CIVIC e:HEVを選んで、一年が経った。mazda3 と比較し、スポーツハイブリッドに惹かれてシビックを選び、契約した2ヶ月後に PRIUS が発表された。PRIUS がナンボなもんじゃいと言いながら、デザインに驚愕し、スペックに慄いた。
車選びは喜びと後悔の連続だ。ニューモデルが出て飛びついてみたら熟成不足なこともあり、それでも新鮮味は不満を超える喜びにもなる。コレと決めたのに、すぐに他が欲しくなる。車好きはきっと一生、喜怒哀楽の報われない車選びを繰り返すことだろう。
今回のテーマは、ニッポンのCセグメント頂上決戦。主張の激しい3台のCセグメントハッチバックを一気乗りした感想と共に、それぞれの特性と優劣を語っていきたいと思います。
なお、monogress は個人ブログです。今回の比較記事は、個人的意見が満載です。どうぞ温かい目で読んでいただければ幸いです。
PRIUS / CIVIC / mazda 3 頂上決戦!
比較車紹介 TOYOTA PRIUS
TOYOTA ZVW60型 PRIUS Zグレード(2WD)
全長 4600mm 全幅 1780mm 全高 1420mm
車重 1420kg
WLTCモード燃費 28.6km/L
M20A-FXS 2.0L 直列4気筒エンジン + モーター
車両本体価格 370万円
(撮影協力:UUさん)
比較車紹介 HONDA CIVIC e:HEV
HONDA 6AA-FL4型 CIVIC e:HEV(2WD)
全長 4550mm 全幅 1800mm 全高 1415mm
車重 1460kg
WLTCモード燃費 24.2km/L
LFC-H4 2.0L 直列4気筒エンジン + モーター
車両本体価格 394万円
(撮影協力:筆者まこまちの愛車)
比較車紹介 MAZDA mazda3
MAZDA 3DA-BP8P型 mazda3 (2WD)
全長 4460mm 全幅 1795mm 全高 1440mm
車重 1410kg
WLTCモード燃費 19.8km/L
S8-DPTS 1.8L 直列4気筒ディーゼル・エンジン
車両本体価格 328万円(Burgundy Selection)
(撮影協力:パンプケンさん)
比較車の系譜
2018 年に mazda3 が発表されたとき、日本のクルマ好きには衝撃が走ったに違いない。今までの日本車には見られなかった、感性に訴えるデザイン、そして日本らしい「いぶし銀」な車作りで、新時代のマツダは面白いクルマを発表してくれると期待せずにはいられなくなった。実際、mazda3 はCセグのレベルを引っ張り上げる役割を示したのだ。
マツダの提案を受けた時、今後のライバルがどのように現れるかにも興味が湧いた。他メーカーを気にする、話題に上がるようになったこと自体、mazda3の功績だったに違いない。
そこから随分遅れて発表されたのは、HONDA CIVIC だ。ガソリンモデルから出発したシビックは、発売当初からハイブリッドを宣言した。これは紛れもなく TOYOTA PRIUS 対策だった・・・いや、COROLLA 対策だったわけだ。e:HEVがあればトヨタ・ハイブリッドを、楽しむというポイントで超えられる。マツダを意識したところもあるだろう、デザインのレベルを上げてきた。
ただ、直接対決というよりは完全な別路線。ちょうど、ホンダはデザインをスッキリさせる方面にシフトしていたから、エモーショナルなマツダ「魂動デザイン」とは正反対だ。うまく棲み分けができるようになっていた。そしてここまでは、PRIUS の予想は誰にもできなかった。
2022年末、世界は PRIUS のカタチに慄いた。
PRIUS はデザインはエモーショナルに、走りはハイブリッド一番をと、しっかりと両車にぶつけてきた。カタログを3車揃えた時、いちばんスペックが良く、いちばん格好良いのは、間違いなく PRIUS だ。ここに他車が捨てつつある未来感もしっかり残した。全方向全方位戦略のトヨタ、さすがと言うしかない。
離れていたライバル関係を、否が応でも戦わせる存在になった PRIUS。痺れるCセグウォーズの始まりは、王者トヨタによって作られたのだ。
プリウス・シビック・マツダ3 コックピットの比較
