車選びは使えるから良いというものではない。個性を大事にしたい、デザインを愛したい、尖った高性能が一番、オンリーワン、様々な視点で車を選ぶことだろう。
先日、フォルクスワーゲンのディーラーへ行きまして、ゴルフ・ヴァリアントの試乗を果たしてきた。その理由は、やっぱりフランス車よりもドイツ車が良いのではないかという期待から。
車選びはトータルバランスのいい車を選ぶのが正解か
やっぱりと書いたのは、ボルボ vs フォルクスワーゲン で悩んだ時にはボルボを選び、プジョー vs フォルクスワーゲン で悩んだ時にもプジョーを選び、ちょっとした性能の不満点があったときに、ワーゲンを選んでおけばよかったんじゃないかなと何度も涙し、深酒を繰り返したからだ。
つまり、トータルバランスの高いゴルフに乗っていれば、夜な夜な愛車を(シュアラスターで)撫でながら「どうしてお前さんは」と泣くこともなかったのではないか、という話である。失敗が怖いのなら ゴルフにするのが一番良いのではないか、と考えたのだ。
この「トータルバランス」というのが言い表すのが大変むずかしい指標なのだ。なぜかと言えば、トータルバランスの基準というのもまた、個々に違うからである。
パワーは 200ps 以上は欲しいという人と、パワーは 200ps も要らないという人では車に求める基準が違う。格好良い車かどうか、可愛い車かどうか、これは趣向の問題だから逆とは言えない。平均を作るのが大変なことであり、誰もがこれでいいと頷けるクルマを世の中に爆誕させるのは難しいことなのだ。
そんな中でフォルクスワーゲン・ゴルフは、自動車のお手本と言われる高性能が売りのクルマだ。7回のフルモデルチェンジをこなしたのだ、トータルバランスの優れたクルマというのは、このような歴史の長いクルマだと考えるべき。少し乱暴かもしれないが、トータルバランスの良い車はフォルクスワーゲン・ゴルフということにさせていただき、話を進める。
そしていきなりだが、結論を先に述べる。車選びは「トータルバランス+アルファ」が最高に幸せになれるはずだ、と。
車選びはトータルバランス+アルファが面白い
トータルバランスの良い車と個性的な車を同じ価格で比べたとき、両車両が同じ工数・同じ技術で作られたとした場合、必ず個性を伸ばした車には欠点が生まれるはずだ。秀でた性能を加えた分、他がおろそかになるからだ。
しかし、個性は車の旨味のひとつだ。できるかぎりトータルバランス=総合力は崩さずに、少しづつでも一発でも美味しい個性があると楽しい。カーライフとは毎日を自動車と楽しみながら生きることだ。私の個人的見解は、「バランスで選ぶか 個性で選ぶか」は「バランスで選びつつ 個性という美味しさも手に入れる」という両得な考え方を支持したい。
格好良いのが良いじゃないか(その分欠点が増えるけれど)
例えば個性の代名詞(?)フランス車は、デザインの国フランスで鍛えられたボディの抑揚が素晴らしい車たちだ。しかしハード面では若干辛いところもあり、マイナーなトラブルをちょくちょく起こす。プジョー308SWのダッシュボードのモニターが消えるなんて、結構慣れっこだったりする。
けれども、格好良くて価格もほどほどと考えたとき、フランス車は選択肢に入るだろう。かくいう私も、多少のトラブルは覚悟の上でのプジョーの選択だった。車という服を着て、格好つけたいと考えたのだ。(・・・ちょっと言うのが恥ずかしいが・・・)
正直に言えば私は格好良くないし、格好つけないし、オシャレでもない。服はユニクロや無印良品。無頓着ですいませんと謝るくらいに、自身のエクステリアは気にしない。それでも、フランス車に乗ることによって多少なりとも格好良い人間になれると期待しちゃったのである。
やはり、見ていて格好いい車のほうが気分が良い。格好良い車を自分で所有する喜びもまた気分が良い。コックピットに座り、自分のセンスど真ん中のインテリアを眺めてホクホクしたりするのも好きだし、そのデザインに込められた開発者の意図を汲んだつもりになるのも大好きだ(これは独自ウンチク好きの為だが)。これを幸せと言わずしてなんと言おうか。
多様性は支持すべき(目立たないも個性じゃない?)
