【ノベル風旅行記】秋の北信濃①引っ込み思案の硬い硬い化けの皮

旅行話をノベル化するなんて、自己満足である事はわかっています。読み手無視かもしれないし、ブログと言えないかもしれません。

 

それでも、新しいことにチャレンジしたいという気持ちはとても強く、おこがましいけど、ひとつのジャンルができたら良いなとも思うわけです。

 

世の中に溢れ、自分でも反省し続けている、つまらない旅行記の書き方に、一石を投じれると嬉しいな。

 

 

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北信濃オフ会旅行記 その1「引っ込み思案の硬い硬い化けの皮」

 

(・・・・)

 

(・・・おおい、きこえ・・・るかな? 僕の声は届いているかな?)

 

(・・・まだまだなのかな。でもきっと、もうすぐ聞こえるはず・・・だよね。)

 

(・・・・)

 

 

天気予報の予想とはかけ離れた、多少雲が残るものの青色のほうが多い秋晴れの空。私たち家族”3人”は、関越道のサービスエリアで休んでいた。朝ごはんは有意義に、田舎の風景を見ながらとろうと決めていたにもかかわらず、ひっくりかえしたゴミ箱のように人の多いところで休憩する、それこそ雲行きの怪しいドライブ旅行の幕開けだった。

 

「まったく、事故をする前に安全装置のついた車に乗って欲しいや。」

 

と私が怒って見せる。不意に起きた事故渋滞に、ついつい不満が爆発する。

 

家内は「そんな事で怒るものじゃない。事故にあった人が一番辛いのだから。」と私を諭す。まったく良い家内であるが、「自分が事故に遭ったら辛いでしょう?」という精神的追加攻撃は、少々(うるさい)と思ってしまうが、このやりとりはいつもの事だから仕方がない。

 

高坂SA

高坂SA じゃがバター天

 

高坂サービスエリアで、じゃがバター天を食べながら空を見る。自分で望んだ旅行だから、ケチがつくのが嫌だった。本当は一人でゆくはずだった旅行だが、家族”4人”で行くことにした北信旅行。せっかくの高速代と軽油代を払うのだから、皆で行った方が安くて幸せに決まっている。寂しがりやじゃ、ないんだからねっ。

 

遠くから、「渋滞のせいで予定が狂って一箇所行けなくなりそうだ。」という嘆きの声が聞こえてきた。余裕をもってスケジューリングしなかった、あんたが悪いんだと言おうとして、それが自分に向けられる言葉だと理解したから言うのをやめた。せっかくの青空がもったいない。旅行だもの、もっと楽しく行こうじゃないか。

 

 

ある朝起きたら、スマホのメールアイコンに通知を示す印がついていた。そこには一文、簡単な言葉が書いてあった。

 

「そろそろ一度逢いたいですね」

 

起き抜けにスマホをいじるのは、悪い癖。おはようの挨拶は、一緒にいる家族に向けるのが望ましい。

 

そう考えながらも、やはりスマホを覗き込む。家族はまだ寝ているし、声をかけたら可哀想だ。今は手のひらの中にも世界があって、私もそこに居たいから、ついついおはようをスマホに向けてしまうのだ。楽しい言葉を沢山見たいし、自分の世界を広げたい。SNSにハマる人の、共通の考えではなかろうか。

 

そんな世界の住人から、驚くようなメッセージが届いたのだ。悩まずにはいられない。プチオフは悪くない。絶対に楽しいと想像できる。

 

けれども、(大変に、とっても失礼な話であるが)詐欺とかだったらどうするべきか。私の Peugeot 308SW が取られてしまったらどうするか。それ以上に、オフをするには距離がなかなか遠すぎる。太平洋側と日本海側。狭い日本と言われながらも、片道4時間は40代にはヘビーである。

 

ぐるぐる考える。自分の希望、家族への説明、相手の都合。ときより、すこしエッチなバナーが現れ心を癒やしてくれはするが、スマホを見るたび、返信をどうするべきかと悩み続けた。