TOYOTA PRIUS 挑戦的なエクステリアからは想像できない優しさがある
秋の校外道路を、ライバル視しあう 3 台で乗り比べる。からっとしていて景色良く、ドライブ日和。
TOYOTA PRIUS に乗り込んで、姿勢をあわせる。少し遠くに見えるメーター表示は相変わらず賛否両論。ステアリングをメーターよりも下に位置させなければ見えづらいのは確かだが、私は Peugeot i-Cockpit で慣れている姿勢である。メーターはしっかりと見えるし、少ないインフォメーションも考え方を変えれば煩わしさが無くて良いと感じる。
視界は独特。Aピラーは他の2車には無いもので、液晶メーターと合わせて視線を前方、奥の方を見るように促されている感覚になる。Aピラーの延長線上にステアリングとメーターの延長線とが交わって、そこにビームが放たれるような錯覚に陥るのだ。運転の基本は「遠くを見ること」。挑戦的なエクステリアから想像できない、自然な優しさに感心だ。
強いて言えば、Peugeot のそれはシートの位置やステアリングの角度まで含めて運転しやすく設計されているのだけれど、PRIUS は「たまたま」こうなった、と感じてしまう。要するに煮詰めが甘い、けれども良い方向性だとも思う。もう少しシートを下げ、身体を起こして運転したいところなのだが、肉厚なシートと低い全高がある為には仕方がないのかもしれない。
PRIUS の将来が楽しみになるコックピットであった。
HONDA CIVIC ノイズレスな視界は素晴らしい
PRIUS のコックピッチが今までの先進的モデルの延長線上にあるのなら、HONDA CIVIC は逆になるだろう。オーソドックスな着座位置は好感を持てるし、従来のFF車にありがちだった大きなダッシュボードは無くなって、本当に大きな視界を手に入れた。Aピラーをドライバー側へ引き寄せる、現代のスタンダートに則っているとも言えるだろう。
パンチングメタルがあしらわれたダッシュボードは個性的だ。エアコンの送風口をデザイン的に隠していて、これもノイズレスに貢献している。液晶メーターは(EX / e:HEV は)2眼分を確保するが、ナビ画面が表示されるようなびっくり仰天表示は無く、あくまでスッキリ重視。運転はし易いはずだ。
少し残念なのは、座面の肉厚さの不足。クッションはあるのだが張りもあり、長時間乗車ではお尻が痛くなってくる。そろそろ休憩かな、との合図にもなるのだが、そんなのは要らない合図だ(笑)。尻が疲れた・・・嫁さま交代してくんろ、となるのだが、シートメモリーが付いておらずシート位置がわからなくなる。私は CIVIC e:HEV を2度は買わないが、将来買う人の為にマイナーチェンジで直して欲しい。
MAZDA mazda3 脱帽のダッシュボード 基本性能を無視しないマツダの美
3車の中で一番オーソドックスなのが、mazda3 だ。だが、質感は1位だろう。ダッシュボードに張り巡らせるソフトパッド、視界に入るステッチ、高級時計を思わせる3眼メーター。センターにどっしりと置かれるシフトレバーも相まって、オーナーとしては満足感の高い買物になるはずだ。
着座位置もセオリーとおり。運転姿勢もセオリーとおり。細部にまで拘ったインテリア・デザインを見せつけつつ、クルマの基本は一切無視しないのが mazda3 の良いところ。早い時期からセンター・ディスプレイを横長表示にしているのも特徴的で、しかもこいつが格好良い。魅せるのが本当に上手なメーカーになった。
全高とデザインの妙であろう、閉塞的な感覚が PRIUS / CIVIC とは方向性の違いを伺わせるポイント。昔ながらの「クルマ」の雰囲気を存分に味あわせてくれるのだが、先進性は感じない。ここが mazda3 の良いところであり、ネックなところでもあるのかな。
コックピット比較の結果
インテリアはどうしても好みの関わるところだが、イチオシはやはり mazda3。そもそも、車両価格から見れば異常としか思えない質感だ。脱帽しすぎてカツラまで取れそう。マツダさん、やりすぎでしょう(笑)。最近、RetoroSportsEdition(XD 350万円)が発売された(2023年11月時点)が、こいつもまた憎らしい。特別仕様車の買い得感は高い。
