トヨタもホンダも、EVシフトに力を注いでいます。今までの遅れを取り戻そうと大きな予算を編成し、遅まきながら中国や欧州に自動車国家の意地を見せつけようと息を巻く。
すると今度は「EVはやっぱりダメだ」てきな風潮が。一時的なものだろうとは思うものの、もしも内燃機関のブラッシュアップを目指す世界が戻って来たらと思ったら、少し胸が踊ってしまう自分がいます。
やっぱり、エンジン音って良いものなんですもん。生エンジンの時代に生きた私たちは、幸せだったと言うほかありませんね。
さて、今回は、どうして我々はピュア・エンジンに恋焦がれてしまうのか、そして将来の動向を、私の持論たっぷりに無駄話に纏めます。細かく、楽しいピュア・エンジン車のお話も挟んでいきますね。
ピュア・エンジン車を恋焦がれてしまう理由
ピュア・エンジンとは
震えと響の芸術である
ーー まこまち ーー
もしもEVの時代になっても、「耳で運転する要素」として、エンジン音ジェネレーターは搭載していて欲しい!
いやいや、ジェネレーターなんて甘いこと言うな、ピュア・エンジン車でシリンダーの爆発音を聞けば良いんだと、そのうち代替え燃料が来るんだからと反論するそこの貴方!
良いね!(・∀・)b
意見を曲げないその態度、きっとピュア・エンジン教の信徒でしょう。日本の信徒も欧州の信徒も、虎視眈々と電動化Noの為の準備をしているに違いない。そうでなければ、直列6気筒の復活なんてあり得ません。
その先のシナリオを語る前に、まずはピュア・エンジンの魅力を語ろうじゃありませんか。
マニュアルトランスミッションはピュア・エンジン車だからこそ骨の髄まで楽しめる
ピュア・エンジン車の魅力ーーー 第一に、マニュアルトランスミッション車の運転の楽しさ。これは、ピュア・エンジンの独壇場。自分の力を遥かに上回る「エンジン」というテクノロジーを、全身を使って操作する。視力、聴力、タイミング・・・この楽しさは、オートマ時代の「ハイパワーを簡単に」とは違う楽しさがあるんですよね。
アクセルを踏み込むごとに変わる車の緊張感。エンジン音が上がるにつれて、車の震えが変化していく。回転数が低いうちはブルブルと緩く震え、そのうち、スムーズで扱いやすくなってゆく。

さらに強く踏み込めむと現れる、エンジンと車両との緻密な繋がりを連想させるメカニカル・ビート。響き渡るエキゾースト。カムがのった時の、エンジンがさらに元気になる様は、格別だった!
そう、車は単なる移動の手段ではなく、操って楽しむもの。スポーツドライブで最速を目指すことも、乗り心地の良い運転を心がけることも「腕」であり、突き詰めたいと感じさせる技術や趣味のひとつなんです。
磨き上げた貴方のワザ、手放したくないですよね?
ピュア・エンジン車の大きな鼓動は生き物のようで魅力的だ

第二に、強大なエンジンの想い出です。私の場合、クラシックな路線バスへの愛着が強かった。記憶に残る最古のエンジン音は、路線バスのけたたましい音色。シフトレバーが長くて、クラッチを離す音がドゥンと聴こえて、車内アナウンスをかき消してしまう雄叫びに、憧れました。
力が欲しい時に、グインとエンジン音が上がる様はド迫力!運転手の腕がなる坂道発進が大好きでした(笑)。路線バスは、幼少時代に将来の車好きを養成するには、もってこいだったのかも。

ディーゼル機関車を挙げる人もいるのではないでしょうか。大排気量の心臓は、気動車ならば車内を暑くするほどに唸り続け、窓を開ければ木々や建物に反射する。地方鉄道では見られる光景とは少し違う、混沌な鉄道世界の主人公。電車区間に現れるディーゼル特急なんて、マニア達のヒーローでしたよね。
生き物に近い、低くて深い心臓音は、心に沁みやすく焦がれやすい音色なのかもしれません。
モータースポーツが盛り上がったのはピュア・エンジン車の時代だった
第三に、モータースポーツの存在です。アイルトン・セナ、ミカ・ハッキネン、ミハエル・シューマッハーーー性能の悪いテレビのスピーカーから発せられる、甲高く鋭いビートとシフトチェンジ。速度が上がる=エンジン音が上がる、という当然のコトワリを教えてくれたカーレースは、車の構造を連想させ、正しい理解に導くためのエッセンスだったに違いありません。
モータースポーツ自身には、様々な新しい取り組みがされています。KERS(Kinetic Energy Recovery System ー 運動エネルギー回生システム)も搭載され、ピュア・エンジンとは言えないパターンも。けれども、主役はまだまだエンジン。我らがエンジンの暴走音は、今も時代を引っ張れるよう切磋琢磨が続けられているんです。
そのフィードバックを受ける、一般車。性能はF1ほどとは言えませんが、どこかに血のつながりがあると思うと、何だかワクワクしてくるじゃありませんか。
キーワードに意義がある!?特徴のあるエンジンに付けら浸透する愛称の数々

