熱狂的ファンを生み出したボルボディーゼルを詳しく解説

ボルボにはディーゼルエンジンがラインナップされているが、世界的なディーゼル逆風の中で購入を躊躇っている方も多いだろう。

 

確かに近い未来、無実の罪?で価値のない車になってしまうかもしれないディーゼル車。だが、味合わないのはもったいないほどの魅力も持ち合わせているのだ。

 

ディーゼルに乗ってみたい!でも手を出しづらい!

 

そんな方の為に、ボルボ歴13年、ボルボディーゼル歴では4年目に入った私が、熱狂的ファンを産んだボルボディーゼルについて、徹底解説する。

 

少しでもディーゼルへの不安が払拭できれば幸いだ。

 

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デメリットは主に重さ 意外に受け入れられるぞ

先にデメリットを紹介する。後からデメリットを聞くと、購入をためらってしまうから(笑)。ただ実際は、デメリットをデメリットと感じないほどの魅力がある。詳しく見ていこう。

 

大きいと言われるエンジン音は案外気持ちいい

運転席に座り、エンジンスタートスイッチを押すと、ドロロン!とエンジン音が鳴り響く。だが、うるさくは無い。ボルボのディーゼルエンジンの音の特性は、低回転時に多少低音が響く程度だ。

 

もちろん、ガラガラという独特の乾いたディーゼル音は、ボルボだって鳴っている。けれども、車内に入ってくるのは「気持ちの良い」音域だけ。

 

アクセルを踏み込めば、「ドゥルルルル」という力強くもジェントルな音が響き渡る。その大トルクはっきり言ってスポーツエンジン。コックピットに座れば、ワクワクする貴方がいることだろう。

 

ちなみに、助手席に座る人にうるさいと言われたことは一度もない。停車時はアイドリングストップするし、時速 30km/h も出れば、エンジン音は随分静かになるからだ。

 

高速道路を走る

回答性は悪くなるがドライバビリティは良い

ガソリンエンジンに比べてどうしても重くなるのはディーゼルエンジンの宿命。大きな爆発に耐えられるように、ガソリンエンジンよりも丈夫にできているから仕方がない。

 

俗に言われるフロントヘビーになるのだが、良くできたFF車のボルボでは、あまり気にかける必要はない。カーブを走るとする。ボルボももちろん、カーブの外側に膨らむような感覚を覚えるだろう。(これをアンダーステアと言います。)

 

けれども、この動きは人の感性と合致するから安心だ。慣性が(ダジャレではないぞ)効いているから、車がカーブの外に出ようとするのは当然。私も山道へドライブに行くが、カーブで不安を覚えることはない。

 

その秘密はサスペンションのセッティングだ。

 

フロント、リアのマルチリンクは路面をしっかりと掴む。安全第一のボルボに、トリッキーな挙動はない。多少の無理も許容できるからこそ、重いエンジンを積んでも問題ないのだ。

 

レスポンス不足で山道は多少疲れを感じる

ところで、正直に言えば、やはりレスポンスはガソリンエンジンに劣る。先程スポーツエンジンだと言い切ったが、実は少しジェントル寄りなんだ。

 

一般道などの負荷の少ないエリアにおいて、ガソリンエンジンに比べてほんの少し緩い出力特性は、気にならない。

 

けれども、山道ではやはりマイナス。急なコーナーでエンジンから足を離せば、次に踏み込んだときには大きなトルクがガツン!と身体に響く。タイムラグも少しある。それが嫌でつい、アクセルを緩く踏んでしまう。

 

だがそれはブイブイ走りを堪能したい人だけが気にすれば良いから大丈夫だ。それに、もしもキレの良いエンジン出力が欲しければ、①ドライブモードを変える(無料) ②ポールスター パフォーマンスパッケージを導入する(有料) と選択も残されている。(ポールスターパフォーマンスパッケージの販売は正規ディーラーに要相談。)

 

大鹿村の山道にて

特筆は経済性!メリットはガソリンの比ではない

先に紹介したデメリットをしっかり受け入れられれば、あとは嬉しいメリットばかり。お財布にも優しいぞ(^^)

 

注目はやはり、大きなトルクを活用した低燃費走行、それに迫力の加速だろう。

 

各社ディーゼルエンジンには、250Nm前後という控えめなトルクのものも散見するが、ボルボのディーゼルは400Nm以上。燃費と加速で2度美味しいのは言うまでもない。

軽油代は本当に安い

ハイオクガソリン170円時代において、軽油はたったの130円だ。ハイオクガソリン130円の時は、軽油は90円だった。満タンいれても5千円行かなかった。

 

石油代があがったとて、やはり軽油はガソリンより安い。この恩恵は絶大なのだが、燃費向上とのコラボレーションでさらに凄いことになってしまう。はっきり言って、燃料に関係する維持費は直列5気筒ハイオクガソリンモデルの半分以下になる。

 

下記表をご覧いただきたい。私が所有していたV50(2.4L直列5気筒ハイオク)とV40 D4(2.0L直列4気筒ディーゼル)の、街中でのおおよその燃料費の目安だ。旧式のボルボと新型とで比較すれば、一目瞭然。