ホクホクするインテリアとか、ワクワクするエクステリアは、自分の感性にあったデザインを指すものだ。個々の感性は多様なので、様々なデザインのクルマが現れる。動物的で走りそうな外観のプジョーやジャガー、かわいい系で癒やしを感じるMINIというのも、そうである。軽自動車で言えばカスタムと言われるヤンチャ仕様もそのひとつだ。
フォルクスワーゲン・ゴルフは、デザインは完全に欠如している。いや、あえて欠如させているとも言える。インテリアは格好良くも可愛くも無い、そして奇抜さも無い。しかし、実用上は全く問題が発生しない。
個人的には、ジェンダーレス時代を迎え、デザインの個性化や多様化はドンドン進んでいくべきだと考えている。男性的とか女性的とか、そのようなデザインの傾向は無くなることはないだろうが、ルノー・トゥインゴに乗る男性とか、ジープ・ラングラーに乗る女性とか、どちらも稀に見る個性であるし、格好良いと捉えられる今の時代は素晴らしい。
しかし、その中央に居るべき車の存在もまた、必要。目立ちたくない人というのもまた、個性だ。ゴルフの狙いはココなのかもしれないのだ。
変態チックにマテリアルを愛する(羨ましいがスタンダートで問題ない)
さらに、マニアックに細かいところに惚れ込むパターンもあるかもしれない。例えば、シフトレバー。近年クルマの電子化が進み、とうとうレバーが無くなってしまった。昔はゲート式が格好良いとか、ブーツを履いていないと嫌だとか、突起物を選ぶ楽しさがあったものだ。
世の中の車からは、シフトレバーはどんどん消えてしまっている最中だ。多分しばらくは衝突時の安全性を考えてのスイッチ式が流行るはず。突起物がなくなれば怪我をする心配もなくなるし、フロントシートの左右の行き来もしやすくなる。コスト的にも安くて済むので、自動車メーカーは積極的にスイッチ式に移行することだろう。
しかし、モゾモゾする人もいるのではないか。シフトレバーが無ければ車ではない、電気で動く大きなハリボテだ、運転しているなんて言わせない、俺の左手が可哀想だろ泣いてやるって言いながらマニュアル・トランスミッション車を選ぶ個性派もいるかも知れない。
それはそれで抜群の個性派だし、むしろシフトレバーだけの為に快適性を犠牲にしてマニュアル車に乗る時点で変態だし、マニュアル車を用意している車種というのもまた素敵である。もう何も語るまい、バランス車よりも変態車人生に進むが良い、お行きなさい!
まあ、正直こんな車選びができたなら幸せだろうなと羨ましくはなるのだが(笑)
あれもこれも大事にしたい(選ぶのに疲れるのなら標準にしておけ)
はたまた、車のシートにコダワリたい人も居るだろう。
私の昔の愛車、ボルボ・V50 や ボルボ・V40 は、ベーシックグレード/中間グレードでありながら、上級グレードには無いコダワリのシートが用意され、満足感の高い買い物だった。ボルボのシート選びは幸せな時間だ。これからボルボを選ぶ人は、絶対にすべてのグレードを見ておくべきだ。
そして、この「すべてを見て吟味して選び抜く」ことが個性の選択と言えるだろう。
気をつけたいのは、結局アイテムを個々に評価していくと「あっちのシートは良いけれど、こっちのコックピットも捨てがたい。」となることだ。アイテムをひとつずつを評価するなら、優先順位はつけておくべき。でなければ、夜な夜な枕をグッショリ濡らしてしまうことになるぞ!(しつこい!)
だが、選択した上で失敗したと大げさに嘆くなら、標準で用意されたものを選ぶのが良いだろう。バランスのとれた車というのは、万人の意見が反映された車なのだ。
フォルクスワーゲン・ゴルフへの釈明文(ごめんなさい)
誤解を招かないうちに言っておきたい。
フォルクスワーゲン・ゴルフはつまらない車だなんてディスるつもりは毛頭ない。毛頭どころか髪の少ない私にとっては、ゴルフの方がお似合いなのかもしれない・・・あ、これもディスりか・・・私はゴルフの直線基調に込められたデザインの意思を感じることができないだけだ。フロントマスクは格好良いかもしれないが、遊びきれずに鬱憤が溜まっているように感じてしまう。
もうひとつ、性能のベンチマークはやはりワーゲンの使命である。マイルドハイブリッドだろうがハイパフォーマンスだろうが、高い性能を誰にでも扱いやすくパッケージングする力は素晴らしい。この性能美に惚れ込んでワーゲンを購入する層がいる事を、私は当然のことだと思う。
よって、話の流れでゴルフ格好わりぃとディスったように話してしまったのかもしれないが、自分に刺さらないデザインであるからワーゲンに乗れなかったと言いたいだけである。長年ワーゲンを所有したことがないから奥ゆかしい性能美を感じ取れないだけである。この点は先に釈明をしておきたい。