BMWのシルキーシックスとは、絹のようにきめ細かいということの意。エンジンの性格を表したキーワードの代表格。6気筒欲しいなあ。
ホンダ・VTECHは、今でこそ燃費改善にも作用するテクノロジーですが、登場当初はスポーツエンジンにのみ搭載されるバルブ切り替えエンジンのキーワード。7000回転からが凄いんですヨ!
スバル・ボクサーはシリンダーを対抗配置し、2気筒を同時に爆発させることで4気筒とは思えない低振動を実現したエンジン。アイドリングが横揺れなのも特別感!より高みへ登ったのは、H6エンジンかもね。

各メーカー、自ら名前をつけ、車に特徴を持たせていた時代。GDIだのハイメカツインカムだの、様々な愛称がついていました。名機といわれるのも、やはりエンジン。RB26だとか4AGだとか、そんな呼び名で語っていたのも懐かしい。
ピュア・エンジンでしか語れない、心に刻まれる愛称の世界。この楽しさが無くなっていく現代の寂しさも、ピュア・エンジンにもう一度乗りたいと思う動機のひとつですね。
ピュア・エンジン車の今後の動向
さて、これほどまでに魅力的なピュア・エンジン車。今後の動向が気になるところです。ここは、エンジンだけで走るクルマもひっくるめて考えましょう。
実際のところ、ピュア・エンジン車が「ピュアなまま」でいられる可能性は、限りなく低いと考えられます。少なからずモーター・アシストが入っていくことでしょう。エンジンの進化はエネルギーの節約の進化とも言えますから、できるだけ高性能で、できるだけ低燃費なエンジンが求められる事は仕方がありません。
しかし、ピュア・エンジンが生き残るシナリオもあるかもしれない。今回は知恵を絞って、3つのパラレルワールドを描いてみました。少しファンタジーです。お楽しみくださいませ。真面目な方は読み飛ばして頂いても構いません(笑)
ピュア・エンジン車生き残りシナリオ1 紛争編
世界各地で広がりを見せる戦争。そこにアメリカも参戦することに。大量の車両兵器を運用する為、大統領はアメリカ国内での石油掘削を復活。余分な燃料も大量に発生します。もちろん、ガソリンもじゃぶじゃぶ余る状態に。
すると、環境団体は大統領を批判。地球温暖化や環境破壊は歴代最低だと。そこで追い詰められた大統領は、「車両重量を20パーセント落とすこと」をメーカーに課す。中国からバッテリーを買うから世の中が悪くなるのだと批判を繰り返し、バッテリー式ハイブリッドの淘汰を目指しました。
結果、アメリカは大排気量時代が復活。アメリカ向け自動車で利益を上げる日本国内メーカーも、大排気量ピュア・エンジンモデルを再販。燃費より世界平和だと主張するアメリカに、相変わらずモノを言えない時代が続きつつ、ピュア・エンジン派は安堵のため息をつくのでした。
ピュア・エンジン車生き残りシナリオ2 バイオ燃料編
バイオ燃料の開発がひとつの山を越え、多少高価ではあるもののEV買うよりは安く済むようになる。すると、ライフサイクルアセスメント的に見れば環境負荷の少ないエンジン車は、再び脚光を浴びることになった。
しかし、新たな政党「真バイオ党」より「食用油が混ざっている」「濁りの少ない食用油は牛の肉を使ったもの」「美味い料理に使われる牛のゲップは温暖化の原因の一つ」と批判され、せっかくの最新技術で生み出されたバイオ燃料は消費されず製造過多に。
すると、世の中のバイオ燃料は更に値崩れを起こし、化石燃料と変わらない価格になった。燃料じゃぶじゃぶ状態に、最新のエンジンとの組み合わせでCO2実質ゼロ、熱交換率50%となり、電気式ハイブリッドは環境負荷の観点から製造終了。世の中はピュア・エンジンの世界に戻ってゆくのだった。
なお、これを真バイオ党のおかげとSNSにで話題になった頃、当事者たちが「これを狙ったんだバイオ」なんて言い出して、流行語大賞に輝いたそうだ。
ピュア・エンジン車生き残りシナリオ3 AI編
2030年に到来したAIの暴走により、世界各地のガソリンスタンドはハッキングを受け、ひとつの車に対してガソリンは10Lしか入れられない制約を受ける。将来、化石燃料を使わないとするAIの意向は自動車開発や販売にも反映され、エンジン搭載車は販売休止に追い込まれた。
AIの暴走を食い止めようとする抵抗も見られたが、自然エネルギー由来の発電所が発達したことにより電力の供給を止める手段がなくなり、また高度に分散化されたAIのテクノロジーは数多のコンピュータで並列処理され、まったく退治できない事となった。
そこに立ち上がったのは、エネルギー自由主義連合。彼らは、コンピュータ制御から切り離された過去のピュアエンジンを掘り出し、操作する事でAIの呪縛から逃れることに成功。AI共栄圏の国々の解放を目指す。果たして、人類知能とAIの勝負の行方はいかに!?
ピュア・エンジン車の生き残り論争
まあ、ちょっと面白おかしく書きすぎましたかね・・え、面白くも何ともない?そんなあ(笑)
EVは核融合エネルギーを待つのみ