 

メールをくれたUUさんは、パワフルだ。

 

彼は私をSNSに引っ張り込んだ立役者。片手間に、ブログの通知を行うだけの簡易CMとしてしか見ていなかったTwitterで、かなり無理やり私に声をかけてきて、いつのまにかブログを語る繋がりを持った。

 

当時は私のブログのほうが、閲覧数で先を行っていたから、どんな工夫をするべきかと話を沢山していた。今では逆転されたけれども、クルマやブログの話をすると、時折、涙が出るほど楽しい時間を過ごすことができるような仲になった。

 

SNSで彼と知り合って、すでに2年は経つだろう。気の良さそうな、真面目そうな印象を抱く彼の顔は、実はまだ見たことがない。

 

当たり前。SNSとはそういうもので、わざわざ会わないからこそ楽しめる側面も持っている。人脈も利益も求めない世界だから、名前を知らない間柄だから、深い話もできるというもの。いつまでも、そのままでも良いと思うところもあるのだ。

 

なかなか悩ましいメールが来たものだと考えながら、それでもオフには行ってみたいと憧れる自分もそこにはいて、考えはなかなか纏まらず。とにかく「そうですね。」と素っ気ない返信を書いて、その場をひとまず切り抜けた。

 

 

(ああ、なにをやっちゃってるんだろう、困ったものだね。)

 

(乗り始めた時は、もっと前を向いていたじゃないさ。)

 

(勝手に落ち着くのは、やめて欲しいんだけどな。)

 

誘われて数日がたった夜。子供を塾に迎えに行く。Peugeot 308SW は、いつも通りの走りを見せる。距離を走ったプジョーの足は、人に自慢したくなる。時には硬く、時には柔らかい乗り味を、誰かと共有したいと、思ってしまう。やはりオフには行きたいと、思ってしまう。

 

「パパ、今日ね、苦手なイオン化傾向が解ってきたんだよ!」

 

という娘に、私は「ふぅん」と返す。いい父でいらねばならないが、イオン化傾向は私も苦手なのだった。

 

「どうだい、目標の学校には行けそうなのかい?」

「うーん、まだ判らないよ。この前の模試の判定は良かったんだけど。」

「頑張ってるところ申し訳ないのだが、パパだけ旅行に行こうと思うんだよね。」

「いってらっしゃい。」

「冷たいじゃない。」

「ママとかはいるんでしょ?私も家で勉強しているよ。」

 

あんまり勉強すると堅苦しい人間になるぞと言ったら、「堅苦しいのはパパじゃない?パパはもっと子供のやる気を引き出すことを言ってみせてよ。」と言ってきた。今はトンチを言う力は、私には残っていないんだけど。

 

一人で考える悩みというのは、いつまで経っても、止まらない。

 

車が好きで、ブログに自分の愛車のことを沢山書いて楽しむ日常。沢山の読者が居る中で、ブロガーの繋がりは特別だ。同じ趣味を持つもの同士。リアルな友人にはその繋がりは求めない。赤裸々を書くこともあるし、冷やかされるのは、まっぴらゴメンなのだから。

 

そんなレアな繋がりを、もっと大事にしたほうが良いのではないだろうか?今年はいろいろな事があったんだから、オフ会に行くというのも、変化のひとつとして捉えてみるのも良いのではなかろうか。堅苦しいのも、卒業したいし(私は柔軟な人間だと思って入るのだけれどね。)

 

家内に相談をしてみると、「GoToトラベルで行ってみればいいじゃない。」ハハハ、答えは簡単に出るものだ。早速、会う約束を連絡する。歓喜のメッセージが返ってきて、久しぶりに心の底から喜びが溢れ出してくる。そして嬉しいことに、くるすぺさんにも逢えるというじゃない!

