プジョーが308で目指すものはCセグメントの王者ではなくニッチ市場

前回のお話では、ボルボはCセグメントの王者を狙わないというものでした。VOLVO XC40と、まだ見えないけど存在が確実視されているVOLVO XC20で、ゴルフを挟み込む・・・

 

むしろ、Cセグメントハッチバックは、もう受けない。その判断が、ボルボからVolkswagen GOLF 対抗馬の存在を消し去った、というお話でした。

 

では、しっかりと新型 Peugeot 308 を発表した、プジョーはどのような戦略に打って出るのか。

プジョーのエンブレム

 

2回にわたってお送りします、プジョーとボルボのCセグメントに対する戦略を想像するシリーズ記事。今回はプジョーの考えを、わたしなりの解釈でお伝えします。

 

Peugeot 308は、少しプレミアムな方面にシフトするとしていました。今回発表の新型は、その路線を反映して、エクステリアもインテリアも高品質にまとめています。

 

ゴルフはゴルフで、コックピットのデジタル化、機能ボタン類の液晶集約、そして持ち前の品質の高さで、全体的な高級感が醸し出されている。強いて言えば垢抜けないエクステリアは疑問に思う人もいるだろうけど、好みに左右されるから、あまり問題にはならないでしょう?

 

まだ実車を見ていないからわかりませんが、Peugeot 308 は明らかに対 Volkswagen GOLF 8 用戦略車。お互い切磋琢磨して、張り合ってもらえればユーザーも喜ぶことでしょう。

 

Peugeot 308 は既に Volkswagen GOLF の対抗馬ではない

販売台数争いは過去のも

プジョーとしては、Volkswagen GOLF と僅差で戦ったPeugeot 307の栄光は、本当なら忘れたくはないでしょう。2000年代、ゴルフと307はまさにライバル関係。欧州では308は、ゴルフの8割に迫る販売台数を叩き出していました。

 

308とゴルフの欧州販売データ

 

ところが、Peugeot 308に切り替わってから、販売台数は伸び悩みます。独特の猫ルックのせいなのか、性能差なのか、Volkswagen GOLF が強くなったのか、様々な理由があると想像できますが、とにかく308の生産台数は減りました。

 

私が308の台数が下がった原因を考えるなら、やはりクロスオーバーSUVの勢力拡大が大きいと感じます。

 

乗用車ベースでつくられ、快適性が高く運転もしやすいSUVの車種はうなぎのぼり。その煽りをくらったのが、セダンやハッチバックです。日本でもセダンの衰退は著しく、セダンイノベーションといってテコ入れを目指したトヨタでさえも、諦めたのは記憶に新しいですね。

 

世界の変化がプジョーを襲う

308SW carplay
Peugeot 308 の現行モデルは AppleCarplayに対応など、IT化対応は素早かった印象はあるものの、世間の口コミは製品の良さをこえる力になってしまう。

また、インターネットの普及というのも大きかった。

 

今まではディーラーへ行かなくては手に入らなかった情報が、誰にでも届くようになりました。その情報の中には、他人の評価も含まれます。Volkswagen GOLF はそもそも評価が高く、人気もあった。その追い風は308には吹かなかった・・・イタフラ車が故障するイメージがあるのには、インターネットが犯したところも多いに違いありません。

 

Cセグメントでもっともポピュラーなハッチバック、これを欲する層が少なくなったこと。さらに、インターネットの普及とマーケティングの変化への対応で差がついたーーー車の絶対的性能は別としてーーー私はそう考えるのがスムーズかなと感じました。

 

では、プジョーは新型 Peugeto 308 を投じてゴルフに対抗し、Cセグメントの王者を狙っていくのでしょうか。

 

私は、これは無いと思います。なぜなら、プジョーは既に我が道を行く世界に入っているからです。

 

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プジョーの目指すCセグメント・ハッチバック

万人受けを狙わないモノづくり

プジョーは先代Peugeot 208より、i-Cockpitを導入。現在までのすべてのモデルに、しっかりと搭載してきました。このコックピットレイアウトは実に運転しやすく、疲れにくく、素晴らしいモノ。

 

ですが、万人受けするものではありません。

 

ただ、ドライバーにとって一番大切なコックピットの改造は、大変にインパクトのあることです。このi-Cockpitを導入するとき、経営陣にも様々な意見が出たことでしょう。

 

多くの人は普通のレイアウトが好きなはず。

汎用性がないからコストがかかる。

操作性に自信はあってもとっつきにくい。

最悪、全く売れなくなるかもしれない。

 

しかし、起爆剤が無ければ固定客をも逃しかねない。

インパクトは集客に効果がある。

触ればきっと理解してくれる人はいる。

わかる人にだけわかってくれれば、世界シェアの数パーセントを得られれば、それで良いのではないか。

 