EVを目指すメーカーにとって、エポックメイキングになりそうなのは、核融合発電所の完成でしょう。太陽を地球上に再現すると言われるこの研究は、エネルギー問題を一蹴します。無尽蔵の電気が産み出されるのなら、市民は発電所や送電線の維持費を支払うだけで済むようになります。
車に詰むバッテリーも、走行中充電ができるようになれば、小さくて済むようになります。EVの未来は、テクノロジーの進化とともにあるところがポイントです。
場合によっては、原子力妄想時代と同様に、核融合エンジンで車が動く時代が来るかもしれません。ただ、核融合発電は実証実験が2030年、商業稼働が2050年と、いつまで経っても30年先のテクノロジーと揶揄されているのが辛いところ。
では、ピュア・エンジンはまだまだ生き続けることができるのか?
代替燃料を待つピュア・エンジン車

それはやはり、代替燃料の量産化成功がキーでしょう。石炭がガソリンに主役の座を明け渡した理由は、エネルギー密度の高さで負けたからでした。ガソリンと同じエネルギー密度、かつCO2発生が実質ゼロのおまけがつけば、一気に代替燃料化が進み、また専用の高効率エンジンが開発されることでしょう。
100%代替燃料で供給する必要がないとか、現在のインフラをそのまま使える事も、代替燃料の有利な点です。徐々に製造量を増やすことで、化石燃料の依存度を下げていくことができるのは、核融合発電所にはできない芸当ですよね。

代替燃料として話題になっているe-fuelの存在は、欧州自動車メーカーがEVシフトから後戻りしようとしている理由の一つでもあります。しかし、e-fuelを作り出すのに排出される二酸化炭素が、空気中より採取する二酸化炭素の量よりも多いところが、賛否を産んでいるようです。
さらに問題なのは、この2つのテクノロジーは、もう少し先の未来の技術だということです。それまでは、化石燃料に頼るしかありません。エネルギーはできるだけ節約しなくてはなりません。
装備てんこ盛りから見直すべき?車の燃費を考えなおそう

そのうち、ハイブリッド車でなくては販売してはならないと法規制が入るでしょう。エンジン車は、一度は世の中から姿を消すと思います。現代の、自動運転、衝突安全性、燃費向上のためのハイブリッド電池搭載は、ガソリン車では明らかに荷が重いのです。
しかし、考え方を真逆にして・・・最新デバイスレスの、最新エンジンとマニュアルトランスミッションのみを搭載する、軽量で燃費の良い車が現れたらどうでしょうね。燃費の良さは正義なんです。ピュア・エンジン車がそのように舵を切るのなら、私たちは拍手で迎え入れるべきです。
クラシックなコンポーネント、されど、時代の最先端になり得る力を持つ車。ピュア・エンジン車には、実は新しい未来が用意されているのかもしれません。そんな隠れた実力もまた、恋焦がれる理由のひとつなのかもしれませんね。
結びの旬景
タイトル画像は、NSXのコックピットでした!
未だ、軽自動車や低価格帯グレードを中心に、ハイブリッド未対応車は存在します。これらが全て電動化されれば、ピュア・エンジン車だけが純粋にエンジンを楽しむ車になってきます。
右足にリンクするrpmを楽しむ世界。至高ともいえる贅沢な逸品エンジンを末長く楽しむためにも、「恋焦がれる」ことを忘れずに声を出して応援したい。記事を書きながら、そんなふうに感じた次第でした。
貴方の想い出のピュア・エンジン車は、今も心の中に生きていますか?