【HONDA Tips】性能曲線で見極める シビック/ZR-V e:HEV の実力値

2024年9月にマイナーチェンジを受ける、ホンダ・シビック。ハイブリッドシステムに新しい風を送り込み、トヨタや日産との違いを見せつけたハイブリッドシステム「スポーツ e:HEV」がどのように進化するのか注目ですね。

 

さて、今回は「HONDA Tips」として細かく性能評価していこうと、性能曲線を作ってみました。シビックe:HEVオーナーである私としても、オサライしておきたいと思ったもので・・・。

 

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HONDA LFC型エンジンの性能

ホンダ・シビックe:HEV 性能曲線(エンジン)
ホンダ シビック e:HEV/ZR-V e:HEV のエンジン性能曲線 赤線が出力、青線がトルクを表しています。(monogress 独自研究資料ですので、公式データでないところに留意してください。)

 

最高出力 104kw(141ps)を 6,000rpm 付近で、最大トルク 182Nm を 4,500rpm 付近で発揮する「LFC」直噴エンジンは、e:HEVでは縁の下の力持ち的存在です。主にハイブリッドシステムの発電を担当しつつ、高速走行時はエンジン単体で車両を動かす制御も行われます。

 

特徴は、最大熱効率 41% を叩き出すこと。そして、2リッタークラスでは採用の少ないバランサーを搭載したこと。おかげで高い燃費性能を発揮しつつ、ノイズの少ないシルキーなエンジン音を奏でてくれるのが、オーナーとしては嬉しいのですよね。

 

HONDA CIVIC リアからの眺め

 

シビックではハイブリッドシステム「e:HEV」として、初の直噴エンジンを搭載しました。そして「リニアシフトコントロール」によりスポーティなエンジン音をデリバリーするのは、他メーカーではできない制御です。

 

この、リニアシフトコントロールによるエンジン音のステップ制御は、単なるお遊びではありません。人のもつ、速度が上がるにつれてエンジン音も上がっていく感覚を大切に考えたシステムではありますが、その為に燃費が下がってしまったら意味がありませんよね。

 

その為にホンダが挑戦したのが、燃費の領域を広げること。ステップ制御は、すべて燃費の良いストイキ領域で行われています。そこには、TypeRで培った燃焼技術も投入されているのだとか。おかげでシビックe:HEVの発売が遅れたそうですが(笑)結果的にシビックe:HEVやZR-V e:HEVユーザーにとって最高のエンジンを作り上げてくれたのだから、文句は言えませんね。(納期7ヶ月は辛かったですがね!)

 

性能曲線的には秀でた性能を読み取ることはできませんが、性能アップは燃費に傾けられていると理解できます。アクセルを踏み込んで、リニアシフトコントロールを楽しんでも、特に大きな燃費低下には繋がらない。そのように覚えておきましょう!

 

HONDA H4型電動モーターの性能

ホンダ・シビックe:HEV 性能曲線(電動モーター)
ホンダ シビック e:HEV/ZR-V e:HEV の電動モーター性能曲線 黄線が出力、緑線がトルクを表しています。(monogress 独自研究資料ですので、公式データでないところに留意してください。)

 

ホンダのエンジンが如何に素晴らしいとしても、e:HEVシステムの走りの主役はやっぱり、電動モーターです。最高出力 135kW(184ps)を 5,000-6,000rpm 付近で、最大トルク 315Nm を 0-2,000rpm 付近で発揮するこのモーターは、今までのハイブリッド用モーターの弱点を克服したかのように見えます。

 

というのは、性能曲線に表してみてわかるのですが、電動モーター特有の「トルクの落ち込み」が極めて少ない。電動モーターは高回転でトルクが出ないのが弱点でした。しかしホンダが主要諸元でうたう「5,000rpm で 135kW」を出力させるには、約260Nm のトルクが必要になるのです。

 

出力(kW)= 2π × トルク(Nm)× 回転数(rpm)÷ 60 ÷ 1000

 

HONDA ZR-V 力強いフロントマスク

 

私もなんとか、この記事を書くためにモーターのトルクの落ち込みを肌で感じようとアクセルを踏みましたが、まったく判らず(笑)

 

シフトショックの無い、EVと同じ走り心地を体験できるのは、このモーターがあってこそ。将来、バッテリーを小さくでき、搭載容量を増やすことができれば、簡単にEVやPHEVへ移行できるんだろうなと感じます。

 

とにかく、e:HEVは何処でアクセルを踏もうが、パワーとトルクの落ち込みは感じない、そう覚えていただいて大丈夫。なんだか、アクセルを踏む事ばかり語っている気もしなくはないですが(笑)

 

HONDA e:HEV(LFC + H4) のシステム出力

エンジン+電動モーターの性能曲線

ホンダ・シビックe:HEV 性能曲線(エンジンと電動モーター)
エンジン性能曲線と電動モーター性能曲線をあわせたもの。モーターの駆動力をタイヤに伝える間には、必ず減速ギアが入っているので、単純に加算されないところにご留意ください。(monogress 独自研究資料ですので、公式データではありません。)

 

ほとんどのハイブリッド自動車は、システム出力がエンジンと電動モーターの足し算にはなりません。これには様々な理由があります。トヨタ式なら動力分割機構の特性だったり、ホンダ式なら、私が考える一番の理由は、単純加算した時の出力に耐えるドライブトレインにすると、車の価格が著しく上がってしまうから、かな?