・・・と考えでもしなければ、あの特殊で美しいコックピットを、なぜ全ラインナップに展開できましょう。

Peugeot 208 初代 i-Cockpit
Peugeot 208 の初代i-Cockpit。視線移動を少なくしてストレスを軽減する手法は、背の高いクルマであるほど有効。

 

308 不振の要因は様々

また、プジョー308の販売不振は、クルマ自身の人気だけではないようです。

 

プジョーは2010年には400万台のセールスを記録する・・・という計画を建てるものの、これは未達に終わります。GMとの協業を目論み、原価の削減に挑むものの、これも失敗。そして生産工場の一部閉鎖。度重なるマイナス要因の解決策として、プジョー本家の経営力の弱体化が図られ、フランスと中国企業の経営参加を許します。

 

イメージが下がったことは、販売台数へ直結することでしょう。

 

また、屋台骨を支えるクルマが、Peugeot 308 から Peugeot 3008 へ移行したのは大きいことでしょう。同じCセグメントカーのクルマが、より高価なSUVのほうが売れるという事実。Peugeot 308 はヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤーを取得するものの、販売台数の増加に転じることはなく、主役の座をSUVへ明け渡すことになったのです。

 

308 と 3008 の欧州販売データ
Peugeot 308 と Peugeot 3008 の欧州販売台数比較。2014年、2017年にそれぞれカー・オブ・ザ・イヤーに輝き、販売台数は盛り返す。3008はすでに308を超える人気なのがわかる。

 

308はニッチ市場向けになる

つまり、プジョーは初代 Peugeto 308の不振から、大転換を迫られることとなったのです。ここで明確に表現されたのが、プレミアムセグメントへの移行、キャラクターが明確な独特の車づくりのさらなる推進。

 

もうひとつ、Peugeot 308はすでに王道ではありません。Cセグメントのハッチバックは、小型SUVに取って代わられ、古いボディスタイルと言われてしまうことでしょう。日本で軽自動車が沢山売れているように、世界で見れば背の高いモデルに人気が集まる時代になったのです。

 

すると、Peugeot 308は今までとは立場を変え、ニッチ市場向けになるのだろうと考えられます。背の高い車で育った若者が、将来は背の低くスタイルの良い車に乗りたい、スポーツ走行がしたいけれどスポーツカーは行き過ぎだし、実用も兼ね備えるハッチバックが魅力的、と捉える、まだ見なぬ新しい世代の人へ向けてのクルマになる。

 

そんな未来がある気がするのです。

 

美しい新型308のi-Cockpit。プレミアムカーまではいかない、カジュアル感を損なわないのもプジョーの魅力。

出典:Peugeot MEDIA CENTER

 

この戦略はボルボとも共通すること。プジョーは、ボリュームのあるCセグメントは、2008と3008で充分に賄うことができます。そこへ、さらなるミニマムの208、そして「プレミアム・スポーツ・ハッチバック」というニッチ市場へ本格的に踏み込む、Peugeot 308。

 

その品質はPeugeot 508に迫り、また508は先を目指す。

 

Volkswagen GOLF の辛いところは、大衆車という輝かしいイメージです。高品質だけども、大衆車。そこから抜け出せすことができません。Peugeot 308 には、そのしがらみがありません。

 

Peugeot 308 は、Volkswagen GOLFとは違うフィールドで戦おうとしています。Cセグメントの王者は、もう要らない。Peugeot 308は、Peugeot 308の世界で生きればそれで良い。

 

・・・いいえ、こんな独自のイメージの確立こそが、Cセグメントカーの戦いなのかもしれませんね。

 

Peugeot 308 ROADTRIP

 

改めて数値で見てみると、Peugeot 308 の販売数が減っていることがよくわかります。とはいっても、現行モデルは Peugeot 3008 と合わせれば、生産規模から見てもまずまずと言ったところでしょう。

 

現代は、すでに自動車のライバル関係は希薄になりつつあります。

 

Peugeot 308 と RNAULT カングー のどちらが良いか・・・なんて悩むのは普通のこと。以前はディーラーにいって、マーク2 と チェイサー と クレスタ、どれにしようか悩んでいる、なんて言って値引きを迫るという話もありました。

 

今は、自分のライフスタイルをどちらの方向へ向けるかの選択として、クルマを選ぶ傾向にあると思います。キャンプ多めならミニバンだな、でもドライブを堪能するのも外せないなら、輸入ワゴンもありかなぁ。これはきっと世界的な傾向なのでしょう。

 

さらに今後は、環境対応・SDGsも大きく取り上げられることでしょうし、生産国がどこなのか、というのも選択に入っていきます。個人が「個性」を大事にするように、クルマにも「個性」が求められる時代。大衆車は大衆車のプロに任せるのも、良い選択肢なのかもしれませんね。