車名 | スター | コメント |
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PRIUS | 未来的感覚に飽きなければどうぞ | |
CIVIC | どこまでもスッキリ だから高級感がない | |
mazda3 | 高級感の塊 ゴテゴテしいと言えなくもない |
プリウス・シビック・マツダ3 走行性能の印象比較
不整路通過とサスペンションは mazda3 と CIVIC が質感高い
その、コックピット No1 の座に輝いた mazda3 を筆頭に、今度はシチュエーション毎に評価したい。
mazda3 は、一言で言い表せば「塊感のあるクルマ」。見た目からも想像できるように、(ファストバックに限るが)無骨なCピラーはボディ全体の硬さを引き締める。おかげで歪みが少なく、サスペンションも良く動く。だからか、大きな揺れがあったとしても、身体には衝撃を伝えず、メリハリよく上下するだけで済む。
試乗路は雪国らしく路面のひび割れの多い道だ。mazda3 も、ひび割れを通ればゴゴゴと音を発するが、相変わらず不快にはならない。パンプケンさんの愛車である、この mazda3 に乗るのは3度目だが、相変わらず柔軟性のあるしなやかな乗り味には感心する。
CIVIC e:HEV は、これは方向性を変えて素晴らしい。足腰を上下するのはもちろん、路面のノイズの殆どを吸収するのだ。感触としては mazda3 と同様、ゴゴゴ音は聞こえるのだが、そのボリュームは控えめだ。アクティブ・ノイズ・コントロールの性能や、タイヤがミシュランなのが功を奏しているのだろう。
サスペンションは動きも良く、設置感もしっかりある。mazda3 に比べればサスペンションが元の位置にもどる速度が幾分速いが、十分に快適だろう。気になるのは、ホンダの技術者に言わせるところ、「このセッティングがたまたま出来たもの(汗)」だということ。おいおい、技術のホンダさんよう・・・と言いかけたが、そんな事はオーナーにしか言う権利はないのだった。試乗してめっぽう気に入った私は、年次改良で悪くなったらもったいないと、すぐにオーダーを入れたのだった。
ここで PRIUS の登場だが、揺れはうまく抑えるものの質感では2車に劣った。不整路での揺れの抑えは上手である。しかしゴゴゴ音は強く出るし、そもそもサスペンションが少しビビる感じをどうしても否めない。とても些細なことなのだと思うのだが、乗り比べるとわかってしまう。
車名 | スター | コメント |
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PRIUS | 足りないのは質感 | |
CIVIC | とても静か 揺れが速いのをどう捉えるか | |
mazda3 | 結果的に気持ち良い 静寂性が気になる程度 |
mazda3 と CIVIC の エンジンフィーリングが光る
TOYOTA PRIUS は渾身の力を込めて「エモーション」をカタログに記載した。エモーション = 感情に訴える、つまり感動するということであれば、少なくとも走りの質感はその領域に居ないだろう。
だが私は、これは前向きなギミックなんじゃないかな、ワザとなんじゃないかな・・・と感じた。まず、アクセルは結構踏み込む力がいる。PRIUS のアクセルペダルはオルガンタイプで、踏みやすいし気分も良い。しかし、反力が強くて踏み込むづらいのだ。そして、踏み込んだときのエンジン音には感動を覚える和音は無い。これを、踏み込みにくくしているんじゃないかと勘ぐるほうが自然だろう。
でも、仕方のないことだ。多くの顧客の相手をしなくてはらなない PRIUS なのだ。踏み込んだり速度を出したりすること自体、嫌いな人もいるだろう。沢山の人が乗る PRIUS に対し、もっと気持ちよく速度を出せるようにセッティングして欲しい、ということ自体に無理がある。PRIUS の目指すところは、そもそも「エモーションな走り」では無いのではないか。