そして、歴史ある性能美を知っているからこそゴルフのシンプルなデザインが好きだという人もいるかもしれない。残念ながら私はゴルフを買っていない。だから、ゴルフのデザインの良さにたどり着かないだけかもしれない。
もし、デザインに不満を持ちつつゴルフのバランスに魅力を感じるのなら、ゴルフはやはり選んで良いクルマだと思う。素直でバランスの良い乗り味は世界最高。所有するからこそ、あのシンプルが好きになるのかも。でなければ、ゴルフがこんなにも世界から支持されるはずがないのだ。
パワー・ソースは選択の時代である(何を選んでも個性的だ)
クルマは移動する道具である。パワー・ソースはおかげさまで最近は多岐にわたるから面白い。ガソリン・エンジン、ディーゼル・エンジンなどの内燃機関、電気で補助するハイブリッドも、マイルド・ハイブリッドやストロング・ハイブリッド、EV走行の可能なプラグイン・ハイブリッド。そして電気自動車だ。
そして、ここ2〜3年で注目を浴びそうなのが、「最後の内燃機関」というスッピンエンジン群の新製品。メルセデスを筆頭に、マツダも新規開発した直列6気筒エンジンは数年後にはリセール価格も危ぶまれる気もするが、マニュアル・トランスミッションに慣れ親しんだ世代にはエンジンの気持ちよさは最後に味わっておきたいものだ。
リセール・バリュー度返しの最後の内燃機関に手を伸ばそうとしている諸君は、明らかに個性派である。バランス派なんて気にしてはいられない、我が身を削ってメーカーへご奉仕するのだ。ただ、夢を追うのなら最後の内燃機関の先を考えることだ。代替燃料に活路を見出し、積極的にファンレターとエールを贈ろうじゃないか。
これから10年後の未来は読みづらい。EV比率が高まることで、ガソリン代が下がる可能性も出てくるのだ。EVしか販売されないことで、内燃機関搭載の定年式中古車に人気があつまる可能性だってある。
どちらにせよ、茨の道であることには変わりない。いや、ハイブリッド車だろうがPHEV車だろうが内燃機関は積んでいるのだ。旅は道連れ、ならば楽しいほうが良いじゃないか。
高回転で高出力を絞り出す NA エンジンだとか、燃費度返しの大食らいターボだとか、そういう個性からは少しシフトしているけれど、まだまだ楽しいパワー・ソース・ウォーズは自動車選びの要になるんじゃないかな?というのが個人的な感想。ゴルフ・Rなんてのも楽しいぞ。
バランス+個性=丁度いい個性の車
ということで、私のブログらしく「デザイン」と「エンジン」で個性の選択をプッシュしてみた。では結局、バランスと個性どれくらいの割合が良いのだろうか、というところだが、個性を貫き通すプジョーのような車もあれば、ワーゲンのようにグレードによって個性/無個性を分けている車もある。正直答えは出しにくい。
言えるのは、車を買おうという人は少なからず好みに合う車を探そうとすることだ。その人なりの考え方があるし、その人なりのバランスがある。人それぞれのバランス感覚が違うからこそ、様々な車が現れるのだ。
その選んだクルマがたまたま無個性だと感じるのなら、なにかオプションを付け加えるのはどうだろう。無意味な機能でも何でも良い、自分のオンリーワンにすべく、パノラマルーフでも大型マフラーでもつけて楽しめばよいのである。その時、できるだけ目立つ装備のほうが幸せだろう。「無個性だと感じる=もう少し個性的な車にしたい」つまり多少は目立ちたいのだ。心にウソをつくと、あとで枕を涙で(以下略)だ。
個性だけを振り切るわけにはいかないのも現実だ。目立ちたくないのなら、巷に沢山走っていて性能の良い車を選べば幸せだろう。できれば、自分にちょうど良い車というのを選び出し、ちょとした自分というエッセンスを加えれば、楽しいカーライフが過ごせるだろうからおすすめしたい。
車に飽きない為に 車に幸せを感じる為に
私が1番に懸念したのは、「美人は三日で飽きる」というキーワードが車にもあるのではないかと言うことだ。誰もが乗りやすいプレーンな形というのはハッキリ言ってつまらない。性能を突き詰めていくと無振動や無音の世界に向かっていく。そんな「無い」を買うよりも、躍動あふれるボディデザインやモーター音という雑味を味わったほうが良い。
もちろん、本当に無個性が欲しいのならゴルフやカローラに乗っていれば問題ない。目立ちたくない、そもそも車にコダワリがなく、移動さえ不自由無ければ問題ないという人にとっては、個性なんていうものは邪魔にしかならないだろう。
車を愛でてしまう人は車の個性が大事な人だ。誰になんと言われようと、貴方の好きを貫いて車選びを楽しんでほしい。その個性のエッセンスの加え方は、人それぞれ違って良いのだ。
たとえ後日にベッドを涙でビショビショにしようが、部屋中涙の海になろうが、自分で選んだ車だもの、きっとそのほうが幸せなのだと私は貴方に伝えたい。