 

走り過ぎて恐山(青森)などに行かないようにしたい。行かないか。

V50 2.4 V40 D4
満タン 50L 50L
走行距離 400km 700km
燃費 8km/L 14km/L
1Lあたりの燃料費 170円 130円
1kmあたりの燃料費 21.25円 9.23円

※2023年3月 燃料費高騰の為 表を更新致しました

燃費は本当に良い

もう一度言う。燃費は本当に良い。

 

私の所有するボルボV40は20km/L、V40 CrossCountryで21.2km/Lという、軽自動車もびっくりなカタログ燃費をマーク(ともにJC08モード燃費)。

 

高速道路を走るとする。瞬間燃費計は25km/hを超える。アクセルを緩めれば45km/h、70km/h。。速度が落ちる気配もない。エンジンブレーキは、トランスミッションが8速に入っていれば、ほぼかからない。

 

実燃費も、高速道路ではかなり伸びる。V40 D4はJC08モード燃費を超える27km/Lを叩く。遠出の時に最も頼れるエンジン、それがボルボディーゼルなのだ。

 

以前ロングドライブを試したいからと伊勢神宮に行ったことがある。無給油で往復できるのはもちろんの事、長野を周遊して帰ってこれるのには驚くばかりだ。(怖いから一応一度給油はしたけどね。)

加速は独特の気持ち良さ

先ほどエンジンのピックアップが遅いと書いたが、低回転で粘るディーゼルエンジンには独特の楽しさがある。それは、1,000rpm以下から大きなトルクで加速していく、伸びやかとも言えるエンジンの力強さだ。

 

NAなら4リッターの排気量が必要な400Nmのトルクは素晴らしい。そしてこの高出力をタイヤへ伝えるアイシン製8速ATの性能も素晴らしい。(これはボルボ全モデルに共通だ。)

 

もう少し具体的に言うと、1000rpmくらいでゆっくりアクセルを踏み、シフトチェンジせずに加速する。エンジンを回さなくとも加速する時の快感、ディーゼルターボが最も得意とする領域なんだ。

 

考えてもみて欲しい。いつしか憧れたWRCカーのインプレッサやランサーエボリューション。彼らは400Nmのトルクを持っていたが、MT車だった。今はATで手軽に扱える。良い世の中になったものだ。

 

大鹿村の山道

ディーゼルエンジンの将来

と、良いことづくめのように紹介したが、結局一番気になるのは将来性。車が無価値になると最悪だ。

 

だが安心して欲しい。もしも日本でディーゼルが規制されるとすれば、長いスパンでの猶予はつくはずだ。いきなり3年後には使えなくる、なんていう話になれば、消費者が怒るだろう。マイナスばかり見ていても仕方ない。

 

だが、知識はあったほうがいい。このセクションではディーゼルエンジンの未来について、少し触れておきたい。

ボルボはマイルドハイブリッド化まで改良実施

ボルボは、ディーゼルエンジンにはマイルドハイブリッドを組み合わせて開発を終了するとしている。

 

マイルドハイブリッドの良い点は、低速からのエンジンへのアシストと、アイドリングストップの復帰時にセルモーターを使わない事だ。きゅるきゅる音がしないはずで、それだけでもマイルドハイブリッドの恩恵は大きいことだろう。特に、高級車に分類されるボルボならばなおさら、アイドリングストップからのエンジン始動での揺れは消しておきたいところだ。

 

そのマイルドハイブリッドは、2020年にとうとう日本上陸。残念ながらディーゼルモデルへの装備はされていない。日本へ入ってくるのか、そのまま消滅するのか・・・気になる展開になってきている。

 

世界的にも終息傾向 欧州は踏みとどまり

そもそもディーゼルエンジンは欧州で主流だった。ハイブリッドや電動化で日本車に遅れをとった欧州勢が、ガソリンよりもCO2排出量が少なく燃費の良いディーゼルエンジンに目をつけて、進化させたのが世に言う「クリーンディーゼル」。

 

その第一人者だったフォルクスワーゲンが発端となってしまったディーゼルゲート、つまり不正によって、ディーゼル神話は崩壊したのだ。

 

だが、欧州各社はディーゼルを諦めていない。一時期の高シェアほどではないにしろ、ドイツ新車販売でのディーゼルエンジン搭載比率は30%。無視できない状況にはかわりない。(2019年11月の単月で31% 出典:マークラインズ

新技術による復活の可能性もある

なぜ欧州勢がディーゼルにこだわるのかと言えば、ディーゼルエンジンは新技術によって復活する兆しもあるからだ。

 

例えば先に出たフォルクスワーゲンの新型ゴルフ(2020年日本上陸)では、ディーゼルエンジンにつきもののNOx排出量を80%削減。排ガス浄化装置を手がけるボッシュに出資し、本当にクリーンな排ガスを実現しようとしている。

 