そのあたりは、別のクルマに任せておけば良い。ピカイチなのは CIVIC e:HEV。ハイブリッドのラバーバンドフィールは払拭した。電気モーターだけで走るスムーズさに、発電担当のエンジンはステップ制御がなされるから、気持ちよくて仕方がない。澄んだ心地のエンジン音も気持ちよく、Cセグメントでは一番の実力者。爽快を目指した走りのセッティングは素晴らしくて、速度が早かろうが遅かろうがクッキリ解像度の高いクルマの動きを感じ取れるのが好印象だ。
mazda3 のディーゼル・エンジンも、少し湿ったようなエンジン音が気持ち良い。絶対的な加速力があるわけでは無いのだが、エンジン車らしく回したときに気持ちが良いと言えるフィーリングに調整してある。ハイブリッド・スポーツを乗ってしまうと一昔前感があるのだが、これはこれで良いと言わせる「エモーション」があるわけだ。
感動の立役者は、偉大なのである。
車名 | スター | コメント |
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PRIUS | 加速させないようにしているとしか思えない | |
CIVIC | Cセグメント最高を与えても良い | |
mazda3 | 走りやすいが 古さを否めない |
日常の扱いやすさ 車両感覚の美体験のある PRIUS 最小回転半径に難のある CIVIC
そんなこんなで走りについては”けなされ”気味の PRIUS だが、少々ビックリするポイントもある。ワンモーションフォルムを実現する為のAピラーだが、未来感ある景色もさることながら、車両感覚がとても掴みやすかった。先にビームが出そうと謳った、あれだ。
走行中、右折車両が走行車線にはみ出し気味の箇所があったのだが、数分も乗車していない PRIUS であるにも関わらず、スルリと怖がらずに抜けることができたのだ。ボディ幅が軽自動車のようにわかりやすい。カタログ値に現れない美点、私はこういう性能が大好物だ。
CIVIC にしても mazda3 にしても、セオリーとおりにAピラーを手前に戻した結果、視界こそ広がるが車両感覚は掴みづらくなったと感じる。ボンネットが見えれば良いのだが、どうしても着座位置を低くしたくなる車達だから、ギリギリ見えるか見えないかの位置にならざるを得ない。 PRIUS は偶然なのか設計なのかは不明ながら、Aピラーが良い仕事をしている事を伝えておこう。
もう一点、扱いやすさを伝えておく。最小回転半径だ。mazda3 は、5.3m という見事な小回り性能を見せてくれた。試乗コースには120度に左折する交差点があったのだが、5.7m の CIVIC は切り返しを意識しなければならないところ、mazda3 はミズスマシのようにスルリと曲がった。PRIUS も追従し 5.4m(1.8L版は 5.3m)で扱いやすい。
CIVIC は速度を出さなくても気持ちよく走れる実力の持ち主なのだが、細かく見ると文句を入れたくなるところもある。最小回転半径は主要諸元にも記載される重要な項目だ。日常のストレスは、些細なところに隠れている。
車名 | スター | コメント |
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PRIUS | このスタイルだから我慢!が無いのが良い | |
CIVIC | 狭い道には入って行きたくない | |
mazda3 | 狭い道にも入っていける勇気は出る |
走りの総合評価
さて、ここでは加点対象にはならないが、クルマの走りの印象を伝えておこうと思う。
3車で引き分けになる領域がいくつかあり、例えばワインディングでのフットワークは三者三様、どれも文句のない走りである。mazda3 は低重心かつ車両の中心で回転する感覚が面白い。CIVIC は車両重量としては一番重いにも関わらず、それを感じさせないフットワークの良さに二重丸。では、PRIUS はと言えばカーブでも腰砕けにならず、リア・サスペンションの踏ん張りも効いて見事な旋回性能を見せつけた。
新型PRIUS は、特殊なタイプのタイヤを履いた(195 50R19)。タイヤの思想としては BMW i3 に搭載されたブリジストンの ologic で、接地面積を車両進行方向に多く確保するものだと思う。今回は、しっかりと曲がれるし止まることができることを確認できた。限界性能はわからないが、スタイルとの調和と考えれば有効な手段。普及するか見守っていきたい技術である。
