サスペンションの形式は、今私は特にこだわらなくなりました。
理由は簡単で、プジョー308SWのリアサスペンション「トーションビーム式」の乗り心地に心の底から感動したから。購入して5,000km。コイツの出来はかなり良い。
今回はそんなプジョーの猫足の後ろ足、トーションビーム式サスペンションについて語ります。今回は、専門知識が多く完全に正確な情報とは言えません。感想も構造説明もブログ monogress の 独自解釈な点に注意してください。
逸品トーションビームのアレコレ
知らない間に疲れている
簡単に言うと、Peugeot のトーションビーム式サスペンションは、とても出来が良いよ!と言いたいだけの記事ではあります。なんだぁ、トーションビームなんて使ってんのか、Peugeot はやめたーという人、体験しないで候補から除外するのはもったいない。
私が Peugeot の足回りで気に入っているのは、直進安定性の高さと、細かい揺れの収束の上手さ。
高速道路や幹線道路で見せる、フラットで安定感の走りは頼もしい。クルマが意図しない方向へ進まないから、運転していてとっても楽ちんなんですね。
ドライバーは、どこを運転しているときも必ずステアリングで方向の修正をしています。道路というのは凸状に作られていて、雨で道路が冠水しないように、排水溝まで水を送る傾斜がついている。だから凸状になっていて、この時ステアリングは主に「右」に少し傾けた状態になっています。
傾斜の角度は絶えず変化するものだから、あまくなればステアリングは中央付近に戻すし、傾斜がきつくなれば、その分だけステアリングに修正を加えます。真っ直ぐな道だからと、ステアリングを中央に固定することはありません。
そして、道にはいろいろな凹凸があるわけで、ドシンとクルマが揺れるたびに、若干の修正を加えることになっている。これをドライバーは、無意識に行っているのです。
でも、それなりに神経をつかっているわけだから、疲れるんです。できることなら揺れの影響は少なくしたい。ステアリングの修正も少なくしたい。
そこで真価を問われるのが、FF車ではとくに、リアサスペンション、なんですね。
リズム感が動物的なプジョー猫足サスペンション
Peugeot の大部分のクルマたちは、リア・サスペンションは「トーションビーム式」を採用しています。唯一 Peugeot 508 だけがダブルウィッシュボーン式を使っているけど、これは可変ダンパーの装着やプラグインハイブリッドを見越したことだろうと予想できます。
そして、何度も言うようだが素晴らしいサスペンション。Peugeot 308SW の場合、まるでチーター脚だと私に言わしめた(笑)実力を持っている。Peugeot 208 も、ストローク感のたっぷりある味のいいサスペンションだ。
基本的にまっすぐ走ることは大の得意。308SWではやや「ハ」の字の傾斜をつけられたタイヤ(ネガティブキャンバー)によって、気持ちのいいくらいにクルマをリア側でしっかり走らせてくれる。
足回りは基本的には柔らかく、路面の凹凸はうまく吸収してくれる・・・しかし、あまり柔らかくしてしまうと、クルマの上下への揺れが収まらない状態になってしまう。このバランスが Peugeto の足回りは本当によく出来ていて、例えば、荒れた路面を走っている時、少しクルマが浮き上がったと思うと、不快でないレベルで着地するのだけれど、このリズム感がとてもいい。
Peugeot 508 はダブルウィッシュボーンで同様の味付けをしてくるが、リズム感はとてもゆっくりで大きい。Peugeot 308 SW / Peugeot 508 SW の比率で、2 : 3 くらいのリズムの違いだ。308はチーター、508はライオンのような、猫科の動物が跳ねるような動きを見せて、とても気持ちいいのが Peugeot サスペンションだ(と、私は勝手に解釈しています笑)。
当然、フロントのマクファーソン・ストラットとの調整コンボが、このような動物的動きを作り上げていることは確か。しかし言いたいのは、特に高いサスペンション形式を使わなくとも、Peugeot は優秀な足回りは再現できる、ということなのだ。
トーションビーム式の横揺れは宿命
しかし、トーションビーム式サスペンションでの性能限界を感じることもある。
それは、リア・サスペンションで起こされる「横揺れ」。こればかりは、2つの支点しか持たないトーションビームの式の弱点だと言えるでしょう。
