ゴールド・ライン。
私がボルボV40を送り出す上でつける言葉。
我が愛車V40は私の手元を離れるが、その類稀な才能があれば、まだまだ現役で生き続けることができる。
いくつかのエピソードとともに綴るこのコーナーは、これからボルボに乗る人、ボルボを考えている人、ボルボの所有者、ボルボを手放そうとする人すべてに送る、ラスト・ラブソングである。
ボルボ・ディーゼルを堪能する
「D4」エンジンで家族を運ぶ
我が家にたどり着いたV40は、D4 Momentumというグレードだった。
豪華装備のD4 Inscriptionも考えたし、エンジンが軽やかなT3 Inscriptionは同額だったこともあり悩んだが、税負担が少なくてCO2排出量の少ないディーゼルは捨てがたく、さらにボルボのファブリックは体に馴染んだので、Momentumに落ち着いた。
納車の日、ディーラーから車を受け取ると、早速箱根へドライブに行く。都心から近い白濁のお湯。せっかくの納車日だからと、あらかじめ出かけることを決めていた。
東名高速道路と山道で大トルクを堪能、温泉も堪能という、ドライブ旅行好きには堪らないダブル堪能が我が家の納車セレモニー。新車が来れば、ついつい行きたくなってしまうのだ。
実際には、ディーゼルエンジンを楽しみたくて仕方がない私に、家族全員が付き合ってくれる構図に違いはないのだが。
高速道路で合流する。かなり楽。ぐっと背中に感じる加速感が心地いい。ジェットコースターみたいだと喜ぶ子供達。
追越加速を試みる。これも楽。トルクが湧くというのはこういう事だねと、家内と車談義を楽しむ。
サスペンションはまだ渋めだが、V50よりあきらかに快適な足回り。高級車みたいだね、と私が言い、高級車だよと家内が笑う。
このやり取りだけで嬉しい。納車日というのは独特の楽しさがある。毎日が納車日でも良いくらいだ(笑)
それはよしとして、ボルボV40はV50よりも確かに快適。どこまででも行ける気がする。
箱根に着いた時点で、燃料計は少ししか動いていなくって、やはり夫婦で「喜び遊び」を堪能した。
重い車重も軽く感じる大トルク
1540kgの車体と400Nmの大トルクは、車を羽のように軽く感じさせる。
どんな坂道だろうが、エンジン回転数が上がることはない。モリモリと湧き出すトルクで静かに坂道を上がっていく様は、ジェントルだなと感じさせる。
強いて言うならば、トルクのピークが狭い為、低い回転数でシフトチェンジすると出力が落ちるのがよくわかる。1000rpmでも十分なトルクを出してくれるのだが、坂道とは高回転維持で登っていくものだったから、感覚のずれに戸惑うことも多々あった。
なにせ今まで、箱根路を登る時は、2.4L直列5気筒エンジンは常に高回転維持。ボルボは他の車に比べると車重が重い為、エンジンのスペック以上に「走らない」印象が大きかった。実際、V50の時は5速ATのマニュアルモードを駆使して登りを楽しんだほうが、一緒にのっている人も楽だったようだ。
その道を、わずか1500rpm前後で淡々と登っていく。頼もしいし、不思議な感覚を覚えるのだった。
エンジンブレーキは効きにくい
箱根湯の花温泉は、芦ノ湖湖畔より少し離れたところにあって、箱根の混雑を避けられるので行きやすい。宮下の混雑も有料道路を使えば避けられる。
山上にある白濁の湯は、体を箱根の匂いに染めてくれる。車に硫黄の匂いがつくのは嫌だが、気持ちよさが勝ってしまい、ついつい箱根にドライブに行く事が多くなる。
息子と温泉を堪能し、家内や娘と落ち合う。あたりは日が落ちてきていて、泊まれればなあなんて思ってしまう。車を買ったら、ディーラーは旅行をプレゼントするべきだと常に思っている。勝手な話だが。
箱根湯の花温泉で白濁の湯を楽しんだ後は、山下りを試す。
ここで、やはり今までの車とは性格が違うものだと実感が増す。
ターンパイクの急坂を降りている最中、エンジンブレーキがあまり効かない事がわかる。ディーゼルエンジンに組み合わされる8速ATの段数が多いのも要因の1つだが、それ以上にエンジンがスムーズに回りすぎる。
あとでわたっか事だが、スロットルバルブの無いディーゼルエンジンは、エンジンブレーキの効きは悪いのだと言う。ガソリンエンジンとは根本的に違うのだと、身をもって体験できたのは嬉しかった。
高回転域も楽しく回せる
また、おかげでエンジンの高回転域のエンジン音を聞くこともできた。トルク自体は多少下がるが、ボルボディーゼルは高回転域(といっても3000rpm付近だが)で軽やかなエンジンサウンドを奏でてくれる。
乾いたエンジンサウンドが、スムーズに車体を前に送り出す気持ちよさ。パドルシフトを駆使して、少し高い回転数を維持する楽しさがあることを、付け加えておきたい。
とにかく、楽しい納車日のドライブだった。
ところが、やはり気になるところも出てくるのである。娘が、「パパとママの声が聞こえない」と言い出した。
ーーーつづくーーー
雑記
2015年、クリーンディーゼルエンジンは欧州車の切り札として日本に登場。ボルボも「第三のディーゼル」として日本導入を決めます。しかし3年も経たずに、ディーゼルエンジンに将来は無いと言い出しました。
フォルクスワーゲンの排ガス不正、いわゆる「ディーゼルゲート」により、欧州のディーゼルエンジン販売比率が下がり出した為によるものです。
しかし、2020年に売却したボルボV40は、ディーゼルゲートの影響も受けずに高値維持。消費者を惑わすメーカーの方針には、戸惑いを隠せません。
プジョーになってもディーゼルエンジンを乗り継ぐことを決めた私は、まだまだディーゼルは使えると考えています。