CIVIC は本当に爽快だ。何度も言ってしまうのだが、ノイズレスが際立っていてる。実はオーナーだからわかるノイズがあって、高速走行中のステアリングの微小角度変更に引っかかりがあるのだが、そこを加味したとしても PRIUS や mazda3 とは比較にならないスッキリ感。日常の扱いにくさに憤怒の形相になることはあるものの、なにそれ美味しいのと跳ね除けてしまう実力の持ち主だ。
そのスッキリをベースとして、e:HEV として突き詰められたモーター走行、そしてエンジンのステップ制御。ドライバーを愉しませるギミックで夢心地。欧州Cセグメントだけでなく、Dセグメントまでも喰ってしまう可能性さえある独特の世界観は、一度試乗をおすすめする。
mazda3 は、今回のグレードでは秀でたものがあるわけではない。だが、高い次元でクルマを纏めていることが良くわかる。ほとんどの比較で優劣がつかない、もしくは僅差で負けというくらいで、正直言えば「いいとこどり」状態だ。速度を惰性でコントロールできるところも、自転車のようで理解しやすい。そして、ズバ抜けた実力のインテリアとエクステリアで勝負ができる。
mazda3 は 2019年発売だから・・・あと3年もすればフルモデルチェンジだろう。新しく生まれ変わる次期型 mazda3 は、どのように仕掛けてくるか・・・やはり楽しみな一台である。
プリウス・シビック・マツダ3 デザインの比較
TOYOTA PRIUS 一瞬で惚れ込むデザイン
トヨタの底力は沢山あるけれども、デザインにおいては新しい提案を普遍的なモノへ変える真似できないパワーがある。最初は意外過ぎて受け入れられなくとも、だんだんと馴染んでいき普通になるトヨタイズムを、今まで沢山見てきた。
PRIUS のそれは、目を引くのはドアーに刻まえたエッジ、張り出したホイールアーチ。美しい女性のようなディティールが惜しげもなく振る舞われている。おかげで車内は少々狭くなるのだが、最近の車は大きくなりすぎた。ぎゅっと塊り、引き締まったボディは誰もが格好良いと評価するから、些細なことだろう。
全角度、どの方向から見ても素晴らしい造形。デザインとは今まで見てきたものの積み上げだ。私達がもっとも美しいと感じるものは、例えば人間だったり、動物だったり、あわよくば茶碗のような道具であったり、身近な存在だ。人間を描いたイラストに違和感を感じ、よく見てみたら間違った方向に腕が伸びていたーーー人の眼は意外なほどに性格で、だからこそ芸術品は心にスッと入るカタチに仕上げなくてはならないと、偉そうに話していた自分を思い出す。
PRIUS はどうだろう?スッと入るディティールばかりだ。ピアノブラックで大きく表現されたリア・コンビネーションランプの形状も、他メーカーに言わしてみれば「やられた!」。なにせ、このディティールはトヨタのアイデンティティになり、CROWNにまで使われる。一切真似のできないモノになったからだ。
HONDA CIVIC クラシック・カー的な美しさ
さて、先程「誰もが格好良い」と表現したが、実のところこれは40代のおっちゃん的な意見かもしれなくて、現代の若者に通用するかといえば、わからない。人の感覚は進化するし、回帰もする。オールド・ファッションの再来が意味するところは、よく出来たデザインは誰かの心に響き、記憶から蘇るという事だろう。
CIVICは、ボディ表面の各々のディティールには目覚ましい進化は無い。ブログ仲間UUさん曰く「TypeRが前提のデザイン」は正解で、正直、左右あと2cmずつでも良いから幅を広げて、ホイールアーチを膨らませてくれれば良かったのにとはオーナーとしても切望する次第だ。
だが、全体的なシルエットは美しい。運転席を頂点にして、ハッチゲートと一体的になって流れていくルーフラインは清流のように潔く、Aピラーの後退も相まってクラシック・カー的な美しさがあると感じている。塊感をリア側に寄せているから、FF車としての重量バランスが最適化されているように見えるのも、美しく見えるポイントだろう。