H型で作られる Peugeot 308 のトーションビーム式サスペンションは、クルマの前側で取り付けられ、後ろ側にタイヤがつけられる。つまり、クルマの前側をH字の上側に見た場合、H字の上側が車体に取り付けられ、下側にタイヤを付ける構造になっている。さらにタイヤがつけられる付近には、ダンパーやバネが車体とタイヤとを繋ぐ。
この時、クルマ側への取付点は稼働するように作られている。固定してしまうと、まったく上下に動かないサスペンションになってしまうから。この取付箇所のノウハウは、各メーカーがシノギを削る場所でもある。
取り付け位置が2箇所しかなく、さらにH字のようにすべてが繋がっているものだから、タイヤの片方に強い力が加わった時、ダブルウィッシュボーンやストラットのように上下方向だけでは力が逃しきれず、トーションビーム全体で力を逃がす。逃し方は、サスペンション全体を旋回させること。この挙動が再現されるから、クルマのリアだけが横に揺れるように感じてしまう。
Peugeot では横揺れは最小限に収まっていて、高速道路で時々顔を出すくらい。それでも、感じるときはある。どうしても嫌であれば、上級の 508 を選ぶことになるのだけれど、構造を理解すればリアが滑ることは致命的ではないと解釈できるし、この価格帯で最も良いサスペンションを持つ Peugeot に乗らないなんて、もったいない話だな・・・と思います。
参考文献
さて、今回はプジョーのトーションビーム式サスペンションについて、雑誌を色々あさってみました。しかし、プジョーについてはあまり記載がありません。
雑誌モーター・ファン の言葉を借りると、「独特の哲学を持つプジョー。そのノウハウは見た目だけではわからない。」となっている。専門書が全容を明かすことができないことは、私がどんなに学ぼうがわかるはずもない。だから、今回は独自解釈といたしました。
役に立った情報をいくつか紹介しましょう。
サスペンションの作り自体は前後ともけっこう凝っている。ーーー リヤのトーションビーム部分は鋼板をU字型にプレスしただけのものではなく、いわゆる「クラッシュドパイプ」で、中空パイプを押しつぶした後にU字型に成形している。ご想像のとおり、クラッシュどどパイプは1枚プレスよりもビームそのものの剛性が高く、あらためてスタビライザーを追加せずともロール剛性を高める構造だ。
ばねやダンパーのチューン自体はけっして硬くないのに、ロールは小さく、挙動はフラットそのものという新型308SWの基本特性は、低重心化と高ロール剛性をつよく意識したEMP2の構造によるところも大きいと思われる。
また、リヤが必要以上に踏ん張らない前後バランスもプジョーならでは。優しくゆったりと運転している限りは滑るようにフラットで、反応もほどほどに鈍く安定している。しかしサスペンション自体は硬い設定ではないので、加減速や操舵で相応の入力をしてあげると、しっかり荷重移動して、鋭いステアリング反応と軽快な回答性が醸成されるし、タイヤの接地感もリアルに伝わってくる。こうした乗り方によって二面性を見せつける味は見事である。
出典:Motor Fan illustrated 101 より
どのような部品をつけたらどのような挙動になるのか、正直わかりません。それでも特性については概ね「ロール剛性が高い」とか「荷重移動が得意」といったところを読み取れますね。ロール剛性とは、車がロールするのに必要な力のことを言います。剛性が高いほど、ロールはしにくくなります。だから、ロール剛性が高い車というのは、カーブを曲がるときの姿勢変化が少ない、と私は捉えています。
ところが、荷重移動が得意ときている。ロール剛性が高いのであれば、フラットな乗り心地が維持される反面、車は弾みにくいものになりそうなのに?いったいどういうことだろう? 答えは、実際にプジョーに乗る人ならわかりますよね(笑)
不快なピッチングを感じることがなく、ボディの剛性感が高く感じられることから減衰力値の設定も低めで、それが乗り心地に好結果をもたらせている印象がある。それとステアリングですが、キックバックを完全に排除していない点に交換が持てます。車体が実際に揺れているのに、ステアリングに何も手応えがなかったら不自然ですし、逆に安心感がなくなります。
けっこう色々な音や振動が感じられるのですが、では安っぽいかと言うと、そんなことはありません。全体的にとてもバランスがいい。これなら長距離ドライブにもよさそうですね。
出典:Motor Fan illustrated 110 より
