2022年上半期の日本での輸入車販売シェアは、登録車ベースでおよそ全体の 9% になるという。この数値、感じ方は人それぞれだと思うけれど、私の感想は「多くなったなあ」。なにせ、日本で売れている自動車の 10 台に 1 台が輸入車なのだ。
車種が沢山あるから輸入車という意識を外れがちだが、いわれてみれば MINI はしょっちゅう横切るし、Volkswagen を見ない日はない。輸入車はすでに日本人にとって、特別なクルマでは無くなった、そう捉えても良いだろう。
一方、存在は特別ではないけれども、所有するには背中を押す何かが欲しいーーー日本車に比べれば高額だし、故障リスクも高いだろうし、燃費だって良くないだろうーーーそう考える人は多いはず。ちょっと欲しいけれども超えられない境界線、クルマ選びのモヤモヤには一体何が隠されているのだろう?
その輸入車 憧れか(輸入車と日本車の境界線)
9 年間の日本車生活、その後 13 年間の輸入車推しから再び日本車に戻る私には、輸入車と日本車の間に大きな境界線があることを知っている。幸い、私の初めての輸入車は VOLVO V50 で、購入目的が「世界一の安全性能」と「めずらしいエンジン」だったから、意外と気軽に境界線を超えることができたのだった。
私が考える輸入車と日本車の境界線、それは「対価を支払える魅力」である。
輸入車の入門にボルボを選んだのは、子供が小さかったからである。当時エステートの欲しかった私は、スバルレガシィツーリングワゴンを狙っていた。そんな時、安全性能を突き詰めるボルボの話を聞いたのだ。私は子供が傷つくのを異常に気にしており、車での移動はガチガチに安全にしたかった。
どれどれと試乗したら、すぐに購入を決意した。
特徴的なフィーリングのエンジンは、どうして5気筒なの?それは、真冬の地方道で1気筒が壊れても走り続ける力が必要だから。どうしてイグニッションキーをステアリングの左上につけたの?事故の時に膝を痛めない為の配慮だから。
当時のCセグメントでは珍しいカーテンエアバッグを搭載。すべての性能を乗員の安全に結びつけて考えるボルボの姿勢に感心し、さらにデザインの国スウェーデン生まれの妖麗なボディラインは、私を虜にしてしまった。およそ同じ価格帯の3L水平対抗6気筒AWDを諦め、2.4L直列5気筒FFプラス北欧デザイン。高額だなんて思わない。
輸入車二つ目のメーカーになったプジョー。独特の人間工学に基づいたi-Cockpitに度肝を抜かれつつ、コンサバなのに格好良いワゴンスタイルは私のハートのど真ん中。1.5Lディーゼルエンジンは日本人は作る気のない味わい深い内燃機関で、小排気量好きなフランス文化を堪能できる名ユニット。大きくなった子供でもリアシートにゆったり座れるし、赤青ステッチのオシャレ感も手伝って、すぐに購入を決めてしまった。
実際のところ、ワゴンの好きな私にとって輸入車というのは選択肢を広げてくれる存在だった。しかも、日本車では得られない魅力的なオンリーワンを備えるクルマ達だ。その対価は、私にとって高いとは思わないものだった。
車としては同じもの。けれども、魅力の桁が全く違う。これが私の考える、輸入車と日本車の境界線だ。アウトバーンを走る為に徹底的に鍛えた足周り、なんて言葉では表せない、人の根幹に響く素晴らしさ。異文化に親しむ外国人が作った車だからこそ、感度の高い日本人に響くのかもしれない。
境界線を感じ取れる各輸入車の特徴
果たして全ての車好きが輸入車好きかと言われれば、憧れくらいは抱いたことがあるだろう。ここで、各輸入車の特徴をまとめてみる。
メルセデスベンツ
そのステータスは煌びやかだが、ドイツアウトバーンを飛ばせる性能と濃厚なデザイン言語は◯。特にセダンのデザインは逸品で、ハイクラスコンサバデザインは素敵。さらにコックピットのデジタル化にも積極的だ。
BMW
走行性能に魅力を感じれば積極買い。直列6気筒にお金を払うならやっぱりBMWじゃないと。上級セダンの優雅なラインは、メルセデスとは違う気品。インテリアが若干チープなのも、走りにこだわるからこそだ。
フォルクスワーゲン
輸入車=プレミアムと言いたくない人の拠り所。実用主義と思わせながら、Rモデルという走りのグレードを欠かさないのが面白い。一番の魅力は、精巧感。精密機械のような動きに感服。車はハイパワーだけじゃないと思わせる車作り、素敵過ぎ。
ボルボ
世界一安全な車のメーカーは、いまや世界一麗美な車のメーカーに。透明感のあるデザインは世の中の一歩先を歩いている。魅力はシート。いくつもの車に乗ってはみたが、ボルボを超えるシートを持つ車は無い。腰痛が治る神話は真実かも。
プジョー
細かく練られて作り込まれたデザインが魅力の一つ。販売する地域に合わせてパワーユニットが変えられるよう、ガソリン、ディーゼル、PHEVにEVまでもワンモデルで作り込んでしまう良心が素敵だ。円安さえなければ日本車と比べても高額でないのも◯
ルノー
個性派揃いと思わせながら、実直なクルマ造りが好印象。欧州初の量産ストロングハイブリッドの技術力も、後輪操舵の制御技術も一級品。最大の武器は、その技術を感じさせないオシャレなエクステリアだろう。
その車 分身か(クルマ選びの星座線)
では、日本車に魅力は無いのだろうか。私はここで、もう一つの提言をしたい。
私が輸入車から降りて日本車に乗るのは、輸入車、日本車という括りではでは得られない新しい世界が見えたからである。それは性能の良さ、異文化の魅力とは違う、もう一つのクルマの見かただ。
ひとつ 色は赤か青
ひとつ インテリアは素敵質素
ひとつ 特徴的なエンジン
ひとつ ベニヤ板の乗る車
ひとつ 車に乗るなら地面スレスレ委員会(ノーマル車高支部)
これらは何を表している?