実は日本に入ってきていない CIVIC セダンもなかなかなのだが・・・あちらは少しゴテゴテしていて、脱ガンダムデザインを目標にしているホンダにとっては、日本にはイメージ的に合わないと考えているのだろうね。
mazda3 エモーショナルなデザインはマツダだけ
さて、mazda3 はプリウスという強敵が現れて、戦々恐々かと言われれば、きっとそんな事はないだろう。下手をすれば、「なんだ、mazda3 は超えられなかったねハハハハ!」って言っているのかも。PRIUS は強いのだが、3年のアドバンテージをどれだけ積むことができたかと言えば、同点か少し超えた程度かもしれない。
先進的な PRIUS に比べると、mazda3 はやはり古めかしい。それも、日産チェリーくらい昔の美しさを纏っている・・・(コスモスポーツって言えなくてゴメン)・・・魂動デザインはボディの表面の躍動感で表現することを心情とするが、今ほどプレスラインを入れられなかったはるか昔、車の格好良さ、美しさはボディの丸みで表現されていたのである。
改めて mazda3 に対面すると、その佇まいからはエレガンスしか感じない。Cピラーのデザイン処理は、見ただけで mazda3 を思い出すほどの存在感だ。新しさというよりは図太くエロく練り直された過去の味ではあるのだが、それでいいし、それが良い。
十分に一目惚れするデザインだし、特に mazda のデザインは、車両のセグメントの枠を超えて次を見たくなる格好の良さだ。このワクワク・・・エモーショナルなデザインは、PRIUS の超えられない、mazda3 の真骨頂的優位点だと私は感じる。
デザイン比較の結果
とことん拘ったデザインは、本当は3車ドローとしたいのだが・・・PRIUS と mazda3 はドローだが、CIVIC は一歩譲らざるを得ないだろう。その理由はサイドボディの処理。どこかで見たことのあるもの・・・販売終了になったインサイトのよう・・・となってしまうから、デザインとして挑戦したようには見えないのだ。
せっかくリアシートにも人がユッタリ座れる優秀なパッケージングなのに、性能をデザインで表現できなかったのは減点とする他ないだろう。
車名 | スター | コメント |
---|---|---|
PRIUS | 新鮮味が欲しいあなたへ | |
CIVIC | 見る角度によって印象が変わってしまう | |
mazda3 | アート作品が欲しいあなたへ |
最終結論前の集計
さて、ここまでのスターの数を集計しておく。ここで終わりにしても良いのだが、monogress = エッセイブログらしく「感情的評価」をこの後に用意した。それぞれの点数は、読者様方に委ねることにする。適当に採点してね。
PRIUS | CIVIC | mazda3 | |
---|---|---|---|
コックピット・デザイン | 3 | 3 | 4 |
不整路とサスペンション | 3 | 5 | 4 |
エンジンフィール | 3 | 5 | 4 |
日常の扱いやすさ | 5 | 3 | 4 |
エクステリア・デザイン | 5 | 4 | 5 |
合計 | 19 | 20 | 21 |
あれ・・・mazda3 が 21点とトップである。しかし PRIUS 乗りの皆様、安心してほしい。今最大限に評価しなくてはならない「燃費」を考えれば、以下のようになるのである。
PRIUS | CIVIC | mazda3 | |
---|---|---|---|
コックピット・デザイン | 3 | 3 | 4 |
不整路とサスペンション | 3 | 5 | 4 |
エンジンフィール | 3 | 5 | 4 |
日常の扱いやすさ | 5 | 3 | 4 |
エクステリア・デザイン | 5 | 4 | 5 |
燃費・環境性能 | 5 | 4 | 3 |
合計 | 24 | 24 | 24 |
別に計ったわけではない・・・本当だからね!! それほど拮抗した実力の持ち主なのが、この3台というわけだ。しかし、ここにコスパを含めると結果は変わってくる・・・ガクガクブルブル・・・こちらも皆さんの考え方に委ねよう。
プリウス・シビック・マツダ3 感情的評価
