそれでよいのです。V60 Momentumの本質はそこではない。
どうやら、V60 Momentumは相当に『乗り心地』が良いようなのだ。
乗り心地が良いと噂のV60 Momentum
サスペンションの設定なのか、はたまたタイヤサイズの違いなのか、銘柄なのかははっきりしないが、V60の乗り心地はInscriptionよりも良いという話をよく聞く。
Inscriptionよりも乗り心地が良い?もし、それが本当であれば。
最高に質実剛健なモデルと言えるのでは無いだろうか。
素性の良いボディに対して、本革シートもHarman & Kardon 高級オーディオも(初期モデルは Bowers & Wilkinsも!)、オプションとしてしっかりと着けることができる。シートヒーターや助手席8ウェイパワーシート、各種サポートシートは諦めなくてはならないが、ボルボのシートでは些細なこと。
さらに言えば、Momentumの内装装備にも専用品が用意されています。ダッシュボードに張り巡らされるアイアンオレ・アルミニウムパネルはV60を「ウッド調」から解き放ち、カジュアル、スポーティ、シンプルという現代的なイメージを車にあたえることに成功しているのですね。
選択を楽しめるMomentum
同じ事は90シリーズのMomentumでも言えます。
90シリーズのMomentumでは、残念ながらT-TEC/テキスタイルコンビネーションシートは選べない。本革シートが標準。
けれども、むしろMomentumとInscriptionの差額90万円に、何の意味があるのかと疑問に思う。細かい電子デバイス、デュアルテールパイプの有無、アルミホイールの有無、サウンドシステムの差でしかない。
その上サウンドシステムのグレードアップも、アクティブパフォーマンスシャシーもしっかりとオプションで付けられる。
不要な装備をそぎ落とし、ほしい装備を付けられる。Momentumというグレードにボルボが考えるシンプルな自動車選びの楽しみ方が、しっかりと詰まっているのだと感心する。
Momentumの立ち位置
いや、Momentum + 追加装備 vs Inscriptionと捉えるべきなのでしょう。
若干の装備追加の要望こそあるが、MomentumをInscriptionの安いバージョンとしないのはボルボの戦略です。
Momentum には Momentum の、良いところがしっかりある。
そこをわかっているから、MomentumのユーザーはInscriptionに劣等感を感じる事なく、ボルボライフを楽しむことができるのだ。
皆さんも安心してMomentumを選んでほしい。
あとがき
2019年に書いた記事を、若干手直ししての公開となりました。ボルボ V40 のシルエットが懐かしい。
海外サイトを見る方は、実は日本のボルボはオプションが沢山ついていたことはご存知でしょう。沢山あるオプションを、一定のパッケージに整えて販売する。この価格帯のクルマであれば、装備を沢山選ぶよりもパッケージになっているほうが楽なのかも?
もう少し細かく選びたい!という需要のほうが、少ないからこそのグレード展開。売る人と買う人とがマッチしたものだったのかも。私もウッドパネルしかオプションつけなかったしね。
さぁ、今度は Allure のものも書いてみようかな。そんな事を考える、Momentum の記事でした(^^)