振動が感じられるのに、安っぽくない。言い得て妙というやつですよ。
ステアリングのフィードバックが良い。まったくそのとおり。うざったくない程度の反力を感じさせてくれます。だから安心してドライブできるんですよね。
コーナリング時はフロントの食いつきの良さでぐいぐいとインに寄り、それに穏やかにリアがしっかりついていく。その動きをシートを介して伝わるGの体感とステアリングの反力で自在にコントロールできるという感じで、断然好感が持てた。
乗り心地はおおむね良好だが、細かい路面の不整や段差通過などの振動吸収については、サイドウォールの固さゆえか、ちょっとしなやかさに欠ける。1世代前のパイロットスポーツ3、あるいはコンチネンタルの「コンチ・スポーツコンタクト」のようなしなやか系だったらどんな感じであろうかなどという思いも頭をよぎった。
出典:Response
ロングボディでありながら、ステアリングの操作に対して従順で、リアが振り回されることがない。私自身、 Peugeot 308SW は「まっすぐ走る」ことについて、とてもコダワッていると感じます。
今回のクルマ選びでは、運動性能は多くを望まないつもりでした。結果、乗り心地が良くってスポーティな走りも得意とするなんて(笑)
メーカーの意図する動きを感じ取ろう
車を購入したい時、主要諸元で見るものといえば、エンジンの性能、燃費、タイヤの扁平率も見るかもしれない。そして、サスペンション形式も見るでしょう。
そこに、ダブルウィッシュボーンだとか、マルチリンクだとか書いてあると、車好きはホクホクするはず。
高性能車の代名詞である高級サスペンションの数々に、気分が高揚するのは仕方がないです。けれども、そのサスペンションが期待通りの動きをするかは、ハテナだったりする。そのくせ、購入のお目当てのクルマは試乗車として用意されていない場合も多い。買うまで判らないというのは、実際のところ良いとは思えません。
ボルボに乗っていた時、そのリアサスペンションはマルチリンク。フォード傘下時代にマツダが設計したと言われるこいつは、評価の高いものでした。ところが、自分の車が納車された時、違和感を感じた。乗り心地が荒々しい?
実は、V50の時もV40の時も、当然ながら試乗車は高級グレード。私の選んだものは、それよりもタイヤサイズの落ちるもの。(Peugeot でも、Allure ベースの特別仕様車を選んでいるから、ベースグレード好きとも言えます。)
ディーラーで聞いていた話では、ホイールサイズが下がる分、タイヤの断面径が増えるから乗り心地は良くなりますよ、というものだった。ところがそれはボルボでは間違いで、乗り心地はあきらかに高級モデルの偏平タイヤの勝ちだった。(この頃のボルボは詰めが甘かった・・・)
だからこそ、Peugeot でも最も心配したのが足回り。しかし、雑誌を見ると「フランス車の醍醐味はベースグレード」だとか、SNSでも「インチダウンを希望する人が多い」(by とろろ様)という情報もあり、実際にはとても満足できる乗り心地。
そして、ダブルウィッシュボーンを搭載する Peugeot 508 の優秀なこと!308SW で気になる「ノイズ感」を見事に消し去っています。
けれども、リズム感は私は Peugeot 308SW のほうが好み。このあたりは個人の好みによるのでしょうね。などなど、色々あるけれど、私自身はサスペンション性能については「どれでも良い」という答えになりました。機能を追加する力もあれば、性能を引き出す力もまた、メーカーの力です。そのメーカーの狙った性能を、しっかりと感じ取って、クルマを選ぶ。それで良いじゃないですか!
ということで、今回の語りはここでお終いです。長文になりましたが、お付き合いいただきありがとうございました(^^)
あとがき
好きになっちゃいました、プジョーのトーションビーム(*´Д`)
コメントで頂いた「ダメですね、半信半疑でしたが試乗したら完敗でした。急ぐ必要はなかったのに即決定でした。」嬉しかったですね。私も一応、フランス車で選びたいなーというモヤモヤの中で試乗に行ったら、コロッと気持ちを持っていかれてしまった(笑)
だからこそ、この安めで性能がよくって、オシャレでちょっと癖のある Peugeot をオススメしているんです。クルマの専門のブログでないことだけは、皆さんへお伝えしておきたい!のですが、良いものは良いと伝えたい。
名前だけの性能だけでなく、本質を知ってほしい。私のブログではこのあたりを、発信していければ良いなと思っています。