今回の記事での性能比較は、ここまでで終了。最後に、試乗のときに私にクルマが訴えてきた言葉を、人間言語になおして皆様にお届けします。ええ、若干ファンタジーではありますが、これらに共感を覚えたのなら、そのクルマがきっとあなたの一番です。
即、ディーラーに走ってください(笑)
新しい歴史を刻む TOYOTA PRIUS
TOYOTA PRIUS は、今回も実際にはライバルは己自身だ。ハイブリッド車の普及という目的が達成され、存続が危ぶまれもしたが、愛車になるという目標と共にエモーショナルをキーワードに生まれ変わった。
「愛車になる」の定義には違和感はある。車を愛車と呼ぶのは、購入者の勝手だ。先代プリウスだって、愛車と言う人は居たはずだし、トヨタがそこをわからないとは考えにくい。
それでもこのキーワードを使ったことは、2つばかり考えが浮かぶ。ひとつは、トヨタ車はつまらなくありませんよ、という対外的なメッセージだ。今回は走行性能が上がりましたよと声高らかだが、ライバルメーカーのユーザーへも、自社のユーザーへも、楽しい自動車を作るメーカーだと伝えたいのだろう。商品を盛り上げようとする姿勢は、さすがトヨタである。
もうひとつは、元のプリウスユーザーへ、乗り継いでほしいというメッセージだ。PRIUS を購入し盛り上げてくれたユーザーの為に、さらに良い商品を作りました、末長く愛してくださいね、と。つまり、新型PRIUS が愛車なのではなく、歴代プリウスの歴史そのものを愛車にしてください、愛してください、と言っているのではないか。
1997年に発売された当時から、今まで続いている車名は、いくつだろうか。イプサム、ビスタ、エスティマは消えてしまった。ウイッシュ、ガイアはプリウスの後に現れ、プリウスよりも前に消えたのだ。
PRIUS の歴史は絶やさない。トヨタの掲げたメッセージには、そういう強い意志が含まれているのではなかろうか。
技術的負けん気 HONDA CIVIC
歴史を考えると、CIVIC はさらに長い(1972年より生産開始)。ホンダの中では CIVIC は日本では売れなくとも、世界で販売する重要車種。力がこもるのは当然だし、おかげで世界基準の車に乗れるのだから、日本無視の姿勢だって悪いことだけではないだろう。
私が CIVIC に決めた時、たくさんの読者様から「◯◯シビックに乗っていた!」とメッセージを頂いた。車の歴史とは、人の輪を広げるものなのだと感じずには居られなかった。
CIVIC の掲げるキーワードは、爽快だ。その通り、この車はとても気持ちよく走ることができる。車としての完成度はとても高く、プライドを持って車を使っていることがよくわかる。そしてCVCCエンジンの時のように、ホンダ最先端の環境技術が搭載されることも誇りだろう。良くも悪くも、技術屋のホンダを感じることができる、素晴らしいプロダクトだ。
ただ、ここは弱点でもある。素晴らしい車を作っていても、それが理由で売れるとは限らない。N-BOXが売れるのは、ライバルメーカーが強烈なアピールで同じような車を売るからだ。Cセグメントカーのライバルは、それこそ PRIUS と mazda3。あとは輸入車勢になってしまう。日本において VW GOLF や Peugeot 308 と競うのなら、存在感で勝たなくてはならない。
確かに私は爽快は気に入ったし、性能は GOLF をも超えていると確信してはいるのだが、もう少しエモーショナルな爽快があったのなら、と悔しくなる。
それでも、私は選んだ。技術は感情を超えるのだ。勝手な解釈だが、私のような強制ロマンチストには、うってつけの車なのではなかろうか。ホンダの技術的負けん気を感じるクルマ、これが CIVIC だと言えるだろう。
「魂動」の良し悪し mazda3
マツダは、すっかり挑戦的なメーカーの印象がついた。面の表現で高級感を出したのはマツダの強さだ。魂動というキーワード、そしてブランディングと、フォードを抜けてからのマツダの取り組みはとても上手い。
では、車はどうなのかと言うと、若干クラシックな印象がある。最新技術ではなく、既存技術のブラッシュアップだ。SPCCIエンジンを華やかに宣伝すると言うよりは、ブラッシュアップされたトーションビームに評価を集める。