 

一人で行くドライブも、宿泊も、オフ会も合わせて初めての体験だ。私は楽しい未来を考えながら、マップソフトで集まる場所を選ぶのだった。

 

 

関越自動車道から上信越自動車道へ分岐する。私は迷わず、長野方面へ舵を切る。遠くに見える山々は、黄色みがかって紅葉の景色を予感させる。

 

赤く染まった木々の間を走るのも楽しいけれど、遠くに見える山と街のコンビネーションも悪くない。そのうち山は険しい模様に変わってきたが、映画を見るように変わりゆく景色に、少し心が落ち着いてくる自分がいることがよくわかる。ここのところ、オフ会への初参加には嬉しさと不安がつきまとっていた。家族との別行動も、正しい選択だったか考えずにはいられなかった。

 

ようやく、落ち着いては来たのだったが。

 

11月に上信越自動車道を走るのは初めてだ。軽井沢へは何度も足を運んでいたが、最近は諏訪に行くことが多かった。どちらも都会には無い表情が見れるけど、関越道へのアクセスが幾分悪いところに住んでいることも手伝って、中央道で行ける諏訪を選ぶことが多かった。

 

今回に限っては、北信エリアでのオフ会ということも手伝って、距離が短く制限速度で優位にたつ、上信越道を選んでみた。一人で行くはずだったドライブ旅行は、家内の放った「小布施は行ってみたいところの1つなのよね。」という言葉で家族旅行へ格上げした。反射神経がたぎるような速さで、まさに電光石火のように決めてしまった。

 

「一緒に行こう、ママは小布施を見て歩けば良いじゃない。パパはまだ見ぬ友人と、楽しい時間を過ごしてこよう。」

 

一人で何かを楽しむよりは、家族で何かを楽しみたい。時間は有限なものだから、出来る限り共有したいし、楽しみの抜け駆けはあまり気がすすまないのである。

 

だから、高坂サービスエリアでの、朝ごはんが旨くなかっと家内や息子の報告は、ケチが付いたようで嫌だった。ドライブ旅行のスタートを、やり直したいという気分になった。朝の事故渋滞は、悲しいくらいに私の心に引っかかりを残していて、心の狭さも感じるから悲しかった。せっかく珍しく関越道から来たというのに、いろいろな事が台無しではあるまいか。

 

「横川で休憩しよう。」と、家内と息子に声をかける。ふたりとも、私の機嫌を察してなのか、口数も少なくなっていた。

 

(まったく、家族もハッピーにできないのかい?)

 

・・・え?今、私に声をかけて来たのは誰だ?家内でも、息子でも、オーディオからの声でもない。紛れもなく私に向けられたメッセージ。頭の中に響いてくる、子供の声のような、人の声とは少し違った言葉だった。

 

「誰?」と、焦る私。

 

「え?」と家内。「誰も何も言っていないけれど?」と、怪訝な顔でこちらを覗き込んできた。

 

「大丈夫・・・心配いらないよ。」

 

私は、気の所為だと思いこむことにして、横川サービスエリアにクルマを止める。家内と息子は、お目当てのものがあるのか屋台のほうへ速歩き。私は、さっきの声はなんだろうかとモヤモヤしながら、Peugeot 308SWのハッチゲートへ手を置いた。その瞬間。

 

(君の心に話しかけているんだよ。僕の声が聞こえるかい?)

 

えええ、何事!? 話しかけているのは、もしや愛車の、Peugeot 308SW かい!?

 

横川SAと308

 

あとがき

秋の北信濃旅行記、お読み頂きありがとうございます。

 

この物語は、事実を題材にしたフィクションです。実際の登場人物は実在しない可能性があります。UUさんもくるすぺさんも、しっかり実在しておりますが(笑)

 

旅行記というのは、なにせ閲覧数が伸びないコンテンツです。そいつをなんとか、楽しく読める記事にしたい。そんな想いで旅行記記事を書いています。何話かに別けて書き上げるシリーズもの。ゆっくりゆっくり、書きますよ。