さらに日本でも、バイオディーゼルのプラントの開発や人工光合成など、環境を支えようと試みる研究機関も増えている。

2020年までに国産バイオジェット・ディーゼル燃料の実用化を達成すること、具体的にはバイオジェット燃料による有償フライトおよびバイオディーゼル燃料による公道走行を実現すること、を目標としています。

出典:株式会社 ユーグレナ

バイオディーゼルによって、ディーゼルエンジンが脚光を浴びる可能性はあるわけだ。

 

化石燃料でなくても動かすことのできるディーゼルエンジンは、一概に終わりを告げるエンジンとは言えないのだ。

 

ディーゼルエンジンは廃止できない

そして先ほどのバイオディーゼル燃料による公道走行実験は、神奈川県横浜市も絡んでいる。官民一体の構想である。

 

つまり、ディーゼルエンジンを廃止できない条件が整っている、といえる。

 

もちろん、今世界で進んでいる「二酸化炭素を原料にする」技術ができあがれば、水素エンジン車や電気自動車にシフトしていく事だろう。しかし、それまでの繋ぎにはもうしばらく、内燃機関が必要だ。

 

どうせ繋ぎに使うのなら、二酸化炭素の発生が抑えられるディーゼルエンジンを使うのが良い。未来をしっかり見据えながら、ディーゼルエンジンを選ぶのも良いと思うのだが、いかがだろうか。

ボルボのディーゼルエンジン

最後に、ボルボのディーゼルエンジンに関する情報を記載しておく。日本に輸入されるボルボ・ディーゼルは、2019年12月現在、2種類がラインナップされている。

D4エンジン搭載のXC60とV90

出力 190ps トルク 400Nmを達成するボルボクリーンディーゼルエンジン。少し前まではV40、V60にも搭載していたが、現在はSPAプラットフォームという車格の高い車にだけ搭載されている。

高燃費と高出力を両立している、ガソリンエンジンでは味わえない美味しいエンジンだ。

volvo-engine-paformance-d4204t14

● D4 D4204T14エンジンの性能曲線 aboutVOLVO時代の独自研究資料です

注目は、1000rpm付近でも発生する240Nmのトルク。そして1800rpm〜2400rpm付近で発生する、最大トルク400Nm!

これだけ太いトルクが手元にあると、運転が楽でしかたがない。

D5エンジン搭載のXC90

特殊なターボブースト機構「PowerPulse」を装備しているディーゼルエンジンで、XC90専用品。(日本では、の話です。)

最大出力235ps、最大トルク480Nmと、ボルボで一番重量のある車を動かす為の強力パワーエンジンがこいつだ。

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● D5 D4204T23エンジンの性能曲線 aboutVOLVO時代の独自研究資料です

D4にプラスすること80Nmの最大トルク。重量2090kgを誇るXC90 D5を動かし、WLTCモード燃費13.6km/Lを発揮する。

まだまだ燃費でプラグインハイブリッドには負けない高燃費を叩き出す。ディーゼルエンジンに負けないような、電動化モデルも待ち遠しい。

駐車場に止まるボルボV40

ボルボディーゼル搭載車

2019年12月現在の、ボルボのディーゼルエンジン搭載車は以下の表のとおり。

今のボルボの施策により、XC40やV60のディーゼルエンジン搭載モデルは輸入されていないのは残念だ。

モデル/グレード 燃費
VOLVO XC60 D4 AWD Momentum 16.1km/L
VOLVO XC60 D4 AWD Inscription 16.1km/L
VOLVO XC60 D4 AWD R-Design 16.1km/L
VOLVO V90 D4 Momentum 16.2km/L
VOLVO V90 D4 Inscription 16.2km/L
VOLVO V90 CrossCountry D4 AWD 15.9km/L
VOLVO V90 CrossCountry D4 AWD Pro 15.9km/L
VOLVO XC90 D5 AWD Momentum 13.6km/L
VOLVO XC90 D5 AWD Inscription 13.6km/L

XC60はなかなか大きいSUVだが、16.1km/Lという高燃費を達成した。登場当初は非対応だったものの、2019年12月現在では全車種AdBlue搭載ディーゼルエンジンに置き換わっているようだ。

 

また、中古車には「V40」「S60/V60」「XC60」など、ディーゼル搭載モデルが存在する。現在の新車ラインナップにはないサイズの車も存在するので、チェックしてみるのも良いだろう。

 

(2020年1月 monogress 調べ)

ボルボディーゼルはまだまだ使える

いかがだっただろうか。

 

ボルボはディーゼルエンジンに消極的になりつつあるが、それは会社規模が小さく、選択と集中をしなくてはならないからだ。

 

今までディーゼルエンジンを販売してきた欧州メーカーはやはり、ディーゼルエンジンを作らないといけない責任があるだろう。だからこそ、今はまだディーゼに乗れると言える。

 

大トルクを持ち、燃費がよく、CO2の排出量も少ない。至れり尽くせりディーゼルエンジンに乗ってみよう。

 

きっと素晴らしいディーゼル・ライフを送ることができるだろう。