それは、マツダ自体が期待して描かれたものではないのかもしれない。しかし、素晴らしいエクステリア、クラスを超えたインテリア、熟成感あるフィーリングは、総合力に加点を与える。もしも当初からストロングハイブリッドが搭載された車だったなら、こうも魅力的な車になったかどうか。
実はここがマツダの弱点のような気がしていて、最新技術ゴリ押しの車がマツダ感を出せるかどうか、今後のマツダのキーになるだろう。
mazda3 は、そもそもファミリアというファミリーカーの歴史の末端の車である。直径の系譜と捉えるのなら、今回のクルマの中では一番の歴史を持つ。1963年より生産開始、その後アクセラを経由し、mazda3 の名に統一された。ファミリアに比べると mazda3 は随分と魅力の磨かれたクルマになった。
ただ、良くも悪くも、その魅力は mazda3 だけのものではない。マツダ車全てが、同じ言語で支えられている。mazda3 特有の魅力と言えないところが、悩ましい。「魂動」これが mazda3 の全てであるが、我々Cセグメント好きに色鮮やかに映り込んだ「魂動」もまた、mazda3 だったことを覚えておきたい。
装備の差ではない 広さでもない 価格でもない Cセグメントの熱い戦い
途方もなく長い記事にお付き合いいただき、ありがとうございました。細かい装備の差だとか、リアシートの広さだとか、比較するところはまだまだあるのだけれど、私が考える車選びのポイントって、インテリア含む座ったときの印象と、走ったときの印象と、エクステリア・デザインなのかなと。
なので、プラスアルファで「ハイブリッドに乗りたい!」だとか、「エロい赤いボディに乗りたい!」などのそれぞれの個人加点で、車選びを前に進めていただきたい。特に、今回の3車種は一度は乗り比べてから選択を決めて欲しい。全てがオススメの車である。
Cセグメントは他にもある。Volkswagen GOLF / Peugeot 308 / SUBARU Impreza / SUBARU LEVORG。どれも強敵で主張の激しく、選ぶのが悩ましい車ばかりだ。決めるのが大変、失敗したら怖い、車選びに困ったその時は。
インスピレーションを大事にしよう。自分が似合うか想像しよう。感情に眼を背けずに欲しい物を選ぶと良い。後悔しない車選びは、私の経験上はこれだけだ。楽しいCセグメントライフを送ろうじゃないか。
ーーー ◯ ーーー
さて、今回の撮影にご協力いただいた、ウェブ上メディアクリエイターの皆様を紹介します。前回の「【モーター・アーツ】PORSCHE 718 Boxster 秀作に沁み入る美女の味」のアキタロさんの他、今回紹介したいのはこの方!
UUさん(Wonderful Car Life)
自動車ブロガーとして長いお付き合いをしております、大手試乗ブロガー。真面目なインプレッションの他、さまざまな車種の見積もりを公開。ディーラーに行ったら予算以上の見積もりになっちゃった・・・となる前に、Wonderful Car Life で予習せよ!
オーバー・クレストさん(PRIUS NEWS)
今回始めて会うことが出来ました、プリウスを中心に幅広い車種を取り扱うブロガーさん。基本的に長距離思考(通勤・・・)なので、熟成されたプリウスの情報が欲しければ一読の価値あり!
マツダ車の動画を趣味で投稿しておられる他、プロのアーティストとの共演もなさるという大物。繊細で迫力ある映像美は白眉。どうしてこんな方と知り合いになっているのだろう・・・これぞネット世界の意外性だ!
結びの瞬景
インスピレーション!?似合うかどうか!?ならば比較記事なんか書くんじゃねー! って言わないでくださいね(笑)
2023年秋、ブロガーやYouTuberと一部のゲストさんが集まってオフ会が開かれました。私の念願だったCセグメント比較記事も、たっぷり取材が出来て嬉しいのなんのって。ただ、代わる代わるに運転するのですが集まった人数が多く、疲れ切ってしまいました。ほどほどにしないとなぁ(笑)
まだまだ乗っていない Cセグカーが盛りだくさんです。旧プジョーユーザーとしても、新型 Peugeot 308 には乗りたい・・・相変わらず e308 狙いなのは嫁さまには内緒ですが・・・魅力的なCセグカー、どんどん乗り継いでいきたいです。