 

シビック e:HEV で言えば、500Nm くらいのトルクが一瞬で掛かってしまう。もう、Type R(400Nm)だってビックリなわけですよ。

 

それでも無理やりシステム出力について考えるのなら・・・次のセクションから、シビックとZR-Vの単純足し算の計算をしてみます。

 

シビックe:HEV システム出力考査(あくまで単純足し算と仮定しての計算)

秋の公園に佇むシビック

 

いろいろシビックe:HEVで試していたところ、エンジンが直結制御されるタイミングがわかりました。だいたい、平地だと時速 75km/h 付近のようで、これはパワーフローに現れるギアマークで判断できました。体感では、ちょっと無理(笑)

 

ということで、ちょっと割り切りやすく 時速 80 km/h で計算してみます。色々端折りますが、主要諸元表の減速比を基に、エンジンとモーターの回転数を割り出してみます。

 

  • 時速 80 km/h でのエンジン回転数 およそ 1,800 rpm
  • その時のエンジンの出力 34 kW / 168 Nm
  • 時速 80 km/h での電動モーター回転数 およそ 5,500 rpm
  • その時の電動モーターの出力 135 kW / 235 Nm
  • 単純合計 169 kW(230 ps) / 403 Nm

 

あくまで、最大限出力したらこれくらい、だという参考値としておいてください。それでも、最大トルクはエンジンと電動モーターの単純加算にならない事は、お分かりになるでしょう?

 

ZR-V e:HEV システム出力考査(あくまで単純足し算と仮定しての計算)

HONDA ZR-V フロントマスク

 

同じ条件でと仮定して、ZR-V e:HEV も計算してみましょう。シビックと比べると、ZR-V は減速比が高め。タイヤの大きさを減速比でカバーしているのでしょうね。

 

ここでは、FF/AWDの差は考えないようにしております。

 

  • 時速 80 km/h でのエンジン回転数 およそ 1,900 rpm
  • その時のエンジンの出力 35 kW / 170 Nm
  • 時速 80 km/h での電動モーター回転数 およそ 5,800 rpm
  • その時の電動モーターの出力 135 kW / 222 Nm
  • 単純合計 170 kW(231 ps) / 392 Nm

 

こちらも、参考値で。それにしても・・・ZR-V は燃料タンクは 57L だわ、最小回転半径は 5.5 m だわ、AWD ではリアタイヤが積極駆動するわで、お買い得感で言ったら断然 ZR-V ですよね。シビックよりも足回りがスポーティに感じるお茶目さも、また魅力的。ホンダめ、やるじゃあないか(笑)

 

システム出力の基本は「135 kW / 315Nm」

CIVIC と ZR-V と ポルシェ718

 

ホンダのハイブリッド「e:HEV」の特筆ポイントですが、高速道路走行時はガソリンエンジン単体で走行し燃費を伸ばすとしていて、頻繁に切り替わっていることもわかるのですが、体感では一切感じないのです。いつまでも電動モーターで走行しているかのようで、ちょっと制御が上手すぎます。

 

実際には、時速 100 km/h でも電動モーターでのみ走行しているシチュエーションもあり、そこからジワッと踏み込んだ時のトルクの出方がエンジン直結時と変わらないことを加味すれば、高速道路の速度域では、エンジン出力の足らない部分においては電動モーターによりトルクのアシストを行っているのでしょう。(でなければ、トルクの谷間を必ず感じるはずなんです!)

 

パワーフロー表示を見ていると、確かにエンジン直結時にもバッテリーを使用して駆動していることがわかります。モーター走行時はトルク 315Nm がシステム出力と考えて間違いなさそうですが、高速道路ではエンジン+電動モーターで団結している場合もあり、一言では言い表せないのが e:HEV のシステム出力なのでしょうね(笑顔)

 

ホンダのハイブリッド e:HEV に今後も期待

CIVIC e:HEV エンブレム

 

ストロング・ハイブリッド・システムの先駆者がトヨタ、シリーズ・ハイブリッドの先駆者が日産であるとすれば、ホンダはどちらも残念ながら「2番目」な立ち位置なのは皆様もうなづけることでしょう。しかし、スバルやマツダのように自社開発を諦めるのではなく、あくまで自力で開発する心の強さには惹かれますし、出来上がったシステムの完成度は、目を見張るものがあります。

 

特に「スポーツ・ハイブリッド」においては、回転数制御のできないトヨタ・日産よりも先に行っていることには間違いありません。いくらモーター性能をあげて大きな出力を得たとしても、それは強引に走るだけ。公道で制限を受けながら走りを楽しむのであれば、シビック/ZR-V くらいの性能が丁度良く、エンジン音も楽しめる唯一無二も手に入るのだから、かえって幸せと言えるのではないでしょうか。

 

アコードでは、電動モーターの回転数制限(レブ・リミッター?)が 8,000 rpm に、最大トルクが 335Nm と強力になっています。いつかステアリングを握って、その差を体感したい。車好きが期待を寄せるスポーツ・ハイブリッドの性能向上を、楽しみに見つめていきましょう。

 

参考文献

カーボンニュートラルを支える究極のHndaエンジン LFC型

CIVIC e:HEV Press Information

ZR-V 主要諸元