これは、私が車を選ぶ時の基準である。車選びはその人の個性が現れる。個々のポイントを繋ぎ合わせると、必然的に似たような車選びがされるようになる。当然、自分の気にいる愛車になるわけだが、外から見れば「また同じような車を選んだね」と言われるのも当然だ。
そう、それで良いのである。同じような車は、今までの生活にピタリと合うから乗り継ぐのだ。便利だから乗るのではなく、格好良いから乗るのではなく、自分に似合うから乗るのである。
そして、個々のポイントが自分自身の個性になり、着こなしている状態になれる事。誰から見ても似合っているねと言われる車になれば、とても幸せなことじゃないか。
赤くて背の低い直列5気筒 V50
赤くて背の低いドッカンディーゼル V40
赤青ステッチスモールディーゼル 308SW
そして青くて背の低いスポーツハイブリッド CIVIC eHEV
どうだろう、似合うでしょう?
例えば、私がオフ会にアルファードで現れたら、何かショックな事があったのかと困惑するだろう。私がレクサスで現れたら、闇の世界に身を投じたのではと気味悪がるに違いない。さえないブロガーまこまちさんは何処へ行ったかと嘆く人は多いはず。
この例は、車が悪いわけではない。似合わない人が乗るから、印象が悪くなるだけだ。
私が乗るならコレ!という車に乗る。どんどん愛車の歴史を重ねて、自分の車選びの個性を磨く。そのうち、自分に似合うと言ってくれるようになる。車の持つステータスを完全に着こなせるなれば、とても幸せなことである。
自分の個性という星を繋ぐ星座線で車を選ぼう。そうすれば、輸入車と日本車の境界線を恐れることなく、胸を張って車を選ぶことができるはずだ。
輸入車も日本車も魅力的ならそれで良し
長いこと輸入車に乗っていたから、魅力に満ちた日本車達を見落としていた。
大人の手に届く幅しかない軽自動車は、街中スイスイ。どこまでも気を遣った車内の小道具も面白い。設けられた足枷のおかげで、世界に誇れるミニカーになったことが誇らしい。
衝突時安全性から予防安全にシフトしたことで、相対的に軽自動車の安全性も高まってきたことも朗報だった。
普通車の性能は輸入車に随分と近づいた。場合によっては超えることもある。ハイブリッドカーは日本人の叡智の結晶で、これを味合わずにどうするのだと言いたくなった。「日本国内での高燃費」「日本国内での走行性能」と枠を絞れば、楽しくてファンな車は沢山ある。
もちろん、日本車にはない高性能に魅力を感じる輸入車は素敵だ。高性能でなければ実現できない低負荷領域の味もある。使いきれない性能という矛盾も、爪を隠すようで気分が良いのも当然わかる。デザインは、まだまだ日本車では及ばない。スペース効率を気にする日本車に抑揚あるボディラインを作り上げるのは経験不足だ。
しかし、その魅力を一蹴できる日本車が現れ始めたことも事実なのだ。
すると、車選びは一層大変になることだろう。好きな車を見つけるのは意外と大変なことだし、失敗することもある。車選びでサイトを検索し続ける時、かなりの人は自分の選択に誤りがないか恐れていることだろう。
そんな時、日本車乗りが輸入車に目を向けないのは勿体無いし、輸入車乗りが日本車を切り捨てるのもまた間違いだ。車選びの星座線は、私がお勧めしたいハッピーな車選びの指標である。
もしも、輸入車に乗りたいけれども選び方がわからないなら、対価を支払える魅力のある車を選ぼう。
もしも、輸入車を辞めなくてはならない時は、自分に似合う車を選ぼう。
どちらも、人に誇れる車選び。大丈夫、私が存分に支持しよう。
結びの瞬景
もしかしたら、日本車と輸入車を乗り継いだ上での、新しい知見なのかもしれない。私の車歴が次の車を日本車に向かわせたのかもしれない。mazda 3 の印象が日本車の魅力を高めたと言っても言い・・・いや、結局のところ車選びの手法が変わったわけではないのかもしれない。
今回の車選びは、まるで衣装を選ぶように決めてしまった。HONDA CIVICは自分に似合うはずだと感じてしまった。(HONDA ZR-Vは似合わないと感じた汗)自分の今までの車選びの延長線上にある、納得できる車選びだ。
やはり、車は楽しいレジャーだ。いつの日か自分の命が果てるまで、続けていきたい趣味である。